徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:今野敏著、『疑心―隠蔽捜査3―』(新潮文庫)

2018年09月14日 | 書評ー小説:作者カ行

『隠蔽捜査』シリーズ第3弾『疑心』は、米大統領の来日に当たって方面警備本部長を元はどうあれ現在は高々所轄の一署長である竜崎が拝命し、その異様な人事に何かきな臭い裏があるのではないかと疑心暗鬼になることから始まります。何か警察内部の陰謀の話なのかと思えば、そうではなくて、妻には「唐変木」と罵られている竜崎がなんと警備部から秘書官として派遣された女警にいかんともしがたい恋心を抱いてしまって仕事に集中するのに難儀する話でしたwww

いかんともしがたくてついに本人は絶対に「親友」とは認めない幼馴染にして同僚の伊丹に悩みを打ち明けるというまったく彼らしくない行動をとってしまうところが人間・竜崎のドラマを一層魅力的なものにしていると感じました。

一方米大統領訪日に当たって日本人が関与するテロ計画が進行中だというので、先遣隊に先立って来日した米シークレットサービスとひと悶着あり、どう決着するのかハラハラします。また2名が死亡した交通事故で行方不明になっていた運転手を独自に追う捜査官としては優秀だが組織人としては問題児の戸高がまたいい味を出しています。戸高の追う者が重要人物であろうことは予想できてしまうので、推理小説的な期待をしていると面白くないかもしれませんが、竜崎と戸高の人間関係の方は味わい深いと思います。竜崎自身が自分と戸高が意外と似ているのではないかと気づくあたりが、冷静な自己分析のできる竜崎の魅力と言えます。恋愛方面ではやっぱり「唐変木」でしょうけど(笑)


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