Rolling Stones - Almost Hear You Sigh (youtube.com)
心は押されている
うちがわに押すものがいる
つよく押されながら
視覚はゆらぎ 一歩が定まらない
押されながら
めがけるかたちが見えない
手をのばし すがりながら
迷い 無力に染まったことばたち
どうしたらよいかわからない
それでいい
手にかけたことばくじかれ
砕かれて飛び散っていく
なんどでも砕かれ飛び散ればいい
ことばを砕くちからのみなもと
おまえのうちがわにそれはある
かなしみ、いらだち、怒りが走る
どんなことばとも
どんな行為とも接続できない
おそれ、ためらい 迷い
たいせつなものを守ることができない
いたわりねぎらいはげますことば
それをみつける方法がわからない
すれちがい 遠ざかり
はかなく消えていく
さがすことが生きることなのか
ずっとさがしている
どこか遠い場所 ここではないどこか
鮮やかにつなげることばはどこにある
さがさなくていい
接続すべき場所はここにある
できることはただ一つだ
まなざしが向かう方角を変更する
外にさがして見つけることはできない
外に見つかるものはすでに死んでいる
いまここを離脱すれば接続がとかれる
ことばは連結を切られて死んでいく
刻むべき原理がある
絶望は希望に先行することができない
子は母を産むことができない
ここに一切の光源がある
母として 希望として
はじまりの地平はすでに開かれている
どんな神秘も僥倖も奇跡もいらない
すべてはいまここに ただ一つ
おまえの生きる地平からはじまっている
心の波立ち ゆらぎのなかに
あらゆることがらは現象している
ここに世界は顕現している
すべてを映す水面のきらめきがある
泡立ち、ゆらぎ、あふれ、こぼれていく、
ここに留まるまなざしをキープする
ノイズを払い 作為を払って
まっすぐに光の通り道を開けておこう
この視線が見失われるとき
おれたちは〝外の光〟に蝕まれていく
世界に照らされて生きるのではない
照らし出す光はこちらにある
母であるもの 希望であるものとして
ここからけっして離れず
いまここを愚直に鍬を入れ耕してゆけばいい
死んだことば 砕け散ったことばを集めて
よみがえらせられる場所はここだけにある
世界の姿を確定するどんな命題に出会っても
先行を許せば干乾び亡びていく
外の光がけっして照らせない
照らし返すただひとつの光源として
はじまりの地平を与えあう作法において
生まれることばのために通り道を開いておこう