徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:今野敏著、『イコン 新装版』講談社文庫

2018年09月13日 | 書評ー小説:作者カ行

『イコン』は「安積班シリーズ」第2期「神南署」の第2作で、1990年代の作品。パソコン通信の中で生まれた新しいタイプの「アイドル」有森恵美のライブで乱闘の中17歳の少年が殺されてしまう事件に始まり、次にその少年の友人で中学時代のクラスメートが殺されてしまうという連続殺人のストーリー。手がかりは彼らの中学時代の過去にあるということで捜査が進んでいきますが、割と早いうちに誰が犯人かが分かってしまうため、推理小説としてはいまいち。また、当時の技術的環境がかなり詳細に描写されているため、今読むと「風俗・技術の歴史」としては興味深いものの、やはり設定の古臭さは否めないのが残念ですね。

安積警部補と同期の生活安全課から協力することになった宇津木警部補の家庭の事情が描写され、彼のダメ父からの脱皮の過程などはホームドラマとして微笑ましい感じです。

少年犯罪の残虐化を考えさせられるお話しでもありますね。この点に関しては現在も大して変化してないのではないでしょうか。パソコン通信をツイッターまたはLINEに変えれば今風の少年犯罪の話になりそうです。アングラの「アイドル」事情もそう変わってないような気がします(よくは知りませんけど)。

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書評:今野敏著、『蓬莱 新装版』(講談社文庫)