──竹田青嗣『プラトン入門』280
ある考え方(命題)に対してまずそのモチーフの核心をとらえる。
つぎにこの考え方ではまだ十分普遍的といえない側面を指摘できないか
どうかを考え、そこからさらに新しい命題を立てる。
この作業を、できるだけさまざまな観点から繰り返し行う。
こうして命題の形をより〝普遍的〟なものへと更新していく。
認識を普遍化していくための基本原理は、これで全てである。
そしてこれ以外には何もない。
この方法をヘーゲルは弁証法と呼んだ(‥‥)。
右の考え方が見かけに反して非常に原理的であることは、それが、
わたしたちが経験の中でさまざままなことがらを〝よく知っていく〟という
事態の基本原則をきわめてよく表現していることからわかる。
のちにフッサールは、この方法をさらに理論的に追いつめ、
思考の共通了解(=妥当)をうる上での哲学的基礎づけを試み、
これを「現象学的還元」という方法として理論化した。