徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:松岡圭祐著、『JK II』(角川文庫)

2022年09月24日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

やはり予想通り「JK」の続編が出ました。しかも、たった4か月後に。相変わらずものすごい執筆スピードで、頭が下がりますね。

IIは、主人公・有坂紗奈の平穏だったころのバイト風景から始まり、一転して不良たちに拉致され暴行を受ける中、両親が殺されるシーンになり、さらに整形して売り飛ばされた先の「輪姦島」での悪夢の日々の中、生き残るためにJK(ジョアキム・カランブー)の「窮鼠は学ぶ。逆境が師となる。」 という教えを実践し、殺人技術を磨いていくシーンに変わり、最後に「もっとましな夢を見たかった」と目覚めます。前編のおさらいができる親切な出だしです。

この巻では、前回は謎だらけだった紗奈の江崎瑛里華としての生活が描かれます。前回、彼女の両親と彼女自身を殺した不良たちへの復讐が果たされましたが、今回はそのバックにいた地元の暴力団・衡田組が相手となります。
江崎瑛里華はK-POPダンスのYouTuber「EE」として収入を得ており、毎朝その投稿動画撮影のため河川敷に行っている。そこへ、衡田組のチンピラが登場し、江崎瑛里華の正体が有坂紗奈であることを確認するために組に連行しようとします。そのチンピラをあっさりと殺害して、彼のスポーツバッグの中にあったメモに記された日時に渋谷109へ向かう。
その前に江崎瑛里華のマンションに刑事たちが聞き込みに訪れ、念のためとDNA検査のための唾液サンプルも採取されてしまう。刑事の1人の津田は、衡田組同様に江崎瑛里華の正体が有坂紗奈で、不良たちの連続殺人の犯人なのではないかと疑いを抱いていたのだ。
そして津田も衡田組のチンピラが残したメモが麻薬取引日を示すものと考え、S109周辺の張り込みに行くことになる。本当は本格的な網を張っておくように忠言したのだが、所轄の上司にも警視庁にもロクに相手にされず、当日は交番の警察官による警戒強化だけとなっていた。
こうして惨劇は始まります。

『高校事変』の主人公・優莉結衣(ゆうり・ゆい)は、平成最大のテロ事件を起こし死刑となった男の娘で、幼少時から戦闘を仕込まれていたいわばその世界のサラブレットでしたが、それに対して有坂紗奈はダンスで体を鍛えていたとはいえ普通の女子高生で、窮地に立たされたことから驚異的な速さで戦闘力を身につけて行くヒロインです。
初めは不良たちへの復讐でしたが、次は地域社会、引いては女子高生のような弱者を脅かし、躊躇いなく食い物にしていく暴力に立ち向かうという正義感で行動しています。「法治国家」が「放置国家」になっている実情を踏まえ、幽霊となってしまった有坂紗奈が果てしない戦いに挑む!という感じのようです。

『探偵の探偵』『高校事変』『ウクライナにいたら戦争が始まった』に続く女子高生バイオレンスシリーズで、少々食傷気味ではありますが(バイオレンス描写が不快なので)、それでも先が気になって仕方がないという具合に著者の術中に嵌まってしまっています。


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