徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:今野敏著、『新装版 -神々の遺品』& 『海に消えた神々』(双葉文庫)

2022年10月26日 | 書評ー小説:作者カ行

探偵・石神達彦シリーズは、どうやらオーパーツ(それらが発見された場所や時代とはまったくそぐわないと考えられる出土品や加工品などを指す Out of Place Artefacts)をテーマとしているようです。
元警察官の探偵・石神達彦が、ピラミッドの謎などのブログを書いていた人物の行方を探す依頼を受け、調査を始めると、数日前に起こった日本では著名なUFOライター殺人事件と関連性がありそうなことが判明し、否応なしにオーパーツと呼ばれる摩訶不思議な太古の文明の足跡を辿ることになります。リサーチは主に助手の明智小五郎ならぬ大五郎にやらせ、自分は聞き込みに回りますが、突然ロシア系の男に襲われたりします。

一方、アメリカで超常現象研究チーム『セクションO』に極秘の実働部隊をつけるよう国防長官に依頼されたジョーンズ少将は、彼の以前の部下であった男を派遣し、3年間そのことを忘れていた。セクションOで見せられたものの夢を頻繁に見るようになったので、気になりだして、部下にセクションOと担当者のシド・オーエンについて調査するように指示しますが、極秘のことなので調査は難航を極めます。

日本とアメリカのストーリーラインが最後に収斂していき、パズルピースがぴったりと合うようになるのは早いうちから予想できるので、純粋なミステリーとしてはいまいちな作品かと思いますが、約1万1000年前の彗星通過による高度文明の消滅とピラミッドを含むオーパーツや秘数学のオカルト的な蘊蓄が非常に面白く、作品の魅力になっています。


第2弾の『海に消えた神々』では沖縄周辺の海底遺跡がテーマになっています。この巻で展開されるのは「沖縄=ムー大陸」説です。
海底に沈んだ鍾乳洞や超古代遺跡を調査していた地質学者・仲里博士が自殺。捏造の発覚を苦にしてとのこと。その娘の同級生・園田圭介が、「仲里博士の無念を晴らしてほしい」と石神の探偵事務所に依頼に来ます。園田はインターネットで石神が以前にピラミッドやUFOの謎に関わる殺人事件を解決したことを知り、そのような依頼を受けてくれるのではないかと思ったらしい。
石神は最初は気乗りしないものの、助手の明智に押し切られるような形で依頼を受けます。
まずは娘の麻由美に会い、彼女を引き取った叔母と叔父の話も聞き、明智には仲里博士の著作や沖縄の超古代遺跡について調べさせます。
明智の勧めで、石神は3日でダイビングのライセンスを取り、沖縄県警のだれかを昔の同僚に紹介してもらい、明智と麻由美を伴って沖縄へ。
沖縄県警では当然胡散臭がられ、案内役という名の監視役までつけられてしまいます。早急に「自殺」で片付けられてしまった背景には政治的圧力の影が見え隠れし、また、捏造事件も怪しいことばかり。
様々なパズルピースはどのようにつながっていくのか。

この作品は、「沖縄=ムー大陸」説やモアイなどのポリネシア文化と沖縄の関係などが特に興味深いですが、日本の考古学の極端な実証主義も批判されており、警視庁捜査一課・碓氷弘一シリーズの第5巻『ペトロ』にちょっと通じるものがありますね。




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