徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:松岡圭祐著、『水鏡推理5 ニュークリアフュージョン』(講談社文庫)

2016年12月25日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

『水鏡推理』シリーズ最新刊を翻訳が忙しい中の隙を作って休憩がてら(?)読みました。副題の「ニュークレアフュージョン」の日本語訳「核融合」がこの巻のテーマです。

研究不正を追及する、より高度で専門的な部署へ異動になった一般職・水鏡瑞希は、上司の女性キャリア官僚と組んで、核融合研究の検証に取り組むことになったのですが、大した仕事もできないうちにトラブルに巻き込まれてしまいます。

ネタバレにならないように感想を書くのはちょっと難しいのだけど、「味方と思ったら実は騙されてた」パターンで瑞希はかなりの人間不信に陥ってしまいます。その疑心暗鬼がストーリー展開をよりサスペンスなものにしていると思いました。やたらと専門用語も登場しますが、瑞希自身が、「難しいことは分からない」と言っているのだから、そこは主人公と同レベルの(無)理解でスルーするのがお話を楽しむコツかと思います。

この巻は瑞希の内面にも結構踏み込んでます。やたらと推理が得意で、おばあちゃんの知恵袋的な雑学も豊富にある彼女ですが、キャリア官僚に囲まれて、常に下に見られる一般職という立場にある彼女は、自分が偏差値の低い大学出であることに劣等感を持ち、「人の役に立ちたいのに」と焦りながら、特有の正義感で結構向こう見ずな行動に走ってしまいます。これまではそれで結構結果が出せてきましたが、さて今回は?本人はかなり葛藤してます。

葛藤の末に到達した心境は:「必要とされる存在になりたい、そんなことは考えずに生きよう。必要を感じるかどうかは他人の自由だ。そんな他人の思いに自分の願いを託しても意味がない。」

ようやく自立した価値観を確立した、と言うところでしょうか。今後の活躍が楽しみですね。

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