徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:今野敏著、隠蔽捜査8『清明』(新潮社)

2022年04月02日 | 書評ー小説:作者カ行

昨日読んだ横浜みなとみらい署暴対係シリーズ第5弾『スクエア』 で扱われた事件の容疑者の身柄が確保されたタイミングで竜崎伸也が神奈川県警刑事部長に着任するところから隠蔽捜査シリーズ第8巻の『清明』の物語が始まります。
この小さなリンクがあるために続けて読んでみようという気になりました。
ファンにとって異なるシリーズのストーリーが交差したり、登場人物が重なったりすると、なぜか意外なところで知り合いに再会したときのようなワクワクとした嬉しい気分になれるものです。

神奈川県警の四角四面の流儀・風潮に慣れないなりに、「合理的でない」の一言でバッサリ切り捨てにしてしまうのではなく、そこそこ尊重する柔軟な態度を示す竜崎は少し丸くなったのでしょうか。

着任早々、県境で死体遺棄事件が発生し、警視庁の面々と再会するものの、どこかやりにくさを感じ、また、さらに被害者は中国人と判明して、公安と中国という巨大な壁が立ちはだかります。
一方で、妻の冴子が交通事故を起こしたという一報が入り、地元の警察OBの運営する教習所とのトラブルがあり、なかなか前途多難な様相を呈しています。

しかし、本音と建前を使い分けようとせず、本音の合理性と柔軟性を持つ竜崎節で多くの人の信頼を勝ち取り、最後にはハッピーエンドになるのがいいカタルシス効果です。

結局、人は自分を1人の人として尊重してくれ、正直に対応してくれる人を信用するものなので、何かを隠そうとしてもこじれるばかりで何もいいことはないという姿勢が清々しく、漢詩から引用したタイトルの『清明』がしんみりと心に沁みてくるような読後感を得られます。

 


安積班シリーズ
 
隠蔽捜査シリーズ

警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ

ST 警視庁科学特捜班シリーズ

「同期」シリーズ

横浜みなとみらい署 暴対係シリーズ

鬼龍光一シリーズ

奏者水滸伝