『Angel & Demons(天使と悪魔)』は、「ロバート・ラングドン」シリーズの第1作。映画化は「ダヴィンチ・コード」の方が先だったため、物語の時系列は原作とは逆転しているらしいです。映画の方を見ていないので何とも言えないのですが、「ダヴィンチ・コード」は日本語翻訳を何年か前に読んだことがあります。
この第1作は、Simon + Schuster出版の原文(2005.05)に挑戦です。実はシリーズ4作とも英語のeBookで買いました。
Angel & DemonsはChapter 137まであります。かなりのボリュームですが、ストーリーは「ロバート・ラングドンの長い一日」ともいうべきもので、朝5時(ボストン時間)に謎の電話で叩き起こされ、「飛んで1時間のところだからすぐ来い」と呼び出され、様々なやり取りの後結局行くことに決めて、空港に行くと、迎えだという飛行物体はロケットのようで、「飛行1時間」でスイスのジュネーヴへ連れて行かれ、続けてヴァチカンへ送り込まれ、大事件の解決のために最後の最後まで奮闘して、ボロボロになって夜が明ける…みたいな実に忙しい話。
大事件を起こすのはIlluminatiという近世の科学者たちによる秘密結社の末裔(?)。Illuminatiとはラテン語で「明るく照らされた者たち」という意味で、単数形(男性)はIlluminatus。日本語でもある分野に詳しいことを「~に明るい」と言うように、ラテン語のIlluminatiも真実を追求する科学者たちを指しており、ガリレオ・ガリレイ、ミケランジェロ、ベルニーニ、ラファエッロなどがその結社の会員だったようです。後に教会の弾圧のために地下に潜ることになり、フリーメーソンに入り込んで生き延び、そればかりでなくその中枢で影響力を発揮したとか。
ロバート・ラングドンは、宗教的象徴学の専門家で、このIlluminati研究の権威でもあったために事件に巻き込まれます。
Illuminatiはスイス・ジュネーヴにある学問の殿堂CERN(原子力研究機関)から秘密裡に開発されたAntimatter(反物質)を盗み出し、開発者であるレオナルド・ヴェトラは殺され、彼の胸にはIlluminatiのアンビグラム(180度ひっくり返しても同じように読めるようにデザインされた文字)が刻印されており、ラングドンはこれの説明を求められるわけです。
そしてその盗み出された反物質はヴァチカンのどこかに仕掛けられたという情報が入り、ラングドンは殺されたヴェトラの娘であり共同研究者でもあるヴィットリア・ヴェトラと共に反物質を取り返して、大惨事を防ぐためにヴァチカンに飛ぶことになります。
反物質の物理的説明はともかくとして、次期ローマ法王を選出するためのコンクラーヴェの真っ最中で、カトリック教会の主な司祭たちが世界中から集まり、もちろん報道陣も集まっているその中に24時間以内に爆発する爆弾を仕掛けられたようなものですので、カウントダウンがされる中の展開はハラハラドキドキのスリル満点です。新教皇の有力候補(プレフェリーティ)の4人が揃って失踪しており、1時間ごとに彼らを殺害するという殺人予告電話までIlluminatiを名乗る者からあって、事件は拡大していきます。一方ではスイスガードがヴァチカン内にあるらしい爆弾もどきの反物質を探索、他方ではラングドンがIlluminatiの文献を頼りに殺害場所のヒントを探索。
しかし、この話はただのサスペンスではなく、科学と信仰に関する深い哲学的・倫理的な考察が含まれており、科学の在り方にも、信仰の在り方にも疑問を投げかけています。両者の和解・融合が可能なのか否か。
またこの作品には、ラテン語、イタリア語、ドイツ語、フランス語のセリフあるいは名称が登場します。ヴァチカンが舞台なので、教会用語としてラテン語が登場するのは当然ですし、スイスガードや周辺住民などのイタリア語が出るのも当たり前ですが、CERN所長の回想場面ではドイツ語もかなり混じっています。フランス語はスイスでのワンシーンで意味もなく(たぶん雰囲気を出すためだけに)出てきます。このマルチリンガルぶりが日本語にどう翻訳されたのか興味があります。
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