訪問日 2024年4月21日 (日) 11:00~12:30
笠岡市観光協会主催の「国登録記念物 清水氏庭園 鑑賞会」のチラシを目にし、日本庭園大好きの私は、直ちに電話を入れ申し込みをしました。
当日は、今にも雨が降りそうな曇天でした。集合場所は、笠岡市生江浜2066笠岡市金浦公民館駐車場東側広場でしたが、なかなかわかりにくい場所にあります。前日に確認に来たというひとが何人もおられました。公民館の駐車場ではなく、その隣の更地の広い広場です。
生江浜を何と読むか、“おえはま”ですが、これも見つけにくい一つの要因です。
今にも雨が降りそうな天気です。目的地に向かいます。
金浦の海 どことなく癒されます。
アップで撮ってみました。金浦は、「とんび」のロケ地となりました。
近くにご覧のような水辺がありました。
清水家に到着。観光協会の方から、説明を聞きます。
点呼のあと出発です。当日の参加者は、定員の10名。アメリカ、オーストラリアのALTの方2名、干拓地の農園事務所で働くベトナム人女性1名。福山市の方3名などです。他に観光協会と笠岡市の方計4名が案内役として同行しています。
駐車場から清水氏庭園までは一本道、歩いて5分ほどです。道路から金浦湾を臨むことができます。ノスタルジーを感じさせる穏やかな景観です。清水邸の前で、観光協会の方から、本日のスケジュールについて説明を受けたあと、いよいよ門を潜ります。
にこにことした笑顔で当主の清水正毅さんが出迎えてくださいました。奥様も控えておられます。庭園を前に簡単な歴史と見どころの説明がありました。庭園には、小さな池があり、回遊式となっています。岩礁だった元々の岩に、新たな石組みを配置。池の正面には龍門瀑、とシンボルの臥龍松、背後の山肌にもサツキ類が植栽され、そのスケール感は半端ではありません。このあと庭園内を個々に散策。きれいに剪定された赤のキリシマツツジやピンクのヒラドツツジが鮮明な色彩を放ち、ついカメラを構えてしまいます。
清水氏、最初に10分ほど歴史と鑑賞ポイントの説明がありました。
見事に刈り込みされたツツジ。赤はキリシマ、ピンクはヒラドです。
庭園を右側から撮影してみました。中心の松が景観に華を添えています。
見上げると、ヤマモモの古木。
ベトナム人のAさん、アオザイが庭園に映えます。
正面から見たところ
心字池 南北に長い形状で、大きさは長さ25m、幅2~7.5m
(庭園の説明 /要約)
ここは福山藩水野氏により干拓された生江浜で、それ以前は波が打ち寄せる海岸線でした。
当時の岩礁をそのまま取り込んで庭の原型としています。清水家(屋号・矢掛屋)は、もともと笠岡のまちで海鮮問屋を営んでおり、ここは、年寄りが暮らす隠居所(別邸)として建てられました。その昔、大きな地震があって町が壊滅的な被害を被むりましたが、ここは硬い岩盤のおかげでびくともしなかったそうです。
庭園には、松がたくさん植えられていましたが、松枯れにより全滅。このあと管理が容易なツツジやサツキがとってかわったそうです。一個人が、管理するにはとても大変で費用もかかるし労力も必要、おのずと限界がある、とのことでした。
主屋と庭園 自宅から庭園を眺める、最高の贅沢ですね。
くす玉で、登録時の説明をする清水氏
(国登録記念物登録秘話)
このあと、清水家本宅の和室に上がらせてもらい、庭園を眺めながら話を聞きました。今、笠岡で話題の「カブトガニ饅頭」とお茶の接待がありました。
京都の著名な作庭家・斎藤忠一(さいとうただかず)氏(*1)が来訪。一目見て、「これは市や県のレベルではありませんよ」「国に申請しましょう」と言われ大いに感激したそうです。
しかし待てど待てども回答はなく、しびれを切らして、市の教育委員会に相談に行ったところ、ほどなくして登録記念物に認定されたそうです。(2023年3月20日登録)市の関係者に、お祝いのくす玉を作ってもらったと披露されました。
齋藤忠一氏によると、歴史ある庭園(特に石庭)の価値を判断するとき、大事なことは、植栽された木々に惑わされず、時間や年月を経ても変わることのない基部の石組のみを観ることだそうです。
今後、年に4回程度鑑賞会が開かれるとか。
高梁市の頼久寺、矢掛町の大通寺と合わせ岡山県西部の3庭園をめぐるトライアングルツアーが企画されればうれしいとのことでした。
岡山県内のもう一つの登録記念物、津山市の城東重要伝統建造物群保存地区にある、旧梶村氏庭園(城東むかし町屋2012年1月24日登録)を訪ねたそうですが、自分が想像していたものと随分違って驚いたそうです。ともに歴史はあるものの、スケール感のある清水氏庭園と、町屋の中庭の日本庭園とは趣が随分異なります。
塀の外側の堀は、庭園の心字池とつながっています。
(国登録記念物とは何でしょう)
文化財保護法では、「記念物」は、文化財のうちの以下の3種と定義されています。
1. 貝塚、古墳、城跡その他の遺跡で国にとって歴史上または学術上価値の高いもの
2. 庭園、橋梁、峡谷その他の名勝地で国にとって芸術上又は鑑賞上価値の高いもの
3. 動物、植物、地質鉱物で国にとって学術上価値の高いもの
このような記念物のうち重要なものを指定する制度として、史跡、名勝、天然記念物が定められています。
登録記念物の登録制度(2004の文化財保護法改正から新設)は、重要な史跡・名勝・天然記念物の指定制度を補完するという性格を有しています
公園、庭園その他の名勝地(名勝及び指定を地方公共団体がおこなっているものを除く)のうち、原則として人文的なものにあっては造成後50年を経過したもの又は自然的なものにあっては広く知られたものであり、かつ次の各号いずれかに該当するものとなっています。
1. 造園文化の発展に寄与しているもの
2. 時代を特徴づける造形をよく残しているもの
3. 再現することが容易でないもの
登録記念物は記念物を対象とするものですが、国や地方公共団体が指定した場合は、自動的に登録の対象から除外されることになります。
帰りの道で岩肌に垂れていたフジ
(ご参考)
岡山県第一号の国登録記念物 津山市城東の町並みにある旧梶村氏庭園。連続テレビ小説「あぐり」で主要なロケ地となりました。(2020.1.13訪問)
高梁市 頼久寺庭園(1974 国の名勝庭園に指定) 茶人で作庭家の小堀遠州作 (2021.8.2訪問)
矢掛町 大通寺庭園(石寿園)(2001.3.23岡山県の名勝に指定)(2022.11.7訪問)
(*1)齋藤忠一氏は、日本の各地で庭園の作庭、修復を手掛ける著名な作庭家
昭和の庭師、重森三玲の一番弟子。岡山県では、矢掛町・大通寺の石庭の修復、井原市・華鴒大塚美術館・茶室長庵の露地を作庭
笠岡市観光協会主催の「国登録記念物 清水氏庭園 鑑賞会」のチラシを目にし、日本庭園大好きの私は、直ちに電話を入れ申し込みをしました。
当日は、今にも雨が降りそうな曇天でした。集合場所は、笠岡市生江浜2066笠岡市金浦公民館駐車場東側広場でしたが、なかなかわかりにくい場所にあります。前日に確認に来たというひとが何人もおられました。公民館の駐車場ではなく、その隣の更地の広い広場です。
生江浜を何と読むか、“おえはま”ですが、これも見つけにくい一つの要因です。
今にも雨が降りそうな天気です。目的地に向かいます。
金浦の海 どことなく癒されます。
アップで撮ってみました。金浦は、「とんび」のロケ地となりました。
近くにご覧のような水辺がありました。
清水家に到着。観光協会の方から、説明を聞きます。
点呼のあと出発です。当日の参加者は、定員の10名。アメリカ、オーストラリアのALTの方2名、干拓地の農園事務所で働くベトナム人女性1名。福山市の方3名などです。他に観光協会と笠岡市の方計4名が案内役として同行しています。
駐車場から清水氏庭園までは一本道、歩いて5分ほどです。道路から金浦湾を臨むことができます。ノスタルジーを感じさせる穏やかな景観です。清水邸の前で、観光協会の方から、本日のスケジュールについて説明を受けたあと、いよいよ門を潜ります。
にこにことした笑顔で当主の清水正毅さんが出迎えてくださいました。奥様も控えておられます。庭園を前に簡単な歴史と見どころの説明がありました。庭園には、小さな池があり、回遊式となっています。岩礁だった元々の岩に、新たな石組みを配置。池の正面には龍門瀑、とシンボルの臥龍松、背後の山肌にもサツキ類が植栽され、そのスケール感は半端ではありません。このあと庭園内を個々に散策。きれいに剪定された赤のキリシマツツジやピンクのヒラドツツジが鮮明な色彩を放ち、ついカメラを構えてしまいます。
清水氏、最初に10分ほど歴史と鑑賞ポイントの説明がありました。
見事に刈り込みされたツツジ。赤はキリシマ、ピンクはヒラドです。
庭園を右側から撮影してみました。中心の松が景観に華を添えています。
見上げると、ヤマモモの古木。
ベトナム人のAさん、アオザイが庭園に映えます。
正面から見たところ
心字池 南北に長い形状で、大きさは長さ25m、幅2~7.5m
(庭園の説明 /要約)
ここは福山藩水野氏により干拓された生江浜で、それ以前は波が打ち寄せる海岸線でした。
当時の岩礁をそのまま取り込んで庭の原型としています。清水家(屋号・矢掛屋)は、もともと笠岡のまちで海鮮問屋を営んでおり、ここは、年寄りが暮らす隠居所(別邸)として建てられました。その昔、大きな地震があって町が壊滅的な被害を被むりましたが、ここは硬い岩盤のおかげでびくともしなかったそうです。
庭園には、松がたくさん植えられていましたが、松枯れにより全滅。このあと管理が容易なツツジやサツキがとってかわったそうです。一個人が、管理するにはとても大変で費用もかかるし労力も必要、おのずと限界がある、とのことでした。
主屋と庭園 自宅から庭園を眺める、最高の贅沢ですね。
くす玉で、登録時の説明をする清水氏
(国登録記念物登録秘話)
このあと、清水家本宅の和室に上がらせてもらい、庭園を眺めながら話を聞きました。今、笠岡で話題の「カブトガニ饅頭」とお茶の接待がありました。
京都の著名な作庭家・斎藤忠一(さいとうただかず)氏(*1)が来訪。一目見て、「これは市や県のレベルではありませんよ」「国に申請しましょう」と言われ大いに感激したそうです。
しかし待てど待てども回答はなく、しびれを切らして、市の教育委員会に相談に行ったところ、ほどなくして登録記念物に認定されたそうです。(2023年3月20日登録)市の関係者に、お祝いのくす玉を作ってもらったと披露されました。
齋藤忠一氏によると、歴史ある庭園(特に石庭)の価値を判断するとき、大事なことは、植栽された木々に惑わされず、時間や年月を経ても変わることのない基部の石組のみを観ることだそうです。
今後、年に4回程度鑑賞会が開かれるとか。
高梁市の頼久寺、矢掛町の大通寺と合わせ岡山県西部の3庭園をめぐるトライアングルツアーが企画されればうれしいとのことでした。
岡山県内のもう一つの登録記念物、津山市の城東重要伝統建造物群保存地区にある、旧梶村氏庭園(城東むかし町屋2012年1月24日登録)を訪ねたそうですが、自分が想像していたものと随分違って驚いたそうです。ともに歴史はあるものの、スケール感のある清水氏庭園と、町屋の中庭の日本庭園とは趣が随分異なります。
塀の外側の堀は、庭園の心字池とつながっています。
(国登録記念物とは何でしょう)
文化財保護法では、「記念物」は、文化財のうちの以下の3種と定義されています。
1. 貝塚、古墳、城跡その他の遺跡で国にとって歴史上または学術上価値の高いもの
2. 庭園、橋梁、峡谷その他の名勝地で国にとって芸術上又は鑑賞上価値の高いもの
3. 動物、植物、地質鉱物で国にとって学術上価値の高いもの
このような記念物のうち重要なものを指定する制度として、史跡、名勝、天然記念物が定められています。
登録記念物の登録制度(2004の文化財保護法改正から新設)は、重要な史跡・名勝・天然記念物の指定制度を補完するという性格を有しています
公園、庭園その他の名勝地(名勝及び指定を地方公共団体がおこなっているものを除く)のうち、原則として人文的なものにあっては造成後50年を経過したもの又は自然的なものにあっては広く知られたものであり、かつ次の各号いずれかに該当するものとなっています。
1. 造園文化の発展に寄与しているもの
2. 時代を特徴づける造形をよく残しているもの
3. 再現することが容易でないもの
登録記念物は記念物を対象とするものですが、国や地方公共団体が指定した場合は、自動的に登録の対象から除外されることになります。
帰りの道で岩肌に垂れていたフジ
(ご参考)
岡山県第一号の国登録記念物 津山市城東の町並みにある旧梶村氏庭園。連続テレビ小説「あぐり」で主要なロケ地となりました。(2020.1.13訪問)
高梁市 頼久寺庭園(1974 国の名勝庭園に指定) 茶人で作庭家の小堀遠州作 (2021.8.2訪問)
矢掛町 大通寺庭園(石寿園)(2001.3.23岡山県の名勝に指定)(2022.11.7訪問)
(*1)齋藤忠一氏は、日本の各地で庭園の作庭、修復を手掛ける著名な作庭家
昭和の庭師、重森三玲の一番弟子。岡山県では、矢掛町・大通寺の石庭の修復、井原市・華鴒大塚美術館・茶室長庵の露地を作庭