徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:松岡圭祐著、『千里眼 シンガポール・フライヤー 上・下』(角川文庫)

2021年06月26日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行


千里眼新シリーズの前作の長編に続いて、第9・10巻も上下巻の長編です。
前作『美由紀の正体』で明らかになった過去の心的外傷後ストレス障害のため、美由紀は不思議の国のアリス症候群と呼ばれる知覚された外界のものの大きさや自分の体の大きさが通常とは異なって感じられる症状に悩まされ、また、休職中であることから人から必要とされる実感も得られずに、ただ、誰にも理解されない千里眼の能力による孤独感、真理を見抜いても事件を未然に防ぐためには権限を持つ他人の理解が必要なために常に付きまとう無力感に打ちひしがれているところから物語が始まります。
謎のステルス機アンノウン・Σ(シグマ)の出現と新種の鳥インフルエンザの大流行。国連の常任理事国がアンノウン・Σの件で紛糾する中、鳥インフルエンザの世界的対策もままならないままだったところ、厚生労働省の官僚が鳥インフルエンザの流行の発生と渡り鳥のルートがF1レース開催地と重なることに気付きます。
一方、美由紀は少しでもクライアントの相談に乗った方が良いと判断し、舎利弗に付き添われてF1レーサーのところに向かったら、トラブルに巻き込まれるような形でレースにテストドライバーとして参加することに。
そのことに目をつけた厚生労働省の官僚が美由紀に正式にF1レースに参戦してヴェルガ・ウィルス 散布の裏を探るように依頼を受けます。
こうしてふたたび「戦場」に戻った美由紀は、レース出場のために抗不安薬を止めたにもかかわらずむしろ精神は安定の方向へ向かい、レースでもまずまずの成績を収めますが、そこに謎の組織ノン=クオリアが立ちはだかります。
美由紀の驚異的な動体視力と心理学の知識の組み合わせによる千里眼の世界を理解し、彼女に好意を示すF1レーサーの専光寺雄大の登場に、まさかの恋愛フラグ?!と思いきや、彼はメフィスト・グループの特別顧問で、ウイルスをバラまいて人類滅亡を画策する組織ノン=クオリアの情報を美由紀にもたらし、共闘を呼びかけます。
さて、彼の真意は?そして、渡り鳥によるウイルス散布をどう阻止するのか?

F1に乗った美由紀は、一部の自衛官が恐れていた通り、たちまちコースアウトして付近の基地から戦闘機をかっぱらいます。これはもうこのシリーズでは外せないパターンのようですね。

前作では暴走する美由紀が痛々しかったですが、今作では苦悩の中から立ち直っていく過程が描かれ、思わず応援したくなりました。


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