今野敏はこれまで現代を舞台とした警察小説を世に出してきましたが、明治三十八年を舞台とした『サーベル警視庁』は異色です。時代設定の説明をする必要があるため、やや読みづらい箇所があり、話に入っていけるまでに少し時間がかかりましたが、明治の世情、特に薩長閥が幅を利かせ、東北人は冷遇されるような状況がストーリー展開にうまく活かされており、面白い歴史警察小説になっています。
第1巻は明治三十八年七月、日露戦争の最中、上野の不忍池に死体が浮かんでいるところを発見されるところからストーリーが始まります。
捜査に当たるのは警視庁第一部第一課。岡崎巡査の視点で語られます。
殺された帝国大学講師・高島は急進派で日本古来の文化の排斥論者という。同日、陸軍大佐・本庄も高島と同じく、鋭い刃物で一突きに殺されたとの知らせが入り、手口から同一犯と見られ、連続殺人事件の捜査となる。
不忍池の死体の第一発見者は薬売りらしき人物ですが、最初に話を聞いた所轄を出た後の足取りが掴めず、追求しようとすると、上から捜査不要の指示が下る。
陸軍大佐殺人事件では、近所の商店主が怪しい人物を見かけたと証言し、その人物を追っていくと、元新選組三番隊組長で警視庁にも在籍していた斎藤一改め藤田五郎と分かる。藤田はその後捜査に協力する。
また、伯爵の孫で探偵の西小路も成り行きで捜査に協力することになる。第一部の鳥居部長は伝法な六方詞を話し、あまり形式にこだわらない。警察は内務省からの指示に逆らえないが、民間人である西小路と藤田ならば捜査を続けても差し障りがないと考えたのだ。
果たして、殺人の背景には本当に脱亜入欧論の急進派とそれに反対する保守派の政治思想的対立があるのかどうか。
時代背景が少々複雑ですが、登場人物の中で最も迫力があり、重鎮を成すのは60を超えた斎藤一改め藤田五郎です。
第二巻の『帝都争乱』では、明治三十八年八月三十日、日露戦争の勝利に沸く世間は一変、日本にとってほとんど利益のない講和条約に、失望と怒りが広がり、民衆が暴徒と化してしまいます。いわゆる日比谷公園焼き打ち事件 。その暴動の中、警視庁第一部第一課の岡崎巡査たちは、 桂首相の愛妾であるお鯉の住む妾宅の警備を命じられます。
暴徒が街に火を放つ一方、お鯉の妾宅にも暴徒たちが侵入。
お鯉とその母並びに家人たちは危機一髪で逃げ出せたが、暴徒たちが去った後、刺殺体が発見されます。死因を騒擾として片付けようとする赤坂署に疑問を持った岡崎巡査たちは自分たちで殺人の捜査をすることにします。探偵の西小路、斎藤一改め藤田五郎、並びに藤田の勤め先である女学校に通い、前回も捜査に関わった城戸喜子子爵令嬢も岡崎たちに協力します。
殺人事件の解明は、日比谷公園焼き打ち事件の背後関係・長州閥の内部抗争を解き明かすことになります。
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