『危機と人類 上・下』は上下巻合わせて1270ページを超える大作であるため、典型的な〈積読本〉となっていましたが、年末に手を付けて、1か月近く中断している期間の方が多かったですが、何とか読破しました。
本書は一言で言えば、「危機の乗り越え方」についてのケーススタディです。
まず、個人的危機とその克服のために必要となる要因と、国家的危機とその克服のために必要となる要因を明らかにし、両者の共通点・相違点を明確にします。その後に、著者がよく知る7か国の事例を詳細に見て、先に明らかにした要因にそれぞれ当てはめて分析・比較します。この類型化するのに必要な要素があれば、他の事例の分析にも応用でき、そこから学びを得ることも可能であろうと希望が持てる一方で、現在人類が直面している気候変動やそれによる資源枯渇・食糧不足やそれにまつわる紛争・難民問題など、国家を超えた問題には先例もなければ外からの支援もないという意味で、かなり困難な状況であることが浮き彫りにもなってきます。
その危機克服のための要因とはどんなものか。それが以下です。
個人的危機の帰結に関わる要因
1. 危機に陥っていると認めること
2. 自分の責任の受容
3. 囲いをつくること
4. 周囲からの支援
5. 手本になる人々
6. 自我の強さ
7. 公正な自己評価
8. 過去の危機体験
9. 忍耐力
10. 性格の柔軟性
11. 個人の基本的価値観
12. 個人的な制約がないこと
2. 自分の責任の受容
3. 囲いをつくること
4. 周囲からの支援
5. 手本になる人々
6. 自我の強さ
7. 公正な自己評価
8. 過去の危機体験
9. 忍耐力
10. 性格の柔軟性
11. 個人の基本的価値観
12. 個人的な制約がないこと
国家的危機の帰結に関わる要因
1. 自国が危機にあるという世論の合意
2. 行動を起こすことへの国家としての責任の受容
3. 囲いをつくり、解決が必要な国家的問題を明確にすること
4. 他の国々からの物質的支援と経済的支援
5. 他の国々を問題解決の手本にすること
6. ナショナル•アイデンティティ
7. 公正な自国評価
8. 国家的危機を経験した歴史
9. 国家的失敗への対処
10. 状況に応じた国としての柔軟性
11. 国家の基本的価値観
12. 地政学的制約がないこと
分析・考察の対象となっているのは、冬戦争に直面したフィンランド、ペリー来航以後西欧列強に直面した近代日本と現代の日本、クーデター・ピノチェト独裁に直面したチリ、バラバラの植民地から新国家として独立したインドネシア、第二次世界大戦後のドイツ、英国との繫がりから徐々に脱したオーストラリア、最後に現代アメリカです。
1. 自国が危機にあるという世論の合意
2. 行動を起こすことへの国家としての責任の受容
3. 囲いをつくり、解決が必要な国家的問題を明確にすること
4. 他の国々からの物質的支援と経済的支援
5. 他の国々を問題解決の手本にすること
6. ナショナル•アイデンティティ
7. 公正な自国評価
8. 国家的危機を経験した歴史
9. 国家的失敗への対処
10. 状況に応じた国としての柔軟性
11. 国家の基本的価値観
12. 地政学的制約がないこと
分析・考察の対象となっているのは、冬戦争に直面したフィンランド、ペリー来航以後西欧列強に直面した近代日本と現代の日本、クーデター・ピノチェト独裁に直面したチリ、バラバラの植民地から新国家として独立したインドネシア、第二次世界大戦後のドイツ、英国との繫がりから徐々に脱したオーストラリア、最後に現代アメリカです。
目次
(上巻)
プロローグ ココナッツグローブ大火がもたらしたもの
第1部 個人
第1章 個人的危機
第2部 国家—明らかになった危機
第2章 フィンランドの対ソ戦争
第3章 近代日本の起源
第4章 すべてのチリ人のためのチリ
第5章 インドネシア、新しい国の誕生
(下巻)
第6章 ドイツの再建
第7章 オーストラリア—われわれは何者か?
第3部 国家と世界—進行中の危機
第8章 日本を待ち受けるもの
第9章 アメリカを待ち受けるものーー強みと最大の問題
第10章 アメリカを待ち受けるものーーその他の三つの問題
第11章 世界を待ち受けるもの
エピローグ 教訓、疑問、そして展望
私はフィンランドやインドネシア、チリなどのことはほとんど知らなかったので、大変勉強になりました。
全部を読むのは大変ですが、例えば日本に関する章だけを読んでも、いわゆる歴史ものの本とは違った社会学的アプローチで目から鱗が落ちる感覚を味わえるかもしれません。
世の中には私たちが「知っているつもり」になっているに過ぎないことが多々ありますので、改めて学ぶことの大切さを失わないでいたいものですね。