徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:松岡圭祐著、『高校事変 14』(KADOKAWA)

2023年05月30日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

『高校事変 13』(電子版)が発売されたのは3月22日。この14巻は5月23日に販売開始。わずか2か月しか経っていない、驚異的な執筆スピードは相変わらずのようですが、しばらく中山七里作品を立て続けに読んでいたため、松岡圭祐作品はずいぶんと久しぶりのような気がします。

『高校事変 XII』をもって、結衣編が終了し、彼女の妹・凜香と13から新登場したもう一人の妹・瑠那が都立日暮里高校に入学し、凜香・瑠那編がスタート。
二人はその生い立ちの特殊さから人殺しと無縁でいられない生活を余儀なくされていますが、「普通の女子高生」としての生活を夢見ている。そんな彼女らが14巻で遭遇するのは「設問Z」としてメモリーカードが届けられることから始まるネットを介した国際闇賭博。そこではなぜか日暮里高校の体育祭で生徒たちの各競技での勝負が賭けの対象となっていた。闇賭博の胴元X、以前から独り勝ちしている Killer Deeper の正体は誰なのか?

『高校事変 X』でのホンジュラス事変を生き延びた雲英亜樹凪は、留年して日暮里高校に転校し、13巻の連続女子高生誘拐事件に巻き込まれ、凜香・瑠那コンビと自衛官上がりの教師・蓮実に救出されますが、その事件の裏で糸を引いていた「異次元少子化対策」を掲げる組織・EL異次体の思想に共感するところで終わっていました。今回は彼女が妙な動きを見せますが、闇賭博やKiller Deeperとの関係やいかに?
凜香・瑠那を危険な目に合わせようとするのは一体誰なのか?

相変わらずバイオレンスアクションの展開です。感情的な凜香と天才で冷静な瑠那は絶妙なコンビで、結衣が単独行動していたのと対照的です。
当の結衣はすっかり暴力行為から遠ざかり、普通の大学生をやっているのが信じられないくらいです。今起こりつつあることを調べてはいるようですが、戦闘はしないという誓いを頑なに守り、すっかりバックアップに回っていることに少々違和感を持たずにはいられません。
とりあえず、ストーリー展開は現在JKの凜香・瑠那コンビを中心ということですね。


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書評:松岡圭祐著、『高校事変 13』(KADOKAWA)

2023年04月03日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

『高校事変 13』では、これまでのシリーズの主人公・優莉結衣が大学生となったため、その妹の凛香が高校生となって活躍します。常に姉を意識して自分の至らなさ・ふがいなさに悔しい思いをしながらも、以前に比べて世を拗ねて不貞腐れた感じが少なくなっています。

ストーリーは、高校入学を控えた凛香が江東区の閑静な住宅街にある神社で同年代の少女・杠葉瑠那と会うことから始まります。瑠那は結衣や凛香同様、平成最大のテロ事件を起こし死刑となった男の娘。しかし、本人はそのことを知らずに養父母に育てられたらしい。凛香はただ、彼女に親切心(?)警告をするつもりだった。

優莉家の異母兄弟たちは互いに連絡を取り合うことを制限されているのですが、凛香と瑠那は偶然(?)同じ高校に通うことになり、特例が認められます。

一方、巷では女子高生が次々と失踪する事件が起こっており、凜香の周りにも不穏な影が忍び寄ります。

少しネタバレになりますが、女子高生連続失踪事件には『千里眼』シリーズの「恒星天球教」の生き残りが絡んできます。異なるシリーズのキャラクターや団体が登場することで、松岡ワールドあるいはサーガが紡がれていくのは読んでいて楽しいです。

今後は「恒星天球教」の生き残りの背後にいた黒幕との戦いになりそうです。
この巻は凛香と瑠那の出会い編で、次巻から二人の活躍と成長の物語が本格的に始まるみたいですね。
松岡圭祐の場合、ストーリーを忘れないうちに続編が出るのがありがたいです。

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書評:松岡圭祐著、『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VIII 太宰治にグッド・バイ』(角川文庫)

2023年02月25日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論』シリーズもついに8巻目。主人公の杉浦李奈も本屋大賞にノミネートされ、サイン会を催してもらえる立場になり、そろそろ「売れない新人作家」から脱却しつつある流れに乗っているようですが、彼女のもう一つの顔である文芸界の問題解決人としても、警察の覚えもめでたく、この巻でもまた呼び出しを受けることになります。(まあ、そうでないと話が進まないのですが)

まずは、文芸界にセンセーショナルな事件が起こります。太宰治の5通目の遺書が75年ぶりに発見されたというのです。太宰本人の筆である可能性が高いことから筆跡鑑定が進められていたのですが、真贋判定の直前に仕事部屋で起きたボヤにより鑑定人が不審な死を遂げてしまいます。鑑定書の完成を記者5人が待ち構えていた邸宅内での出来事だった。遺書と見られる文書の内容が、太宰治の未完の作『グッド・バイ』に沿ったものであったらしいという話を鑑定人本人が複数の人間にしていたにもかかわらず、そのものを見せてもらった人はなく、内容公開は鑑定書が完成してからと鑑定者本人が勿体付けていたため、否が応でも鑑定書の完成に注目が集まっていた中での不審な死。防音措置が施された密室でのボヤで、なぜか逃げようともせずに仕事机に突っ伏して死んでいた。そして、太宰治の遺書と目されていた文書は跡形もなく消えていた。
一方、同時期に本屋大賞にノミネートされた純文学作家の柊日和麗(ひいらぎひかり)に李奈は仄かな好意を抱いており、ある時からラインで送ったメッセージに既読が付かなくなったことを心配していました。筆跡鑑定家の事件に協力するために、太宰治について調べだした頃、柊の担当編集者から柊が行方不明になっていることを知り、彼の行方を追うために協力することになります。
太宰治の遺書らしきもの、筆跡鑑定家の死、純文学作家の失踪。これらは全くバラバラに起こったことなのか、それともなんらかの関連性があるのか。

終盤は、関係者全員を集めて、アガサクリスティーのポアロ探偵さながらに謎解きを披露する李奈。もちろん、その場面でポアロのことが言及されています。有名な作品からの引用もこのシリーズの面白さです。

奥手の李奈に仄かな恋の予感があったのに、その相手が失踪するという悲劇。それを糧に人として、女性として、作家としてさらに成長する。これもまたこのシリーズの魅力です。

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書評:吹井賢著、『犯罪社会学者・椥辻霖雨の憂鬱』1~2巻(メディアワークス文庫)

2023年02月12日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

『犯罪社会学者・椥辻霖雨の憂鬱』の主人公である椥辻霖雨は、
『破滅の刑死者 内閣情報調査室「特務捜査」部門CIRO-S』の外部監察官としてトウヤと珠子の指揮をする椥辻未練のいとこ。椥辻家は警察官の家系で、エリート官僚となった未練は本家の人間で、霖雨は傍系、しかも両親はなく、叔父・石灘漱流の家に居候するR大学准教授。それでも、やはり家系の影響は受けており、警察官にはならずに犯罪を研究する学者になったということのようです。
こちらのシリーズでは未練はもっぱら霖雨のための警察資料の提供者として登場しています。2作にまたがって登場するこのキャラは作者のお気に入りなのでしょうね。

『犯罪社会学者・椥辻霖雨の憂鬱』のヒロインは、霖雨のはとこに当たる14歳の不登校児、椥辻姫子。石灘漱流のいとこの娘で、特殊な事情から石灘が引き取ることになり、霖雨と同居することになります。彼女は死者を見ることができるという。

ある日、住人が連続死するという呪いの町屋で自殺者が出て、第一発見者が友人であったために、研究者としての好奇心以上に事件のことが気になっていた霖雨は、「お母さんを助けて」と子どもの例が泣いて訴えているという姫子の話を受けて、自殺ではないかもしれない可能性を調べてみることにします。

2巻では、石灘漱流の知り合いで妻殺しの10年の実刑を受けて出所してきた男性が叔父を訪ねてきたことがきっかけになります。彼は昔から温厚で、とても人殺しをしそうには見えないのと、最初は犯行を否認していたのに、途中から口をつぐみ、最終的に有罪判決を受け入れてしまったことに疑問が残り、姫子が真相を明らかにしたいと言い出します。霖雨は、今更本人も望んでいない真相の解明をしたところで誰のためにもならず、全てが遅すぎると渋りますが、結局、調査に乗り出してしまいます。そして殺人現場へ行って姫子が見たのは殺された妻がひたすら夫との娘に謝罪している姿だった。

このシリーズの1つの魅力は、椥辻霖雨の犯罪社会学の講義内容の一部が描写され、犯罪や逸脱を社会学的にどう捉えられるのかなどの学術的なテーマに程よく触れられることと、加害者・被害者どちらにもそれぞれ事情があるという白黒はっきりしない複雑さがそのまま描かれており、逮捕されて時点で容疑者に対し一方的に非難する風潮の危険性が示唆されているところです。
その複雑な現実に即した世界観が展開される一方で、幽霊が見える少女の犯罪社会学者のコンビがなぜか探偵まがいの調査をするというあり得ないキャラ設定のアンバランスが新鮮で興味深いです。




書評:吹井賢著、『破滅の刑死者 内閣情報調査室「特務捜査」部門CIRO-S』1~4巻(メディアワークス文庫)

2023年02月12日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

吹井賢の作品は今回が初めてなのですが、松岡圭祐の最新作を購入する際に角川の本に仕える25%割引クーポンがあり、こういうクーポンに惹かれて何か買うと貯金ができなくなるとは思いつつ、角川コーナーにあったこの素敵な怪しさの表紙と電撃小説大賞受賞に惹かれて『破滅の刑死者 内閣情報調査室「特務捜査」部門CIRO-S』全4巻と『犯罪社会学者・椥辻霖雨の憂鬱』全2巻を大人買いしてしまいました。

『破滅の刑死者 内閣情報調査室「特務捜査」部門CIRO-S』は、内閣情報調査室に極秘裏に設置された「特務捜査」部門、通称CIRO-S(サイロス)で扱う「普通ではない事件」、すなわち異能者がらみの事件の話です。
とはいえ、1巻でヒロイン雙ヶ岡珠子が勤めていたCIRO-Sは本物ではなく、Cファイルという異能者となる可能性のある子どもたちのリスト(と目されている)を取り返すべくとある企業グループが雇った組織でした。
そのCファイルのありかのヒントがあると目されていた暴力団事務所が襲撃に遭い、1人を除いて全員惨殺された。生き残ったのは一人の大学生・戻橋トウヤ。
珠子はトウヤに接触し、情報を得ようとしますが、彼が暴力団事務所から逃亡する際に襲撃者に見られてしまったということが分かると、保護の必要があると見て、上司のところに連れて行きます。
人手不足なのと、トウヤ本人の意思とで、保護ではなく事件解決のために協力することになります。

トウヤは実は異能者で、常に命を賭けていないと生きられないという人格破綻者。軽い口調とは裏腹にかなり頭脳明晰。
珠子は心臓が弱く、病院生活が長かったが、心臓移植を受けて健康になり、どうもドナーの正義感を受け継いでしまったらしく、純粋な正義感の持ち主。その純粋さがトウヤの気に入って、騙されていた彼女を救い出すことになります。
2巻以降は本物のCIRO-Sが登場し、トウヤと珠子の2人を組織に組み込むことにします。直接の上司は、警察庁からの出向だとういう椥辻未練警視。エリート官僚ではある一方、大学生の頃から能力が発現し、CIRO-Sのメンバーとして働いていたという過去の持ち主。かなり味わい深いキャラです。

Cファイルを巡る攻防は3巻で一応の決着を見るのですが、その決戦舞台となった豪華客船から救助されたのは珠子だけで、トウヤは彼女の救助を優先するために自分は船に残ってしまったので死んだものと思われ、4巻では記憶を消されてしまった珠子が自分を取り戻すストーリーになっています。
雰囲気的にこれで完結という感じではなかったので、再会して絆を深めたトウヤと珠子のコンビの今後の物語があるのではないかと思われます。

異能者関係の事件を担当する異能者で構成される警察内の秘密組織という設定はよくあるような気がしますが、エンタメ性は非常に高く、一度読み出したら止まらなくなる面白さがあります。
登場人物は皆どこかしらおかしく、破綻しており、精神的な健常人・常識人があまり出てこないというのも特徴的かもしれません。


書評:松岡圭祐著、『優莉結衣 高校事変 劃篇』(角川文庫)

2023年02月06日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

高校事変本編では書かれていなかった優莉結衣のホンジュラスでメキシコの過激派組織ゼッディウムと死闘を繰り広げた後の日本帰国までの足取りがこの劃篇に描かれています。
なんと結衣は北朝鮮に連行されていた!
日本の高校に編入するはずだった工作員と人違いされ、そのまま北朝鮮の工作員養成学校に特別に編入学することになります。
しかし、しばらくして正体がバレてしまい、北朝鮮の上層部は、日本を陰で牛耳る架祷斗の妹を匿ったとして、教員・生徒全員を殲滅する作戦を実行する。
北朝鮮版『高校事変』がここに展開します。
長男・架祷斗との最終決戦を前にした優莉結衣の過酷な道筋。


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書評:松岡圭祐著、『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VII レッド・ヘリング』(角川文庫)

2022年12月23日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

相変わらず松岡圭祐の著作スピードは驚異的です。VIが出てから4か月ですでに続刊発売。ストーリーを忘れないでいられるので、多読者としてはありがたいです。

さて、この巻では杉浦李奈が作家としての「有名税」とも言える嫌がらせ行為を受けることから始まります。Amazonの作品評価に唐突に星1つの投稿が並んだり、自分の名前で身に覚えのない官能小説が出版社に送られていたり、自宅の住所が公開されたり等々。
しかし、警察に届けると作家のファンが離れてしまうリスクが大きいので李奈が有効な対抗策を取れないままでいると、いきなり出版社にいる李奈を呼び出す内線電話がかかってきて、会いに行くと、様々な嫌がらせをやらせた本人と思われる大企業の社長が現れ、明治に500部ほど発行されたという幻の丸善版新約聖書を探し、詳細な研究論文を執筆してほしいと李奈に強要します。
李奈は抵抗を試みますが、結局のところくだんの聖書を手に入れ、これを欲しがる理由を究明する以外にないと決意し、調査を始めます。翻訳聖書の話だと思いきや調査の過程で話は徳川慶喜と勝海舟に確執にまで及び、意外な展開を見せます。

万能鑑定士Qの凛田莉子改め小笠原莉子も再登場し、李奈に協力する作品越えコラボもあり、ファンとしては嬉しい限りです。

この巻で莉子は、大した売れ行きではなくても世に名前を出して作品を発表することの責任とリスクについて自覚し、作家としてもまた成長するところも魅力です。


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書評:松岡圭祐著、『探偵の探偵 桐嶋颯太の鍵』(角川文庫)

2022年12月01日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

紗崎玲奈を主人公とする『探偵の探偵』シリーズでは脇役だった桐嶋颯太を主人公とした本作品は、女子大生・曽篠璃香がガールズバーでバイトして、太客であるスギナミベアリング株式会社社長の漆久保宗治に気に入られて彼の専属スタッフのようになり、やがて大学や自宅にまでつきまとわれるようになるのが端緒となります。璃香はつきまといを阻止するために探偵を雇いますが、その探偵は返り討ちに遭ってしまい、自分の手には負えないので探偵の探偵に依頼を持ち込むことを璃香に勧めます。こうして璃香はスマ・リサーチを頼ることになるのですが、桐嶋颯太は璃香と日比谷公園のベンチで待ち合わせて話を聞き、すでに漆久保の愛人になってしまっている璃香をわざと怒らせ帰らせてしまいます。この策略によって桐嶋は璃香の行動を逐一漆久保に報告している悪徳探偵を突き止め、彼を利用して漆久保に一杯食わせますが、璃香に報告に行こうとしたところ、彼女は殺されてしまいます。悪徳探偵も自殺に見せかけて始末されてしまい、桐嶋本人にも漆久保の魔の手が伸びてきます。
散々痛めつけられた後、桐嶋は陰で進行中の銃の大量密輸事件に漆久保が絡んでいることを知り、彼のその他の悪事を暴くため調査を始めます。
ところが、璃香の復讐をしようと動き出した妹の晶穂と共に漆久保の用心棒クロたちの手に落ちてしまいます。漆久保の側には、対探偵課の手の内を知り尽くしている同業の藤敦甲慈(ふじつるこうじ)がおり、ブラフも効かず万策尽きたかに見える状況。その危機的状況からどう抜け出すのか、ハラハラします。

作中には高校事変の事件や優莉結衣の名前も登場し、現実の安倍晋三元首相に対するテロ襲撃事件のことも組み込まれ、巧みに現実と松岡作品ワールドが絡み合って展開していきます。



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書評:松岡圭祐著、『優莉凛香 高校事変 劃篇』(角川文庫)

2022年11月05日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

『優莉凛香 高校事変 劃篇』は、つい最近完結した『高校事変』シリーズの主人公優莉結衣の妹凛香の物語です。本編では語られていなかった凛香の日常や思いなどが綴られています。
時間軸は本編の田代勇次が大量の武器をもって日本に上陸作戦を行う手前(本編IX)の辺りです。
彼女がどういう思いで姉の結衣を殺そうとしたり、それが叶わなかった後、どういう思いを姉に抱いていたのか、彼女の複雑な憧れや孤独感、期待と失望、どうせダメだという諦念と自己嫌悪。様々な思いを持て余して自棄になりつつも、純粋なものを自分のせいで汚したくないという良心や守りたいという正義感は結衣と通じるものがあります。
激しい「中2」生活を送った凛香の幸せを願わずにはいられない、そんなスピンオフの物語でした。




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書評:もり著、『屋根裏部屋の公爵夫人』全3巻(KADOKAWA)

2022年10月19日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

おすすめとして上がってきて、面白そうなので3冊まとめ買いした上に、一気読みしてしまいました。
政略結婚のすえ公爵夫人となったオパールは、社交界デビューしたばかりの時にやらかしてしまった失敗のため、いわれのない不名誉な噂が立ち、それを真に受けていた公爵およびその使用人たちに剥き出しの敵意を向けられ、邪魔者扱いされたため、拗ねて屋根裏部屋にこもってしまいます。
そこからの逆転劇が語られます。
オパールは伯爵令嬢で、持参金以外にも自分の資産を持っており、子どもの頃から領地の管理人に様々なことを教わっていたので、その知識を生かして、借金にあえぐ公爵家の領地の再建に乗り出そうとしますが、公爵に相手にしてもらえなかったので、法務官の叔父の手を借りて公爵家の領地を自分名義に書き換え、名ばかりの夫に宣戦布告し、公爵領に向かい領地改革に乗り出します。
その仕打ちのせいで自分の甘さを自覚した公爵は、領地を買い戻すために努力を重ねます。

これで、夫婦としての愛情も芽生えてハッピーエンドなのかと思いきや、そうはならないところが捻りがあって面白いです。


2巻では、行方不明になっていた幼馴染のクロードが隣国の侯爵の地位を受け継いで帰国し、離婚したオパールにプロポーズします。かくして二人は隣国に向かいますが、国王はクロードを重用し、オパールを歓迎するものの、他の貴族たちはそれが面白くなく、二人を歓迎しません。
また、反国王派の動きも活発になり、クロードは国王の命を受けてその対処に当たり、オパールは新たに受領した公爵領の改革に乗り出すものの、誘拐・軟禁されてしまいます。
3巻でオパールの救出と反乱軍の逮捕および裁判等の事後処理が描かれます。様々な伏線が回収され、ようやく平穏が訪れるというハッピーエンドです。

身分と資産があり、伯爵令嬢・公爵夫人にあるまじき商才と管理能力と闘争心を持つオパールのキャラクターが面白いですね。
金儲けのことしか考えてなさそうなオパールの父も、実は感情表現が不器用なだけで、情に厚いキャラクターもなかなかいいです。
国王とクロード、それからオパールの兄のキャラもなかなか面白いのですが、もう少し深掘りされていてもよさそうな印象を受けました。