徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:松岡圭祐著、『高校事変』IV+V(角川文庫)

2020年01月29日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行


仕事が立て続けに入ってきて結構忙しいというのにそういう時に限って読みたいシリーズの最新刊が出たりして、ついつい読んでしまい困ったものです😅 

『高校事変』の4巻はすでに11月に発売されていたのですがそれは新刊発売通知を見逃してしまったらしく、1月23日の5巻の新刊発売通知で気が付いて2冊いっぺんに買って一気読みしてしまいました。


4巻では戦うヒロイン優莉結衣の腹違いの弟・健人(中2)が登場しますが、スキー場に向かう中学生たちを乗せたバスが新潟県の山中で転落事故を起こし、健人はその運転手を殺して自殺したという知らせが結衣のもとに届きます。弟と運転手の死体を見て状況を把握した結衣は弟が正当防衛であったことを訴えますがもちろん相手にされなかったため、運転手の背後関係を調査しだします。その中でかつて父の組織と敵対していた半グレ集団「パグェ」の末端による未登録銃器とガソリンの違法販売を突き止め、そのアジトである外国人学校に突入し、1巻の武藏小杉高校事変以来の殺るか殺られるかの戦場と化した閉鎖空間でのサバイバルゲームとなります。そこでなぜか結衣についていた公安の刑事たちとも鉢合わせ!敵側が結衣の行動を先読みしていたため事態はより絶望的でしたが、まあ、ヒロインが死ぬはずはありませんよね。ただ、彼女が実際に大量殺人をするだけの能力を持っていることは公安側にばれてしまうのですが…
校内でパグェ関係者の子どもが数人虐待されて閉じ込められていたので、結衣はその子たちを守り、救い出すためにも活躍します。
結衣が虐待被害児たちに自分の子供時代を重ねて彼らの望む言葉を紡ごうとするあたりはなかなかグッとくるシーンです。
ラストに意外な人物が敵として登場します。


5巻は結衣の過去、彼女の父・匡太が起こしたテロ事件、そしてその事件で両親を目の前で亡くした梶沙津希の回想で、これまで断片的にしか言及されていなかった過去の忌まわしい事件が様々な視点から詳細に語られます。
また、武蔵小杉高校事変で優莉結衣に命を救われた濱林澪は、多くの死に直面したショックから不登校になっており、両親の勧めで編入試験を受けるための下見に来た農業高校で梶沙津希に出会います。農業高校の教師たちの振る舞いに異様な気配を感じた澪は、沙津希の身を案じてあの事変以来ずっと連絡を取っていなかった結衣を呼び出します。
優莉匡太亡き後の秩序再編をもくろむ半グレ組織、そして匡太の子たちを追い込むためには非常手段を辞さない公安警察。国家規模の陰謀が新たな戦いを引き起こし、「事変」と言うにふさわしい事態が展開していきます。
結衣は誰も信用しない「孤高のヒロイン」でしたが、この5巻でそれが変わり、真の友情を得て、また助けを求めることも覚えます。その意味でこの巻は大きな転換点とも言えます。
これまでちりばめられていた伏線もこの巻で回収され、真の敵が明確になって今後新展開することを予感させます。


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