徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:松岡圭祐著、『千里眼 キネシクス・アイ 上・下』(角川文庫)

2021年06月27日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

千里眼新シリーズ第14・15巻『千里眼 キネシクス・アイ 上・下』はシリーズ最終話ではありますが、結論を言ってしまえば最終解決はしてません。
ノン・クオリアという機会至上主義集団との戦いは、日本の一拠点を叩き、元ノン・クオリア準メンバーの協力によって世界各地の拠点に捜査の手が入ることで一応の決着はついたものの、本拠地および正式メンバーは謎に包まれたまま残っているので、シリーズ復活の余地が残されています。

美由紀の16年前、小学6年生の頃のエピソードが彼女の自衛隊入隊や臨床心理士への転職の決断に至る重要なきっかけとしてまず語られるのですが、正直、長いです。ノン・クオリアとの戦いの収束のための伏線として必要な部分もありますが、そこまで詳しく語るなら、本編のストーリー展開を邪魔しないようにスピンオフ、番外編とするべきだったのではないかと思います。
千里眼・美由紀の思考を読み、その行動を予測する機械によるキネシクス分析の精度の高さが異様に恐ろしく不気味で、美由紀が後手後手に回ってしまうところがスリル満点ですし、集中豪雨が自然災害ではなく降雨弾による人工的なものであるという設定もなかなか壮大で面白いです。その最強の降雨弾が東京に落とされるのを阻止するため、F15で美由紀が追いかけるというのはいつものパターンですが、今回は基地に不法侵入した上に戦闘機をかっぱらうわけではなく正当な手続きを踏んで発進しているところにヒロインの成長が見られますね。

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