徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 緑の調査ファイル』(講談社文庫)

2018年12月13日 | 書評ー小説:作者カ行

色シリーズ第4弾の『ST 警視庁科学特捜班 緑の調査ファイル』は結城翠が活躍するエピソードです。

新東京フィルとのコンサートを控えている人気バイオリニスト柚木優子の持つ1億円の名器ストラディバリウスが盗難に会い、その社会的影響の大きさから捜査本部が立ち上げられ、STも出動することになります。バイオリンはコンサートのリハーサルの際にすり替えられたらしい。出動したST翠の異常な聴覚に、オーケストラの指揮者・辛島は興味を示し、もしかしてラブロマンスに発展するかも?というような展開があります。

盗難の捜査が難航するなか、コンサートマスターが柚木優子のホテルの部屋で殺されてしまいます。彼は辛島とともにコンサートの打ち合わせに優子の部屋に来ており、優子は途中で取材が入っていたので部屋を出て、辛島も出て行った後に殺されたようだった。部屋には内側からチェーンがかけれれており、密室のようになっていました。

盗難と密室殺人のトリックは青山翔が謎解きしますが、翠はその驚異的な聴覚を持ってなぜバイオリンがすり替えられたのかという動機の方に迫ります。彼女の犬笛すら聞き分ける超人的な聴覚を持つが故の苦悩も描写されているのが印象的です。

捜査一課のST連絡役ということになっている菊川がクラシックファンであるという意外な一面も。辛島や優子の前で緊張しているところがちょっとかわいい感じです。

また、STにも反感を持ち、音楽にも興味を持ってなさそうな所轄の盗難担当刑事が捜査の間に優子の生演奏を聴いて「心を盗まれた」と言い張り、コンサートに招待させるあたりがなんというか、おかしいです(笑)


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