徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 毒物殺人<新装版>』(講談社文庫)

2018年12月11日 | 書評ー小説:作者カ行

ST 警視庁科学特捜班の初期シリーズ第2弾『毒物殺人』では、代々木公園と世田谷公園で連続して死体が発見され、ふぐ毒(テトロドトキシン)が検出されますが、フグを食べた形跡がないため、関連する可能性のある毒殺事件として捜査本部が立ち上げられます。警察内にはSTを疑問視する声が強く廃止計画が持ち上がってきているため、百合根警部は上司の桜庭科捜研所長と三枝管理官から「手柄を立てろ」とプレッシャーをかけられます。百合根警部はSTキャップとして曲者ぞろいのメンバーに手を焼いていますが、意外と彼らに好かれているようで、今回は特に山吹が要求されて手柄を立てるために、少々危ない賭けに出て活躍します。

プロファイリングなどを専門とする超絶美形の青山が代々木公園の死体を通報したホームレスとのんびり話をしていたり、相変わらず「僕もう帰っていい?」と一切空気を読まないマイペースさを発揮するところが笑えます。だけど、少々功を焦っている百合根に山吹を信じて捜査の邪魔をするなとくぎを刺したり、捜査で被害者双方の共通点として浮かび上がってきた女子アナ八神秋子の恋人とストーカーの関係を見抜くなど、鋭利な洞察力を発揮します。

STと刑事部の連絡役として任命されている菊川警部補がだんだんとSTを悪くないと思いだしているところがいいですね。頑固ではあっても頑迷ではないところがなかなか魅力的な人物。

百合根警部も本人が悩んでいるほど無能ではないですが、突き抜けた天才ばかりのSTメンバーの中にあって唯一の常識的秀才という感じですね。

週刊誌などでバッシングを受け、プライベートでも常にカメラマンなどに付きまとわれる人気女子アナのストレスも想像に難くないですが、そういう彼女との関係を懸命に維持しようとする恋人の方も大変ですね。彼の場合なんだか変な方向に思いつめちゃってましたが。無理をして付き合えば、どこかでほころびが出てくるということなんでしょうね。


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