徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:松岡圭祐著、『探偵の鑑定I』(講談社文庫)

2016年03月19日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

松岡圭祐作『探偵の鑑定I』は、『探偵の探偵』シリーズ(講談社)の紗崎玲奈と『万能鑑定士Q』シリーズ(角川書店)の凜田莉子のダブルヒロインで、二つの相いれないはずの世界が絶妙にミックスされ、スピーディーな展開で詐欺の道具となった【穴あきバーキン】に始まる事件の真相を追っていきます。事件は会員制の交際クラブで紹介されたとあるモデル張りのセクシーな女性に、ちょっとリッチな中年叔父さんたちが初回デートで前金をだまし取られることから始まります。小道具に使われたのがエルメスのバーキン。女性が受け取った現金をこのハンドバッグの中に入れ、裏の穴から札束を取り出し、バッグを置いたまま「ちょっとお手洗いへ、おほほ」といった感じでさりげなくその場を去り、男性がなかなか戻ってこない彼女を不審に思いだす頃にはとっくに逃亡してしまっているという寸法。バッグは戻ってくると思わせるための小道具として使われています。でも、普通トイレに行くときにハンドバッグ置いていくかな?と不自然さが否めないのですが。
騙された情けないおじさんたちは証拠品のそのバッグを『万能鑑定士Q』へ鑑定に持ち込みます。実際に作中に登場してセリフのあるおじさんは一人だけですが。
玲奈の方は、探偵まがいの仕事をして、同エリアの探偵事務所を脅かし、曲がりなりにも警察とつながりを持つ悪徳探偵かもしれない凜田莉子の調査を依頼されて、事件に関与していきます。対探偵課としての調査は初日で終了してしまいますが…

ハードボイルドっぽさは健在なので、どちらかというと莉子が『探偵の探偵』の世界に放り込まれてしまった感じですが、いい味出しています。『探偵の探偵』で謎だった部分、例えば玲奈の属するスマ・リサーチ社長の須磨氏の過去などが徐々に明らかになるところも魅力です。
でも両シリーズを読んだことがない人でも楽しめるように配慮されています。
さて「終着点」がどこに向かっているのか、次巻が楽しみです。

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