『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』(角川文庫)は描きおろし作品で、2017年6月発行。
題名に反して、シャーロック・ホームズと伊藤博文が対決する話ではありません。伊藤博文が明治維新以前の22歳の折に英国へ留学した際に子供だったシャーロック・ホームズに出会い、偶然命を助けたというご縁から、すでに成人して探偵として名を馳せるようになったホームズが諸々の事情により極秘裏に来日し、日本で実際に起きた大津事件の謎に挑み、日露関係の危機を救うというのが大筋の話です。
私はシャーロック・ホームズのシリーズをまともに読んだことはないので、どの程度オリジナルの設定が本書に反映されているのか判断しかねますが、明治初期という舞台設定と当時の日英露関係の緊迫関係をフルに生かした推理小説で、実に優れたエンターテイメントだと思います。
最初のホームズとロンドンの巨悪モリアーティ教授のやり取りの部分は今一なプロローグだと思いましたが、読み進むうちにどんどん面白くなっていきます。
気になるところと言えば、ホームズの日本人に対する感想がポジティブ過ぎるきらいがあるところでしょうか。本筋には重要なことではありませんが、なんとなく違和感が残ります。