徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

ドイツ:太陽光電力逐電助成プログラム3月1日よりスタート

2016年02月29日 | 社会

ドイツ連邦経済エネルギー省の2016年2月19日のプレスリリースによれば、3月1日から新しい太陽光電力蓄電器設置を助成するプログラムがスタートするそうです。

連邦政府の再生可能エネルギー助成プログラムによって過去数年で地域分散型の太陽光発電機が急成長しました。送電網及び電力供給の更なる安定性を図るため、発電だけでなく、地域分散型の逐電も重要性が増してきたと見なされ、新たな逐電助成プログラムの開始に至ったとのことです。

助成はドイツ復興金融金庫を通して実施されます。設置費用に対する助成金の割合はプログラム開始時の25%から段階的に下げられ、最終的には10%になります。

  • 2016年3月1日―2016年6月30日:25%
  • 2016年7月1日―2016年12月31日:22%
  • 2017年1月1日-2017年6月30日:19%
  • 2017年7月1日ー2017年12月31日:16%
  • 2018年1月1日ー2018年6月30日:13%
  • 2018年7月1日ー2018年12月31日:10%

すでに終了した助成プログラムの枠内でドイツ復興金融金庫(KfW)は1万9千件、6000万ユーロの助成金を拠出しました。これによりトータル約4億5000万ユーロの逐電設備投資がなされました。

ドイツは2050年までに100%再生可能エネルギーによる発電を目標としています。


書評:松岡圭祐著、『千里眼完全版クラシックシリーズ』(角川文庫)

2016年02月28日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

「万能鑑定士Q」シリーズで松岡ファンになった私は、今まで「千里眼」シリーズをその発売日の古さから見逃していました。それを見つけたのは、単に発売日の新しいほうの作品を全て網羅してしまったから。

私がこの度手に取った「千里眼完全版クラシックシリーズ」(角川文庫)はそれ以前の「千里眼」シリーズの焼き直し、全面改稿したものだそうで、前作の設定やストーリーがかなり変わっている別作品というのが作者の言い分ですが、読者のコメントを読んだ限りではその差が必ずしも明確には認知されていないようです。私は前作の方を読んでいないので、何とも判断しかねるのですが。

「千里眼完全版クラシックシリーズ」(角川文庫)は全部で12巻16冊あり、一気読みするとなるとかなり日数を要します。私は9日間かかってシリーズを制覇しました。休暇中ならもっと速かったでしょうけど、仕事しないわけにはいかないので仕方ありません。

まずはシリーズ全体の感想ですが、壮大なドラマですね。主人公は女性初の戦闘機パイロットとなった元幹部自衛官で、現在臨床心理士として活躍する28歳の女性、岬美由紀。防衛大・幹部候補学校時代にがむしゃらに勉強して身に着けた膨大な知識、厳しい訓練を受けて鍛えられた体、そしてパイロットの動体視力を心理学の知識に基づく表情観察に生かし、瞬時に相手の表情・思考を読む「千里眼」の能力を持つ彼女が次々に事件を解決していく話です。なんかあり得ないスーパーウーマンですが、一度その設定を受け入れてしまえばかなり楽しめるシリーズです。

敵対する組織は「恒星天球教」という宗教団体をカモフラージュに国家転覆を企むグループ。その実態は臨床心理士にして脳外科医でもある友里佐知子とその養い子鬼芭阿諛子を除けば、全て脳梁切断手術を受け、暗示で操られるロボットで構成されています。

更に敵対する組織はメフィスト・コンサルティング・グループという表向きはグローバルな経営コンサルティング会社、裏の顔は16世紀以来心理操作や扇動によって人類の歴史を作ってきたという「特別事業課」。世の「陰謀論」を体現するような組織です。友里佐知子はかつてメフィスト・コンサルティング・グループに特別顧問候補として所属していたが、脱退後は「裏切り者」として組織に狙われる身となった。

ストーリーが壮大になってしまうのはこの世界の裏側で暗躍するメフィスト・コンサルティング・グループの存在に追うことが多いと思います。設定としてはこういう組織はそれほど真新しいものでもないのでしょうが、千里眼シリーズを面白くする重要な要素です。

では各巻の書評。

1.千里眼 完全版

恒星天球教のテロから話が始まります。房総半島の先にそびえる巨大な観音像【東京湾観音】を参拝に訪れた少女。突然倒れたその子のポケットから転げ落ちたのは、度重なるテロ行為で日本を震撼させていた恒星天球教の教典だった、というのがこの巻の謎かけです。最初は誰が主人公かよく分からず、話がどこに繋がっていくのか見えなくて戸惑いましたが、中盤辺りではもうすっかり夢中。元自衛隊パイロットにして現在臨床心理士の岬美由紀が驚異的な活躍をして、国家的危機を乗り越える、というまさにスーパーヒロイン的な展開です。友里佐知子の正体がこの巻で暴かれますが、捕まらずに逃走します。

2.ミドリの猿

きみも緑色の猿を見たのかい? 嵯峨敏也と名乗る男にそう聞かれた瞬間から、女子高生の知美の存在は周囲から認識されず、母親からも拒絶されてしまう。実は彼らはメフィスト・コンサルティング・グループ日本支社ペンデュラムの罠にはまっていた。一方、岬美由紀は内閣官房直属の首席精神衛生官に就任し、ODA開始のための視察にジフタニア共和国へ同行するが、そこは実はまだ内戦中だった!視察バスに乗る前に出会った子どもたちの危機を救うためにとった美由紀の行動は国際問題となり、特に日中関係が緊張する。メフィスト・コンサルティング・グループ日本支社ペンデュラムが日中開戦を画策していたのだった。美由紀はペンデュラムの策略に嵌り、絶体絶命のピンチに陥ったところで【続く】。3巻がすぐに読めないと欲求不満になります。

3.運命の暗示

2巻で絶体絶命のピンチに陥った岬美由紀。麻痺した体で拘束されたまま中国へ運ばれてしまいます。岬美由紀を助けようと蒲生警部補と嵯峨臨床心理士らが合流し、ぎりぎりで岬美由紀が載せられたヘリに忍び込み、一緒に中国へ運ばれピンチに。麻痺から回復した岬は蒲生・嵯峨と共にペンデュラムによる中国の大衆扇動の真相に迫ります。日中開戦秒読みの最中、波乱に満ちた彼らの行動をハラハラと楽しむことができました。開戦回避は予定調和ですが、そこに至るまでの過程が尋常でなく、読み応えあります。

4.千里眼の復讐

中開戦を阻止した岬美由紀だったが、違法行為のせいで南京の監獄に収監される。恩赦の条件は連続失踪事件の解決。現場の香港には脳梁切断手術を施された人々の姿が…。友里佐知子の陰謀を察知し東京に戻った美由紀はまんまと友里の罠にはまり、山手トンネルにおびき出され、約3000人の人たちと共にトンネル崩落によって閉じ込められてしまう。そこに鬼芭阿諛子が「ようこそ、恒星天球教主催のイリミネーションの儀式へ」とアナウンス。隔絶された都心の地下深くで繰り広げられるデスゲーム。次々に出て来るイリミネーターは脳梁切断手術を受けた友里のロボットで、暗示のまま容赦なく殺戮を行う。スーパーヒロイン岬美由紀も血の海は避けられなかった。生存者はわずか400人。友里の最終目標は阻止されますが、逮捕には至らず、危険分子を残したまま話が終わる辺りはホラー小説さながら。絶対に2度読みしたくない巻です。

5.千里眼の瞳

北朝鮮の支配者の息子が偽装旅券の使用で身柄を拘束され、同行していた女性李秀卿が4年前の拉致事件を仄めかして波紋を呼ぶ。美由紀が自衛隊時代に体験した北朝鮮ミグ機の迎撃と拉致事件と向き合う。4巻がホラーさながらのストーリー展開で、5巻も割と不穏な話運びだったので、このまま岬美由紀はハードボイルドのスパイさながらに危ない道を歩んでいくのだろうかと心配になりましたが、今回は壮大な陰謀とかはなく、彼女の精神的成長に比重を置いた、ほほえましいハッピーエンドでした。何を期待して読んだかによってつまらないと感じたりする人もいるでしょうけど、私は岬と巻の後半で登場する北朝鮮の人民思想省工作員李秀卿の論争が興味深いと思いました。

6.マジシャンの少女

雪山で遭難事故が発生した。休暇で訪れていた岬美由紀は救出に向かうが、現場に人影はなく雪崩に呑み込まれてしまう。漸く宿泊していたホテルに戻ると、「岬美由紀さんは既にチェックアウトした」とホテルマンが言う。警察も駆けつけてきたところで、何かを察した美由紀は逃亡する。一方、東京都知事は、お台場の巨大カジノ建設計画を発表。オープニングセレモニーには天才マジシャン少女、里見沙希が出演していた。ショーが始まったその時、銃声が轟き、会場は武装集団に占拠されてしまう。警察官僚と政治家による国家転覆の陰謀の話で、マジシャンの少女の活躍はごくわずか。そして、スーパーヒロイン岬美由紀も途中まで潜伏してしまっており、よく分からない登場人物のみでストーリー展開していくので、少々イライラさせられました。面白くないか、といえばそうでもないのですが、話運びはやはりあまり好きにはなれません。

7.千里眼の死角

世界各地で起こる原因不明の人体発火事件。イギリスの妃殿下シンシア妃は「次は自分が殺される」と自室に引きこもり、公務を放棄していた。しかし、女王の即位50周年記念式典には是が非でも出席させないと王室の権威失墜につながると危惧した上院議員たちの要請により、たまたまロンドンにシンポジウムに来ていた臨床心理士嵯峨敏也に白羽の矢が立った。面談の結果、人体発火事件との関連性が浮かび上がってくる。嵯峨はともにシンポジウムに来ていた岬美由紀に応援を要請。人体発火はアメリカの機密「ディフェンダーシステム」の誤作動と発覚するやいなや、システムは完全に乗っ取られてしまう。それはメフィスト・コンサルティング・グループ総裁による世界直接支配の第一歩だった!ディフェンダー・システムは考えるコンピューターで、攻撃の対象を自ら探し出して「裁きを下す」という設定はSF的で、話が進むほどにSFアクション的な色合いが濃厚になります。これはこれで面白かったです。

8.ヘーメラーの千里眼 上・下

「ヘーメラーの千里眼」がなぜそのタイトルなのか分かるのは下巻を読んでから。戦闘機の演習中に基地へ侵入し、標的の中に隠れたらしい子供篠海悠平を誤射して、殺してしまったらしい伊吹二尉。その真相は?サブストーリーとして中国から密輸されているらしい新型の麻薬麝香片。
上巻では岬美由紀と伊吹直哉の回想に多くのページが割かれていて、話の本筋はなかなか進行しないので、二人の過去がストーリーに必要というのは分かっていてもかなりじれったい感じを受けました。岬自身も情緒不安定で、スーパーヒロインとしての冴えが殆ど鳴りを潜めており、もやもやした感じのまま下巻へ。
上巻に引き続き、下巻も回想が多いですが、本筋の方もかなり動きます。アルタミラ精神衛生の陰謀が暴かれ、麝香片密輸も阻止。伊吹一尉も何とか立ち直り、岬も事件を通して過去の自分と向き合うこともでき、どちらも人間的に成長。最後は「雨降って地固まる」という感じです。主人公たちが過去を振り返り、内面を掘り下げることで、小説の深みが増していますが、エンタメ性がそのためにちょっと後退しています。でも空戦の詳細な描写は臨場感があり、読みごたえがあります。それで死人が出てないのがまたいいですね。

9.トランス・オブ・ウォー 上・下

イラクで日本人が人質にされ、人質のPTSDを考慮した政府は岬美由紀を現地に派遣するが、不測の事態が生じ、人質は解放できたものの、彼女自身は武装勢力に囚われてしまう。美由紀がとらわれた武装勢力はアル・ベベイルという穏健な部族だったが、アメリカのブッシュ政権はこの勢力を「アルカイダの中心勢力」と位置づけ(でっち上げ)、大統領再選を狙って手柄を立てようとする。アル・ベベイルの集落はこのため壊滅的な打撃を受ける。上巻ではイラクの話はほんの一部で、岬美由紀が戦闘機パイロットになる前の訓練、メインストーリーの時間からさかのぼって5年前の過去の話にページの大半が割かれているため、イラクでの現在のストーリーラインを失念していまいそう。

アル・ベベイルの長老であるハッサンは美由紀の人間を狂気に追いやる「トランス・オボ・ウォー」説に少なからず感銘をうけたため、アメリカからの一方的な攻撃を受けた後、他のシーア派の部族を招集し、そこで美由紀に「トランス・オボ・ウォー」について演説させるが、イスラムを侮辱する危険思想を広めたとして、収監されてしまう。拷問のような独房に入れられ、瀕死の状態に追いやられた岬美由紀でしたが、当然そのままで死ぬわけありません。脱獄を助ける人が現れます。間近に迫ったアメリカの空襲。何とか殲滅戦を止め、「トランス・オボ・ウォー」を実証できるように画策する岬美由紀。彼女の平和主義の信念は非常に尊敬に値するのですが、ヒロインを活躍させるためとはいえ、アラブ人集団に暴行を受けた上に監獄の看守にも拷問され、飲まず食わずで脱水状態も進んでいるはずの女性がいくら自衛隊事態に鍛えたとはいえ、脱獄後の回復の速さは蒸気を逸していて現実味にかけます。

エンディングに関しては願望以外の何物でもありません。なまじイラク戦争を背景にしたかなりリアリティのある舞台設定のため、岬美由紀の活躍がたとえフィクションだとしても、どうしても現実(イラク内戦目下進行中)との乖離が激し過ぎて、ハッピーエンドのリアリティのなさが際立ってしまい、作品としての魅力が半減してしまっているように思います。

10.千里眼とニュアージュ 上・下

「ニート天国」萩原県、正式名称萩原ジンバテック特別行政地帯という福祉都市では引きこもりなどの無職者や無収入の高齢者が住居と生活費を支給され、公共サービスも無料で利用できるという福祉都市。IT金融企業であるジンバテックの特別事業ということだが、採算が取れそうな気配はなく、真意は不明。
萩原県住民の一部は火あぶりにされるなどの悪夢や金縛りに苦しんでいた。そこには岬美由紀の両親が事故で死亡した際にその車の衝突で火災となった住居に住み、PTSDを再発させてしまった一之瀬恵梨香も住んでいた。彼女は美由紀から譲渡された美由紀の両親の家を売却していたのだった。
美由紀はメフィスト・コンサルティングからも協力をしつこく依頼されていた。
萩原県民の悪夢の原因は?ジンバテックの企みとは?メフィスト・コンサルティングの目的は?そして、美由紀と恵梨香は和解できるのか?
という話の筋道が着いたところで下巻へ。

IT金融企業ジンバテックの目的は徳川埋蔵金の発掘だった。メフィスト・コンサルティングのダビデの目的はその埋蔵金の横取り。美由紀も含む臨床心理士たちは悪夢・金縛りに苦しむ住民たちのために揃って萩原県へ向かう。一方一之瀬恵梨香は手違いで美由紀の代わりにさらわれ、ダビデに対面。ダビデの企みはジンバテックの陣場に見破られて襲撃を受ける。恵梨香からSOSを受けた美由紀は彼女の救出に向かう。
なぜか今回はダビデが冴えない。見当はずれの失敗ばかり。それがまたご愛敬な感じです。
「萩原県」と徳川埋蔵金というどちらか問えば荒唐無稽な設定がこの間のエンタメ性を高めていると思います。イラク編では舞台設定がリアルすぎて、ストーリと現実との乖離が激しさがエンタメ性を損なっていたように感じましたが、ニュアージュ編はフィクションならではの楽しさがあります。

11.ブラッドタイプ

血液型性格診断がブームになり、特にB型の人間に対する差別が酷くなって社会問題に。白血病の女性は脊髄移植の手術を、血液型がB型に変わってしまうことを理由に拒否する始末。盲信もそこまで行くと呆れてものが言えない。
一方白血病患者を主人公にしたドラマも流行り、白血病イコール不治の病という間違ったイメージが広がってしまい、白血病患者の死亡率が上がってしまう。岬美由紀、一之瀬恵梨香、嵯峨敏行の3人の臨床心理士たちが間違ったイメージの是正に挑む。
しかしながら、スーパーヒロインである筈の岬美由紀は思いを寄せる嵯峨が白血病を再発させたことに動揺し、人前でも涙を流し、また泥酔して恵梨香の世話になるなど、かなりの憔悴ぶり。結構長いこと空回りしているので、ファンとしてはかなりじれったい展開。
でも、根拠のないものが勝手にブームになって差別を生む日本人社会の病理や国民性に切り込んだいい題材だと思います。 

12.背徳のシンデレラ 上・下

「日本列島が海に沈んで、もう四日が過ぎた」で始まるので、かなりびっくりしますが、何のことはないメフィスト・グループの偽装工作。
本筋は鬼芭阿諛子が唐突に石川県の僻地にある白紅神社なるところの宮司として現れること。岬美由紀はその正体を見極めるよう依頼された。神社関係者たちはみな「鬼芭阿諛子は生まれた時から白紅神社にいた」と証言。さて、どんな裏が隠されているのか?宮司鬼芭阿諛子と対面して友里佐知子の後継鬼芭阿諛子本人であることを確信しつつも、撤退を余儀なくされる。
岬美由紀は神社の中でSDカードを発見し、素早くそれをモバイル機器にコピー。ホテルに帰って中身を確認すると、それは友里佐知子の日記だった。こうして友里佐知子の半生が明らかに。
上巻ではりめぐされた伏線は下巻ですべて収束していきます。友里佐知子の過去の描写が詳細かつ長いので、ちょっと食傷気味になりますが、その過去が現在の鬼芭阿諛子の行動に繋がっていくので仕方がない。

前半は友里佐知子の日記の内容の続きに占められており、現在の本筋はなかなか登場しなくてじれったいのですが、いざ現在に話が戻ると、息つく間もないほど、次から次へと色んな事件が起こり、鬼芭阿諛子の国家転覆計画は着々と進んで行く。それを阻もうとする岬美由紀も神社への不法侵入を除いては蒲生警部補の抑制もあり、規則を破って暴走しないよう努力。しかし大量殺戮は起こってしまった。日本の国会ではなく、北朝鮮に構築されていた国会議事堂周辺そっくりの訓練施設で。そんなにぴったりと輸送機を誘導できるものなのか技術的な疑問が残るが、まあフィクションなので、細かい追及は野暮。
ラストは岬美由紀と鬼芭阿諛子の和解と鬼芭阿諛子の死で一件落着。
シリーズ中ずっと謎だった友里佐知子の過去、メフィスト・コンサルティングとの関わり、鬼芭阿諛子の正体、ダビデの正体がすっきりと明かされ、シリーズ最終巻に相応しい壮大なストーリだと思います。

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ドイツ:世論調査(2016年2月19日)~国境検問再導入に賛成多数

2016年02月21日 | 社会

2月19日にZDFの世論調査ポリートバロメーターが発表されました。以下に結果を紹介します。

「メルケル首相の難民政策をいいと思う」:

はい 47%(+6)
いいえ 50%(-4)
分からない 3%(-2)

メルケル独首相は難民政策の軌道修正などしておらず、一貫して受け入れ上限は設けない、難民はヨーロッパ全体で一定割合で配分すべきというスタンスですが、それをいいと思うか否か、世論の方が揺れているようです。大晦日のケルンの難民による女性襲撃多発事件でメルケル支持率は一気に落ちましたが、その後また回復し、今回の世論調査では支持・不支持が拮抗するまでになりました。

 

「ドイツはたくさんの難民を受け入れることができる」:

はい 43%(+3)
いいえ 54%(-3)

 

「難民たちの社会統合は成功する」:

はい 41%
いいえ 54% 

社会統合が成功するかどうかの見方は支持政党によって相当のばらつきがあります。緑の党支持者は難民の社会統合に関して最も楽観的で、60%の人が「成功する」と回答しているのに対して、右翼政党であるドイツのためのオルタナティブ(AfD)支持者たちはもっとも悲観的で、たったの3%しか「成功する」と回答していませんでした。

 


ヨーロッパの難民政策

「ヨーロッパ全体で難民を均等に配分可能」:

はい 10%
いいえ 88%
分からない 2% 

「国境検問再導入について」:

賛成 58%
反対 39%
分からない 3%

「イギリスがEU加盟国であり続けることは重要」:

(とても)重要 73%
(それほど)重要ではない 23%
分からない 4%

「トルコとの政治的協力強化及び経済支援について」:

正しい 70%
間違ってる 24%
分からない 6% 

「シリア紛争は近いうちにどうなる」:

良くなる 5%
悪化する 39%
変化なし 53%

 「ロシアはシリア紛争において信用できるパートナーか?」:

はい 22%
いいえ 70%
分からない 8% 

「EUの現状は?」:

問題ない 4%
大きな問題がある 39%
重大な危機 48%
崩壊間近 7% 

ユーロ危機、ギリシャ財政危機、イギリスのEU離脱の危機、難民危機で足並みを揃えられない、国境検問次々に導入でシェンゲン協定は実質崩壊寸前等々、問題点を挙げだしたらきりがないというのに、「問題ない」と回答する人が4%もいるのは驚きです。ニュース見てないのでしょうか?

「EUは利益をもたらす?」:

利益をもたらす 37%
不利益をもたらす 19%
一長一短 42% 

政治家重要度ランキング(スケールは+5から-5まで):

  1. フランク・ヴァルター・シュタインマイアー(外相)、2.0(+0.1)
  2. ヴォルフガング・ショイブレ(内相)、1.8(-0.1)
  3. アンゲラ・メルケル(首相)、1.1(+0.1)
  4. グレゴル・ギジー(左翼政党)、0.7(+0.2)
  5. ハイコ・マース(法相)、0.7(+0.2)
  6. ジーグマー・ガブリエル(経済・エネルギー相)、0.7(+0.1)
  7. トーマス・ドメジエール(内相)、0.6(+0.1)
  8. ウルズラ・フォン・デア・ライエン(防衛相)、0.3(-0.1)
  9. ホルスト・ゼーホーファー(CSU党首・バイエルン州首相)、0.3(-0.1)
  10. ザーラ・ヴァーゲクネヒト(左翼政党)、-0.7(-0.1)

 

連邦議会選挙

「もし次の日曜日が議会選挙ならどの政党を選びますか」:

CDU/CSU(キリスト教民主同盟・キリスト教社会主義同盟) 36%(-1)
SPD(ドイツ社会民主党)  25% (+1)
Grüne(緑の党) 10%(-1)
FDP (自由民主党) 5%(変化なし)
Linke(左翼政党) 9%(+1)
AfD(ドイツのためのオルタナティヴ) 10%(-1) 
その他 5% (+1)

 

かなり勢いに乗っていた右翼政党AfDでしたが、ここへ来て1ポイントマイナスとなりました。恐らくAfD総裁フラウケ・ペトリが、インタヴューで警官は国境で不法入国を必要とあれば武器を使っても阻止しなければならない、そのように法に定められている、と発言したことで物議を醸しだしたことや、同党総裁代理のベアトリクス・フォン・シュトルヒは女性や子供に対しても武器を用いるべきだと発言し、批判を浴びたことがマイナス影響の原因となっているのでしょう。二人とも女性なのに過激な発言で注目を浴びましたが、後になって自分の発言を「誤解された」とかなんとか、マスコミのせいにして、過激さを緩和させる方向に持っていこうとあたふたしていました。もし過激さを公に維持し続けていれば、支持率はもっと下がったかもしれません。もちろん現行法では国境警備隊が不法侵入者に対して武器の使用が許されるのは、侵入者自身が武器を持っている場合に限られており、非武装の難民に対して武器を向ける警官など一人もいません。


「CDU/CSUとSPDの連立政権は2017年までもつか?」:

はい 75%
いいえ  21%
わからない 4% 

「現政権の満足度 (スケールは+5から-5まで)」:0.5


この世論調査はマンハイム研究グループ「ヴァーレン(選挙)」によって行われました。インタヴューは偶然に選ばれた有権者1.289人に対して2016年2月16日から18日に電話で実施されました。

次の世論調査は2016年3月18日ZDFで発表されます。

 

参照記事: ZDFホイテ、2016.02.19の記事「ポリートバロメーター


難民問題:ついにオーストリアも受け入れ制限&国境検問強化

2016年02月17日 | 社会

これまでオーストリアはドイツと共に開かれた国境政策を維持し、多くの難民を受け入れてきましたが(人口比ではドイツよりも受け入れ数が多い)、明日から始まるEU難民サミットを前にメルケル独首相の政策に平手打ちを与えるような政策変更を発表しました。

一つは国境検問の強化。オーストリアはスロベニア国境シュピールフェルトに設置されたような4kmに亘る柵に囲まれた国境通過検問ポイントを見本に、他の全ての南側国境通過ポイントも検問強化する構えです。ハンガリー、スロベニア、イタリアとオーストリアの交通もこれによりかなり制限されることになります。特にイタリア国境のブレンナーは交通量が多く、検問再導入による経済的な悪影響が強く懸念されています。

もう一つは難民の受け入れ制限。オーストリア内相ヨハンナ・ミクル・ライトナーによると、オーストリアは今後一日80件までしか難民申請を受け付けないという。またドイツを目指している難民は一日3200人まで入国を許可する構えです。このダブル上限は取りあえず無期限に有効。上限の発効は19日金曜日から。この80件という上限は国境での上限で、国内でなされた難民申請は含まれないそうです。
2016年度は37,500人までの難民を受け入れるといいます。2月17日現在で既に11,000人がオーストリアで難民申請をしました。これに付随する家族呼び寄せによる申請が8,000件になると予想されています。家族呼び寄せによる難民申請も受け入れ上限の計算に入るのか否かまだ不明です。この受け入れ総数は昨年度の半分以下です。

参照記事:
ツァイト・オンライン、2016.02.17付けの記事「オーストリアは南部国境で検問強化」 
ZDFホイテ、 2016.02.17付けの記事「オーストリアは一日80件まで難民申請を受け付ける
ディー・プレッセ(オーストリア)、2016.02.17付けの記事「難民:難民申請一日最大80件まで」 


書評:松岡圭祐著、『探偵の探偵IV』(講談社文庫)

2016年02月15日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

松岡圭祐の「探偵の探偵」シリーズ第4弾で、フィナーレだそうです。

完全警護の東京拘置所で殺傷事件被告人の連続死亡事件が勃発。監視カメラが捉えたのは、紗崎玲奈にとって唯一無二の存在の峯森琴葉だった!?玲奈は死んだ妹の復讐のために探偵を捜査する探偵となり、様々な事件にかかわってきました。同僚女性の琴葉は彼女にとって妹代わりとして心を許していたのですが、ある事件の時に切羽詰って玲奈を裏切ってしまい、そのことが尾を引いて玲奈は無気力な日々を送っていたのですが、東京拘置所の連続死亡事件で覚醒し、峯森琴葉の嫌疑を晴らすために動き出します。とてもスリリングなストーリー展開で、話がどこに着地するのかなかなか見えません。このシリーズに特徴的な過激アクションとバイオレンスは相変わらず満載で、私の好みではないのですが、それでも一度読みだしたら止まらない、ハラハラ・ドキドキの展開です。

一応ハッピーエンドなのですが、人死にが多いのが玉に瑕ですね。好みの問題でしょうけど。他の書評にも書きましたが、私は「万能鑑定士Q」シリーズや「特等添乗員α」シリーズの方が安心して読めて好きです。

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書評:松岡圭祐著、『探偵の鑑定I』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『探偵の鑑定II』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『千里眼完全版クラシックシリーズ』(角川文庫)

書評:松岡圭祐著、『水鏡推理』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『水鏡推理2 インパクトファクター』(講談社文庫)



書評:谷知子編、『百人一首』(角川ソフィア文庫)&あんの秀子著『ちはやと覚える百人一首(早覚え版)』

2016年02月14日 | 書評―古典

この頃古典づいてますが、今日のテーマは小倉百人一首です。解説本は山ほど出ていますが、他の角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックスシリーズから出ている本(枕草子や更級日記など)でいい印象を持っていたので、同シリーズから出ている谷知子編「百人一首」を選びました。

基本的に1首につき見開き2ページで解説されています。まず定番の現代語訳、それから作者について、歌の詠まれた背景についてや関連する歌などが紹介されています。必要に応じて語釈や文法的説明もあります。
またコラムには歌の技法や歌を作る場、現代に繋がる文化など興味深い話題が掲載されており、勉強になります。

購入はこちら

実は私はまんがの「ちはやふる」のファンでもありまして、その関係であんの秀子著「ちはやと覚える百人一首(早覚え版)」も買ってしまいました。こちらの構成は1首につき1ページで、現代語訳の他、「教えて!かなちゃん!!」という「ちはやふる」のキャラで古典の得意なかなちゃんが解説をするコーナー、「ちはやふる」から歌に合う一コマ、それに「xxくん(ちゃん)意訳してみて」というコーナーがあります。また目立たないくらい小さいのですが、和歌が全部ひらがな書きしてあり、競技かるたのための「決まり字」がマークされているので、この決まり字と下の句を結びつけて覚えれば、競技かるたもできるようになるかもしれません。

この2冊を並行して読みました。1首ごとにまずは「ちはやと。。。」の方を読み、それからビギナーズ・クラシックスの方を読んで、もう少し詳しい背景情報を補足しました。

「ちはやと。。。」の魅力は「xxくん(ちゃん)意訳してみて」だと思いました。高校生というか若い人ならではの現代語意訳で、思わずふっと吹き出してしまうようなものもあります。例えばう大将道綱母作「嘆きつつひとり寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る」の意訳が「私と付き合ってるのに色んな子にヘラヘラして!今更メールくれたって絶対返信しないから!」とか、清少納言の「夜をこめて鳥のそら音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ」の意訳は「せっかく楽しく話してたと思ったのに突然帰っちゃって!誰からのメール?!もう一度誘われたってお断りだから!」など。原文が台無し、といえばそうなのかもしれませんが、昔の人も現代人もメンタルはそれほど変わっているわけでもありませんから、こうして現代っ子風に意訳することで若い人たちが古典に親しみを感じてくれるなら、いいのではないでしょうか。

「百人一首」は平安時代末期から鎌倉時代にかけて活躍した歌人・藤原定家が選んだ和歌集と言われています。依頼人は鎌倉幕府御家人で歌人でもある宇都宮頼綱で、百首の素晴らしい歌を書いた色紙を山荘の襖に飾りたいので、その百首を選ぶように定家に頼んだそうです。定家は「古今和歌集」を始めとする勅撰集から百首の歌を彼の別荘小倉山荘にちなんで「小倉百人一首」として後世に伝えられるようになったとか。1235年5月27日に小倉百人一首が完成されたとされることから5月27日は「百人一首の日」になっているらしい(全く知りませんでした)。

引用された歌集:

  • 古今和歌集(905年)―醍醐天皇
  • 後撰和歌集(950年ごろ)―村上天皇
  • 拾遺和歌集(1005年ごろ)―花山院
  • 後拾遺和歌集(1086年)―白河天皇
  • 金葉和歌集(1127年ごろ)―白河院
  • 詞花和歌集(1151年)―崇徳院
  • 千載和歌集(1187年)―後白河院
  • 新古今和歌集(1205年)―後鳥羽院
  • 新勅撰和歌集(1235年)―後堀河天皇
  • 続後撰和歌集(1251年)―後嵯峨院

書評:松岡圭祐著、『水鏡推理2 インパクトファクター』(講談社文庫)

2016年02月14日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

松岡圭祐著「水鏡推理」シリーズ第2弾。

文科省・不正研究調査チームの水鏡瑞希(25)が殆ど本能的な勘を働かせてまだ不正疑惑すら出ていない時点から動き出してしまいます。一般職事務員なのに。彼女は探偵事務所でアルバイトしたことがあり、推理力をそこで徹底的に磨いたので、そこらの官僚より勘が鋭いという設定です。
きっかけは彼女の小学校の頃の親友如月智美が大学院生の立場にもかかわらず、ノーベル賞級の論文を科学誌に掲載し、マスコミに騒がれたこと。

今回はトリビア満載の松岡流が影を潜め、追われる事件は1件のみです。真相は意外なところにあるので、読んでからのお楽しみということにしておきます。
結末は色々の胸のすくようなハッピーエンドですので、良いエンターテイメント小説だと思います。 残念ながらそれ以上ではありません。松岡ファンとしてはちょっと期待はずれな感じです。

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書評:松岡圭祐著、『探偵の鑑定I』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『探偵の鑑定II』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『千里眼完全版クラシックシリーズ』(角川文庫)

書評:松岡圭祐著、『探偵の探偵IV』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『水鏡推理』(講談社文庫)

書評:松岡圭祐著、『水鏡推理2 インパクトファクター』(講談社文庫)


書評:藤田孝典著、『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)

2016年02月12日 | 書評ー歴史・政治・経済・社会・宗教

老後の貧困はドイツでも話題になっています。『下流老人』に相当する言葉はありませんが、両国の問題には共通するものが多いです。

藤田孝典氏は『下流老人』を「生活保護基準相当で暮らす高齢者、およびその恐れのある高齢者」と定義しています。具体的な指標として3つの「ない」、すなわち(1)収入が著しく少ない、(2)十分な貯蓄がない、(3)頼れる人がいない(社会的孤立)が挙げられています。そして、現在年収400万円の人でも将来下流老人になる危険が非常に大きいことをモデル計算で示します。この年収で20歳から60歳の40年間厚生年金保険料を払ったとしても受け取れる年金月額は約16万5千円。若くて健康な独り暮らしならこの金額でどうにかなるでしょうが、高齢者の場合は「不測の事態(特に病気)」が若い人よりも多く、年金削減などで収入が減ることはあっても増えることはないということも考慮するとかなり心もとない金額です。労働収入が月25万円だった場合の年金受給額は約13万円で、明らかに生活保護レベルです。つまり、現在の非正規はもとより正社員でも400万円以下の低賃金で働く人の老後は相当厳しいということです。これはすでに個人の問題ではなく、国の制度が『下流老人』を生み出しているので、制度の改革なしには【一億総老後崩壊】もありうる、と藤田氏は指摘しています。

解決のための提言は、生活保護などの福祉の「申請主義」を止め、アウトリーチの福祉を目指す、生活の部分補助の導入、特に住宅扶助を充実させる、などさほど真新しくないものもありましたが、面白いと思われたのが、「生活保護の保険化」という案。現在の日本では社会保障制度が正しく理解されておらず、生活保護は特に差別の対象、「スティグマ」となっているため、いっそ保険制度にしてしまえば(保険料毎月100円など象徴的な金額で)、苦しくなったら「権利として」保護を受ける、という意識シフトを実現できるのではないか、というのが筆者のアイディア。
確かに社会保障論を国民に広めるよりも、「保険料を払って、必要な時に相応のサービスを受ける」という制度の方がより多くの人にとって理解しやすく、普及するチャンスがより大きいと思われます。たとえシンボリックな保険料が十分な財源にならないことが明らかでも、「保護を受けることは恥ずかしいこと」という間違った意識を薄れさすのに適した視覚化された制度なのではないでしょうか。

最近は、貧困者や高齢者の生きる権利を否定するような政治家の発言やネット民の言動がよく見受けられ、恐ろしい世の中になったものだと義憤をおぼえずにはいられません。死んでいい人なんて一人もいないのに...!「生活保護を受けるのは甘えてる」とか「貧困になったのは自己責任」とか思いやりのない、実にすさんだ意見を匿名のネット住民ばかりか政治家まで言い出す始末。貧困が制度的に生み出されているものだということにどうして思い至ることができないのか、また保護は憲法で保障されている生存権を守るもので、施しでもないし、本人の甘えでもなく、当然の権利だという社会福祉論を露ほども知らず、弱者を攻撃し、また弱者本人もその考え方に影響されて、我慢してしまうため、餓死者まで出る始末。先進国の在り方としてそれは恥ずべきことだと私は思います。社会全体が病んでいるように思えてなりません。

ドイツはそこまですさんだ人は多くないように思いますが、それでも平均的な年収で40年間年金保険料を継続的に払った人でも、年金受給額は生活保護レベルになることは日本と同じです。いわゆる年金受給レベル(年金受給額と過去の所得額の比率)が現在の50.3%から2020年までに46%、2030年までに43%までに引き下げられることが原因です。同時に年金受給開始年齢も現在の65歳から2029年までに段階的に67歳まで引き上げられます。2006年に年金制度改革によるものですが、理由は少子化・高齢化で、将来の高齢者人口に対する労働人口の比率が小さくなることにあり、その条件下でも年金制度が機能するように修正することを目的としています。唯一の救いは会社の定年退職が年金受給開始年齢と常に一致することで、日本のように60歳で定年退職し、65歳で年金受給開始という5年間の収入空白期間が生じることがないので、少なくとも再雇用の心配をしなくてもよいということです。

私個人は今はいわゆる【勝ち組】に属しているので、年金が生活保護レベルになる心配はありませんが、親の介護や夫や自分の病気などの不測の事態で貯金が十分にできないリスクは確実にありますし、そうでなくても『貧困』は私にとって身近なテーマです。例えば私の父方の祖父はそれなりに財産を持っていたのに、友人の借金の保証人になり、結局騙されて家屋敷を手放す羽目になり、その後はずっと借家住まいでした。私の父はその手放さざるを得なかった屋敷を自分なりに取り戻そうとしたらしく、不動産ブームの波に乗って不動産業を営んでいました。マイホームも取得しました。けれど1990年代の初頭に不動産バブルが崩壊し、会社として抱えていた不動産が不良資産化し、多額の負債を負ってしまいました。不動産価格がどんどん下落し、低迷したままだったので、収入も大幅に減り、マイホームは売却。一時は夜逃げするように住所を変えたこともありました。一応年金受給開始年齢までに何とか借金は清算できたようでしたが、年金受給額は月10万円以下、貯蓄なしという明らかな『下流老人』となり果てました。「早く死んで楽になりたい」とまだ手紙を書く元気があったころはよく書いていました。介護費用分担についての家族会議を開いて間もなく、心臓発作で去年3月に他界してしまいました。
私自身も、1990年にドイツへ留学し、渡航費や6か月分くらいの生活費は自分の貯金から出しましたが、そのあとは父から仕送りを受けていました(学生ビザで働けなかったので)。バブル崩壊後はその仕送りが途絶え、日本に帰るに帰れなくなったので、学生に許されている範囲のバイトで何とか生活費を稼いでいました。ドイツの大学が無料で良かったと胸をなでおろしていたものです。学生時代もそうでしたが、就職してからも数年は不安定雇用だったり、外国人であることのハンデがあって、学歴に見合わない職についていたので、結構長い貧乏時代がありました。だから、今はどうであれ、「貧困」は身近で自分の問題として捉えていますし、どう社会制度を変えれば貧困問題を緩和できるかを常に考えてしまうのです。そして、ここ10年くらいでドイツでも日本でも貧富の差が広がり、「中流」が消えつつあることをとても危惧しています。日本では特にセーフティーネットが不十分なので、あっという間にどん底まで落ちてしまうリスクが高く、とても心配です。なので、この本を読んでもらってももらわなくてもいいですが、貧困をできるだけ多くの人に【社会の問題】として考えてもらえたらいいなと思います。


【日本の原発に未来はない】by ドイツ国際放送&【安倍政権の異常さ】by FAZ

2016年02月10日 | 社会

ドイチェ・ヴェレ(ドイツ国際放送)に2016年1月26日に発表された記事の日本語訳を載せているブログがありましたので、備忘録としてここにリンクしておきます。日本の持続可能エネルギー政策研究所の責任者飯田哲也氏に取材したものです。

星の金貨プロジェクト「日本のゲンパツは持続可能なエネルギーでも無い、民主主義的選択でも無い

 

インタヴュー中で飯田氏が

日本の大多数の人々は、原子力発電所の再稼働を推進する安倍政権の方針に反対しています。
しかしその事が、自分たちの政治的な立ち位置や選挙の際の投票行動に結びついてはいないというのが現実です。

と指摘していますが、これこそ私から見た日本七不思議の一つです。『七不思議』というのは勿論単なる言葉のあやですが。

本当に自分の立ち位置と投票行動が一致していない人がどの程度いるのか分かりませんが、たとえ自分の意見と投票行動が結びついていたとしても一強多弱の政党構造で、野党乱立の現状では野党側の票が割れてしまい、結局自民党候補だけが当選する選挙システムが出来上がっています。ムサシを巡る不正選挙のうわさも絶えません。だから国民の大半が反対する原発推進を掲げていても自民党が勝って、勝手放題ができてしまう。デモも署名運動も政治家には全く痛くも痒くもないようです。

最近の日本の政治状況を外から見ていると、本当に恐ろしいものがあります。人道主義や命の尊厳があまりにも軽んじられた論調やネット住民たちの攻撃性も嘆かわしいばかり。

現場にいる人にはもっとそれが強く感じられるのでしょう。そういう違和感をドイツ紙フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)東京特派員カルステン・ゲルミス氏が告白したらしく、その日本語訳が『リュウマの独り言』というブログの記事「ドイツ (フランクフルター・アルゲマイネ) 紙東京特派員の離日メッセージ が 語る 安倍政権の『異常さ』  」に紹介されていました。文中には:

安倍首相がいうところの ”強く・新しい国” を批判するものは 「反日」と呼ばれるようになった。 5年前には全く考えられなかったことだが、 今や直接的なものから ドイツの編集部員に向けられた間接的なものまで含め、外務省から様々な攻撃が向けられるようになったのだ。

とあります。本当に信じがたいことです。どこの独裁後進国かと思うくらいです。


カーニヴァル:ローゼンモンタークのパレード、ドイツ事情

2016年02月08日 | 歴史・文化

今日はカーニヴァルの頂点と言えるローゼンモンターク(Rosenmontag)です。この日は伝統的に各地で仮装パレードが行われますが、今年は残念ながら強風警報が出ており、カーニヴァルの牙城であるマインツやデュッセルドルフをはじめとするいくつかの都市でパレードが中止となりました。しかしながら、街頭カーニヴァル復活の元祖ともいえるケルンのカーニヴァル委員会はパレードを強行。さすがというかなんというか。中止にしたらそれこそ暴動が起きそうな勢いです

まずはローゼンモンタークそのものについて。直訳すれば「バラの月曜日」ですが、その由来はドイツ語版Wikipediaによると少なくとも二つ説があります。

ナポレオン占領下でライン川沿岸の地域のカーニヴァルは厳しく取り締まられていました。1815年のウィーン会談により占領が終了し、カーニヴァルも改革されることになりました。それを受けて1822年11月6日にケルンで「パレード整列する委員会(Festordnenden Comites)」が結成され、毎年レターレ(Laetare)と呼ばれる4番目の断食日曜日の後の月曜日、つまり本来のカーニヴァルの4週間後に総会が開かれました。レターレの日曜日は11世紀以降ローゼンゾンターク(Rosensonntag、バラの日曜日)とも呼ばれていました。なぜならこの日教皇が金のバラを祝福し、それを表彰に値する人物に贈ったからです。パレード整列する委員会はローゼンモンターク会とも呼ばれていました。つまり、この説によれば、ローゼンモンタークは本来カーニヴァルの4週間後の月曜日を指していたことになります。

もう一つの説は、グリム兄弟編纂のドイツ語辞典に掲載されているもので、中期高地ドイツ語のRasenmontag(ラーゼンモンターク)、つまり、”rasenden Montag” (バカ騒ぎする月曜日)から派生しているとします。同辞典によれば、rasen (ラーゼン:狂う、失踪する、我を失う)のケルン方言はrose(ローゼ)であり、”tollen”(トレン:大騒ぎで走り回る)の意味だとのことです。

私見ですが、グリム兄弟の説の方が説得力あると思います。なぜなら、4週間後の月曜日を指す名称がなぜカーニヴァルの月曜日の名称になったのか説明できませんから。グリム説をとるなら「バラの月曜日」ではなく、「大騒ぎの月曜日」ですね。その方が実情に合ってると思いませんか?

南の方ではファスネットやファッシング、あるいはルツェルンではグューディス・メンティク(Güdis-Mäntig)と言います。

さて、本来の意味はともかくとして、ローゼンモンタークのパレードは政治(批判)色が濃いのが特徴的です。パレードに登場する張りぼて(モットー・ヴァーゲン、Mottowagen:モットーを表現する「山車」のようなもの)は必ず最新の政治的テーマをモチーフにしており、悪趣味なものもあれば秀逸なものもあります。

今年の最大のテーマはやはり【難民問題】でしょう。このブログでも難民問題の記事が意図せず一番多くなってしまっているのも、 そのためです。

ケルンでは本行列の前座として反グローバル化団体Attacによる行進がありました。モットーは「茶色の悪党に対するカラフルな火花(Bunte Funken gegen braune Halunken)」。「茶色」は通常ナチのシンボルカラーです。ここでは難民排斥運動を推し進めているペギーダを指しています。Funken(フンケン:火花)とHalunken(ハルンケン:悪党)で脚韻も踏んでいます。

© Udo Slawiczek
(http://www.attac.de/startseite/detailansicht/news/bunte-funken-gegen-braune-halunken-beim-rosenmontagszug-in-koeln-1/)

反対に物議を醸しだしているのがバイエルン州のライヒャーツハウゼンに登場した厚紙製の戦車。イルムタール難民防衛(Ilmtaler Asylabwehr)と銘打ってあります。

© Florian Simbeck/ dpa

この写真の引用元であるツァイト・オンラインの本日付の記事によれば、この張りぼて作成者に対して民衆扇動の疑いで捜査されるとのことです。

また、チューリンゲン州ヴァーズンゲンでも「バルカン・エクスプレス」と銘打った機関車の張りぼてで、車体に「災厄が来る(Die Ploach kömmt)」と書かれています。そして、バッタに扮した人たちに囲まれていたので、メッセージとしては≪バルカンルートでバッタの大群(難民たち)が押し寄せて災厄をもたらす≫と言ったところでしょう。

写真の引用元であるMDRチューリンゲンの本日付の記事によれば、こちらも民衆扇動の疑いで捜査されるそうです。悪ふざけにしろ、難民をバッタの大群に例えるのはかなりレイシズム的で、ナチスがユダヤ人をネズミの大群に例えたことを彷彿とさせます。

デュッセルドルフではパレード自体は強風警報のため中止になりましたが、パレード参加予定だった作品は市役所前に展示されています。難民の波に難破しそうになるメルケル首相やEU国境の遮断棒にぶら下がるゼーホーファー・バイエルン州首相など。

ケルンのカーニヴァルパレードはドイツ最大規模と言われていますが、デュッセルドルフはこれをライバル視して対抗してきたのですが、今年はかなり悔しい思いをしているようです。ライバルのケルンではパレードが開催されたのに、デュッセルドルフは中止。うーん、悔しいでしょうねー。カーニヴァルの積極的な参加者たちはそれこそ一年中この日を目指して準備を頑張っているので、折角の楽しみが。。。

カーニヴァルに関してもう一つ物議を醸しだしているのがアマゾン・ファッションで販売されているカーニヴァル用コスチュームで、第1次、第2次世界大戦をテーマにしたものです。ゲシュタポの制服や当時の難民の(子供の)扮装、というのもあります。

 

アドルフ・ヒトラーのマスクも!

 

んー、悪趣味ですねー。

ドイツのカーニヴァルのパレードは草の根民主主義の発露でもあるのですが、日頃の欝憤を晴らす場でもあり、普段は表に出せないことも表現できる場でもあり、かなり羽目を外してもお祭りの一過性の中で許されてしまう風潮があります。そのため、部外者の私はなんとなく見たくもないのに、他人の脳内を見せられてしまったような妙な苦々しさを感じずにはいられません。まあ、見なければいいだけの話なのですが、一応ドイツ文化の紹介も兼ねているブログですので、今日は色々とカーニヴァル関係資料を集めてみました。


カーニバルシーズン開始

女たちのカーニヴァル

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