徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

ドイツ:なぜカーニバルにベルリーナー(プファンクーヘン)を食べる?

2017年02月25日 | 歴史・文化

今年の2月23日の木曜日はヴァイバーファスナハト(Weiberfastnacht、女たちのカーニバル)でしたが、一昔前とは違って私の勤める会社でも仮装してきたり、午後に本社で開催されるパーティーに参加したりする人は少数派で、大抵の人は休みを取っているか普通に働いているかのどちらかでした。私は普通に働いている部類で、ミーティングというか少人数の打ち合わせもありました。その席で同僚の一人がベルリーナーを皆のために差し入れしてくれ、その際に「ヴァイバーファスナハトにベルリーナーなしでミーティングなんてあり得ない」と言ったので、おや?と思った次第です。そして思い起こしてみれば確かにカーニバルの時期は普通の砂糖をまぶしただけのベルリーナー(下の写真)だけではなく、卵リキュールやらクリームやら、色とりどりの飾りつけされたのやらのバリエーション(上の写真)がパン屋などで随分売られているし、過去に何度かあったヴァイバーファスナハトの日のミーティングにはベルリーナーが供されていたことに、ドイツのカーニバル本拠地域在住27年目にして漸く気が付いたのです。

 

通常のベルリーナー

 

日本の方にはそもそもベルリーナーがどんなものか分からないかもしれませんので、ちょっと説明を。日本にあるものでこれに一番近いのは揚げパンです。いつだれが考案したものなのか諸説ありますが、恋煩い中の料理女が間違えてケーキの生地をオーブンではなく油の中に入れてしまったのが始まりとか、連隊所属料理人がケーキ生地を大砲の弾の形にし、オーブンがないので、ナベに油を入れてあげたのが始まりだとか。

 

揚げパンのようなものはドイツ語圏では1200年頃の修道院の献立表に記載されているものが最古の記録のようです。ただしこの頃のものは丸ではなく、長細かったという話です。そしてその両端がかぎ爪のように曲げられていたためにクラプフェン(Krapfen、中期高地ドイツ語 krapfeは「かぎ爪」という意味)と呼ばれ、その呼び名が今でも一部地域に残されています。

 

「ベルリーナー」は「ベルリンのパンケーキ(Berliner Pfannkuchen)」の省略らしく、主に北ドイツとドイツ西部ニーダーザクセン、ノルトライン・ヴェストファーレン、ラインラント・プファルツおよびバーデン・ヴュルッテンベルク州の一部、ザールラント、ドイツ語圏スイスなどでの一般的な呼称です。逆にベルリンを含むドイツ東部での名称は「プファンクーヘン」が一般的です。バイエルンやバーデン・ヴュルッテンベルク州の一部及びオーストラリアでの名称は既に述べた「クラプフェン」です。

 

中味はジャムが一般的ですが、地域によるバリエーションもシーズンによるバリエーションも様々です。このページの最初の写真はそのバリエーションの一部です。上の2個は糖衣がかけられたもので、中身はどちらも同じ。右側のに色付きチョコが載っているのが唯一の違いです。下の左のはクリーム・ベルリーナーと命名され、カスタードクリームが入っています。下の右側のは卵リキュールのクリーム入りです。

 

 

 

さて、なぜカーニバルにベルリーナー(プファンクーヘン)を食べるのかという疑問ですが、Esskultur(食文化)というサイトの記述によりますと、カーニバルのばか騒ぎの後に始まる断食に備えるためだそうです。断食前にカロリーたっぷりのものを一杯食べておこう、ということらしいですね。

 


ベルリーナー(プファンクーヘン)が中世から広く普及した理由は、油または油脂を使ってオーブンがなくても簡単に作れる手軽さだろうと言われています。


ベルリーナー(プファンクーヘン)はドイツ・スイス・オーストリアばかりではなく、その他のヨーロッパの国々にも普及しています。


ドイツ語版ウイキペディアの記事によりますと、ベルギーではブール・ド・ベルラン(boules de Berlin、ベルリンのパンケーキ)、オランダではベルリーナー・ボレン(Berliner bollen)と呼ばれ、通常真ん中で切られ、バニラクリームが入っているそうです。


ブルガリアではポニチュキという名称で、バニラ・カスタードクリームまたはベリー類のジャム入り。ポーランドではポンチュキ(Pączki)という名称。


フィンランドではジャム入りのベルリーナーはヒロムンキ(hillomunkki、マーマレード・クラプフェン)、糖衣バリエーションはベルリーニンムンキ(berliininmunkki、ベルリンのクラプフェン)そして知られています。


ノルウェーではベルリーナーボラー(berlinerboller)という名で、ジャムまたはバニラカスタードの入ったものがあります。


スロベニアではトロヤンスキー・クロフ(trojanski krof)と言い、あんずジャム入り。オーストリアのベルリーナーが一般的にあんずジャム入りなので、それが伝わったものと考えられます。


以上に挙げた国はドイツまたはオーストリアと近接しており、関係も良きにせよ悪しきにせよ密接にあったので、菓子パンに同じものがあっても不思議はないのですが、意外なのはポルトガルに伝わっているボラス・デ・ベルリン(bolas de Berlin)とチリのベルリネス(berlinés)ですね。いつだれが持ち込んだのか興味深いですね。

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風邪薬・胃腸薬『第一大根湯』の効能を自分で確認

2017年02月23日 | 健康

2月20日月曜日夜、急に水を飲みこむのすら苦痛に感じるほどのどが痛くなりました。寒気もしていたので、風邪かと思い、早速以前にネットで見つけて保存しておいた薬膳レシピ『第一大根湯』を試すことにしました。

材料:

 

  • 大根おろし大さじ3
  • 生姜のすりおろし小さじ1
  • 醤油大さじ1
  • 熱い番茶(またはお湯)2カップ

大根おろし、しょうが、醬油を番茶またはお湯で割るだけとのことでしたが、私は番茶がなかったので、大根おろし、しょうが、醬油を鍋に入れて、水2カップ、さらにはちみつを小さじ1加えて、沸騰する直前くらいに火を止めて頂きました。

水を飲むのはのどが痛くて苦痛なのに、不思議とこれはのど通りがよくて、問題なく飲み込めました。

翌朝、すでにのどの痛みがましになっていましたが、朝食代わりにもう一度『第一大根湯』プラスはちみつを頂きました。夜にもう一回。

そして水曜日の朝には完治していました。それでも朝食の後に『第一大根湯』プラスはちみつ1/2の量を頂きました。

月曜に風邪の症状が出た時は、本格的にダウンするのかと思いましたが、『第一大根湯』プラスはちみつのおかげでもう全快です。まさかここまで効き目があるとは思いませんでした。

 

正直、びっくりです。


書評:松岡圭祐著、『水鏡推理 6 クロノスタシス』(講談社文庫)

2017年02月20日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

松岡圭祐の『水鏡推理』第6弾です。これは紙書籍と電子書籍が同時発売だったので、電子書籍の出版を待つことなく入手できました。

テーマはずばり【過労死】です。実にタイムリーな話題ですね。某大手の広告会社の新人女性が過労のために自殺をして、彼女のツイッター投稿が遺書になってしまった事件を会社名こそ変えていますが、そのままストーリーに組み込んでます。

文科省研究公正推進室の末席事務官水鏡瑞希は、あまり総合職らしくない須藤誠と共に過労死のリスクを数値化して予防できる画期的新技術「過労死バイオマーカー」の評価を担当することになります。厚生省肝いりの研究で、前年の春に省庁職員が健康診断のついでに睡眠を計測するなどのデータ取りに協力させられたものだとか。瑞希はその数値データと、実際にその後に過労死している3人の公務員の実例を探ろうとします。その一環として、例によって例のごとくとんでもないものを掘り起こしてしまうことになります。

タイトルの「クロノスタシス」は急に時計を見ると秒針が止まっているように錯覚する時のような、視点移動にかかる時間的を脳が埋めようとする現象を指しています。疲労度を測る位置方法のようです。秒針が止まって見えるのが「正常」です。一瞬止まって見えなかったら大分疲れがたまっているらしいです。

当の瑞希ちゃんも睡眠障害に陥っているにもかかわらず、必死で「過労死バイオマーカー」の調査に取り組みます。

今回は専門用語など科学的な説明が比較的少ない上に、テーマがタイムリーで身近なため、非常に読みやすくまとまっています。作者の「過労死」という社会問題に対する考え方を反映しているらしく、非常にメッセージ性の高い作品になっています。その分ミステリー色は少なくなっていますが、それでも十分に「謎」があり、「転」があるいい小説だと思います。

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書評:松岡圭祐著、『水鏡推理』(講談社文庫) 

書評:松岡圭祐著、『水鏡推理2 インパクトファクター』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『水鏡推理3 パレイドリア・フェイス』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『水鏡推理4 アノマリー』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『水鏡推理5 ニュークリアフュージョン』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『探偵の鑑定I』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『探偵の鑑定II』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『探偵の探偵IV』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『千里眼完全版クラシックシリーズ』(角川文庫)

書評:松岡圭祐著、『万能鑑定士Qの最終巻 ムンクの≪叫び≫』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『被疑者04の神託 煙 完全版』(角川文庫)

書評:松岡圭祐著、『催眠 完全版』(角川文庫)

書評:松岡圭祐著、『カウンセラー 完全版』(角川文庫)

書評:松岡圭祐著、『後催眠 完全版』(角川文庫)

 



書評:ダン・ブラウン著、『Deception point』(Simon + Schuster)

2017年02月20日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

『ダ・ビンチ・コード』などの原作者ダン・ブラウンの2001年に発表されたテクノ・スリラーとやらが、この『Deception point』。日本語訳のタイトルも『デセプション・ポイント』(角川書店)のままのようですが、個人的に日本語のタイトルとして『欺瞞』を推したいですね。私が読んだのはSimon + Schuster社の電子書籍版(2006)です。

それはともかく、ちょっと副業の翻訳が忙しかったせいで、読むのに大分時間がかかってしまいました。原文で読んでるので、日本語よりも時間がかかるというのもありますが、話の内容にも関係しています。

プロローグが何を意味しているのかが分からないのはまあ普通のことですが、『デセプション・ポイント』はそれ以上に話が見えてくるまでにかなりの時間を要します。前置きがとにかく長いと私は感じました。主人公はアメリカ国家偵察局(NRO)の職員であるRachel Sexton。彼女はいわば大統領のために働いているようなものです。ところが彼女の父親Sedgwick Sexton上院議員は大統領候補で現職大統領とは対立する立場にあります。プロローグの後のストーリーはこの親子の対面から始まります。SextonはNASAが予算を喰い過ぎていて、近頃は失敗続きで、碌な成果を出していないことをやり玉に挙げて、選挙キャンペーンを張り、一方現職大統領Zachary HerneyはNASAサポーターで、つい最近も諸外国が手を引いてしまった宇宙ステーションのために追加予算を許可したばかり。Sextonの攻撃の格好の餌食となっています。それなのに彼の身内が大統領のために働いているのは都合が悪いということで、娘を説得しようとしますが、彼女は母親の死以来父親とは不仲で、しかも自分の職を誇りに思っており、彼女の上司William Pickeringのことも尊敬しています。この上司はNASAのせい(?)で娘を亡くしており、NASAにはいい感情を持っていません。

等々重要な伏線には違いないのですが、こういった状況説明・人物説明がかなり続くのです。Rachelが父親と会談した日に出勤したら、当の大統領から個人的に呼び出しがかかっていると上司に知らされ、あれよあれよという間に何かに巻き込まれていくわけですが、一体何に巻き込まれているのか、つまりNASAの北極での隕石発見とどうやらその隕石に化石化した生物がみつかった、という世紀の大発見が明かされるまでにも相当のページ数がさかれています。そしてようやくそこに辿り着いても、まだプロローグの特殊部隊らしいDeltaチームとの関連性はほぼ見えないのです。

そういう意味で前半部は結構読むのが苦痛です。後半部になってようやく「ラングドン」シリーズでお馴染の追われる・命を狙われるスリル感と謎解きの組み合わせを堪能することができます。びっくりなどんでん返しもあります。なんとラブストーリーもあります。なので、後半はページを繰る手が止まらない(といっても電子書籍では物理的には不可能ですが)感じでした。

話運びはやはりこの後の作品群「ロバート・ラングドン」シリーズの方がいいですね。

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書評:ダン・ブラウン著、『Angel & Demons』(Simon + Schuster)

書評:ダン・ブラウン著、『The Da Vinci Code』(Transworld Publishers)

書評:ダン・ブラウン著、『The Lost Symbol』(Transworld Publishers)

書評:ダン・ブラウン著、『Inferno』(Transworld Publishers)

書評:ダン・ブラウン著、『Digital Fortress』(Transworld Publishers)


ドイツのバレンタインデー

2017年02月14日 | 歴史・文化

今日はバレンタインデーということで、ドイツではどういう風習なのかについて書きます。

2月14日のバレンタインデーというのはValentinus(ヴァレンティーヌス)という聖人・殉教者の日という意味ですが、その名の聖人は一人ではなく複数います。有力候補は3世紀のテルニ司教(269年2月14日死亡)です。ヴァレンティーヌスの追悼日として導入したのはローマ教皇Gelasius I.(ゲラジウス1世)で、469年のことでしたが、1969年にはカトリック教会の聖人暦から外されました。それでも今なお夫婦を祝福するミサが場所によっては行われているそうです。

詳しい起源はともかく、2月14日は中世以来恋人達・夫婦達の日であったことは確かです。その祝われ方は国によって違います。チョコを贈るのは日本のチョコレート業界のマーケティング戦略によるものなので、ドイツではバレンタインチョコなどありません。多くの場合、男性が女性に花を贈ります。

いくつか面白い統計を見つけたのでご紹介します。

ドイツのバレンタインバレンタインデーの起源


・ヴァレンティーヌスというキリスト教の殉教者 50.8%
・分からない 22.9%
・生花業界の発明 16%
・中世の王ヴァレンタイン3世によって導入 10.3%

バレンタインデーはあなたにとってどんな日?

恋する者たちにとって素晴らしい日 32.8%(男性)、44.2%(女性)
・愛するパートナーのためにすること 25.8%(男性)、8.2%(女性)
・不要な日。パートナーを喜ばせるのに1年365日ある 31.2%(男性)、37.8%(女性)
・純粋な商業主義。自分はそれに乗らない 10.3%(男性)、9.9%(女性)

どんな花を贈りますか(男性)または 贈られたいですか(女性)?

・ミックスされた花束 39.1%(男性)、32%(女性)
・バラの花束 38.1%(男性)、35.5% (女性)
・バラ1本 17% (男性)、24.3% (女性)
・その他 5.8%(男性)、8.3% (女性)

花のプレゼントにどのくらいお金を使いますか(男性)?

・20 €まで 50.1%
・21-40 € 38.2%
・41-60 € 7.9%
・61-80 € 1.8%
・81-100 € 1%
・101-120 € 0.5% 
・121-140 € 0.25%
・140 €以上  0.25%

ソース:Statista, Valentinstag in Deutschland, 2014.02.13

バレンタインデーの風習の起源が「生花業界の発明」だと考えている人が16%もいるのが面白いですね。

 

バレンタインデーにパートナーにプレゼントをする人は実際どのくらいいるのでしょうか。2015年の統計では、「パートナーに何か贈る」と答えた人が52%、「贈らない」と答えた人が48%。

 

ソース:Statista, Umfrage in Deutschland zu Geschenken am Valentinstag 2015

ちなみに私はダンナから花などのプレゼントをバレンタインデーにもらったことがありません。その2日前が私の誕生日で、誕生日プレゼントが花束であることが多いので、バレンタインデーは何もなしになります。彼が私の誕生日がバレンタインデーではなく2月12日だと正確に記憶するまでに数年かかりました( ´∀` )

それはともかく、バレンタインデーの贈り物には花の他にどんなものがドイツでは人気があるのでしょうか。それを示すのが以下の統計(2009年)です。

過去数年間のバレンタインデーにどのような贈り物をしましたか?(複数回答)

花 76.6%
お菓子・スイーツ 62.9% 
手紙・カード 45.2%
ロマンチックなディナー 33.6%
音楽 27.7%
服・身の回り品 25%
香水等 24.9%
アクセサリー 23.1%
商品券 22.9%
下着 10.8%
電子機器 6.4%
分からない・無回答 1%
その他 12.3%

 

ソース:Statista, Zum Valentinstag gemachte Geschenke

個人的な経験から申しますと、バレンタインデー商戦シーズンにあるキャンペーンのお知らせメルマガなどはやはり、花が多いですが、それ以外だとお菓子やスイーツ、香水・化粧品類、服などの通販が多いですね。14%割引とか。中にはバレンタインキャンペーンだというのに、「自分用にもどうぞ」なんて言うのも見かけました。それってちょっとむなしいというか、売れるなら何でもいいのか、というか…。 

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