4区 立命館宇治・廣田麻衣と豊川・関根花観の熾烈な戦い 右下は、3区・区間賞でインタビューを受ける鷲見梓沙 NHKテレビより
第24回高校女子駅伝競走大会の結果を分析しています。本日、取り上げるのは、連覇がならなかった準優勝の豊川高校(愛知)です。
まず、豊川高校の概要をおさらいしてみましょう。
所在地は、愛知県豊川市末広通一丁目37
日本三大稲荷のひとつ豊川稲荷の名で知られる曹洞宗の名刹・豊川閣妙厳寺から発生した学校で、1928年に設立されました。
教育コンセプトは、校訓「和敬・信愛・利他・報恩」に表される宗教的精神に基づいた人間教育です。「生徒一人一人の自分らしさを伸ばしながら、社会人としての堅実な資質を育てる」ことを目標としています。
学校は、全国屈指のスポーツ施設を完備しています。全天候型総合グラウンドは、インフィールド全面人口芝、全天候型400mトラック、500mのクロスカントリーを備えています。また50mの屋内走路や、常圧低酸素室(3000mでの高所トレーニングと同じ効果)、その他、トレーニングルームや温水プール(日本陸連公認の6コース)などがあります。とにかく、スポーツの盛んな高校です。
森安彦監督とその指導方法について
06年3月に監督に就任。その3年前から名古屋市近郊の豊明市陸上クラブの外部コーチを務め、同市沓掛中を全国5位に押し上げた手腕を買われ、ホシザキ電気から移籍し豊川高校職員となりました。毎朝5時半からの10キロ走、そして実業団時代の練習方法を生かし、夏休みには、標高1800mの御嶽山での高地トレーニング、部員は、ほとんどここで仕上がるそうです。
今大会の目標は、もちろん優勝(連覇)で史上初の4回目を狙います。高校女子駅伝は、6年連続6回目の出場です。
過去5年間の成績は、以下のとおりです。
平成23年 優勝 1:7:29
平成22年 2位 1:8:06
平成21年 優勝 1:8:27
平成20年 優勝 1:7:37
平成19年 7位 1:8:57
それでは、もう一度、今年の記録を振り返ってみましょう。
今年の県大会の記録から
チーム記録 1:8:24
第1区 鷲見 梓沙(1)19:46
第2区 関根 花観(2)13:10
第3区 堀 優花(1)9:34
第4区 加治屋 ななこ(2)9:35
第5区 岩出 玲亜(3)16:19
さらに、東海地区での記録から
チーム記録 1:9:17 第1位
第1区 加治屋ななこ(2)19:42
第2区 山田日菜(1)13:26
第3区 堀 優花(1)9:28
第4区 神薗 奈苗(2)10:02
第5区 今井 優(2)16:39
次に全国大会の記録から ( )は3000mの持ちタイム
チーム記録 1:7:46 第2位
第1区 岩出 玲亜(3)19:45 区間5位(9:13)
第2区 宮田佳菜代(3)13:23 区間8位(9:27)
第3区 鷲見 梓沙(1) 9:21 区間1位(9:12)
第4区 関根 花観(2) 9:17 区間2位(9:14)
第5区 掘 優花(1)16:00 区間6位(9:20)
森安彦監督が、スタート前のインタビューで「3区・4区に力のある選手を置いた」と語っていました。ということは、この区間でトップに立つということなのでしょう。今年は絶対的な力を持つ、留学生がいないので、確実に勝利するということを考えれば、そうでなければ勝てないということを意味していました。留学生がいない分、他の4人がそれぞれ10秒縮め、「誰でも、どこでも走れる」を目標に、頑張ってきたそうです。
それにしても、今年の各大会、オーダーを見ると、連続して出場しているのは、掘優花だけです。それから鷲見梓沙と仙台育英からの転校生・関根花観の二人に対する監督の信頼はとても厚そうに感じました。あの実力者、加治屋ななこを控えにまわすとは、なんとも層の厚い学校でしょうか。
さて、レースの経過ですが、1区・岩出玲亜は区間5位の記録で、筑紫女学園・申水沙季のスパートについていけませんでした。しかし、興譲館などとのタイム差はわずか、1・2秒、立命館宇治の菅野七虹は、7位でしたのでまずまずの出だしです。
2区の宮田佳奈代は、昨年のような快走はみられませんでした。2区終了時点で、順位はひとつ落として6位、1位の大阪薫英女学院の松田瑞生との差は25秒に広がりました。2位の興譲館とも14秒差になっていました。しかし、次の3区で、1年生の鷲見梓沙が区間新の素晴らしい走りをして5人を抜き、トップに躍り出ます。しかし、2位の立命館宇治とのタイム差はわずか3秒でした。
4区の関根花観も素晴らしい走りをしました。いったんは立命館宇治の廣田麻衣に追いつかれますが、執念の粘りで首位をキープします。そして、決着は5区に持ちこされアンカー勝負となりました。この時のタイム差は、わずか4秒でした。
5区を任された掘優花、秋口までにどんどん力をつけた1年生、監督もそのあたりを期待したに違いありません。昨年なら、ワイナイナ・ムルギで勝負あったというところですが、立命館宇治の実力者、青木奈波の前に、今年はそうはいきませんでした。
ともに日本一の練習を積んだと自負する両チーム、豊川高校の敗因はなんだったのでしょうか。しかし、留学生のいない今年の豊川高校には好感が持てました。実力伯仲の上位校ですが、25年もこの状況が続くような気がします。
次回は、第3位となった興譲館高校を分析してみたいと思います。