徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:アルボムッレ・スマナサーラ著、『慈悲の瞑想 フルバージョン 人生を開花させる慈しみ』(サンガ)

2020年09月19日 | 書評ーその他


著者アルボムッレ・スマナサーラ氏は、上座部仏教長老、スリランカ生まれ。1980年に来日し、駒澤大学大学院博士課程を経て、(宗)日本テーラワーダ仏教教会で初期仏教の伝導と瞑想指導に従事しているそうです。日本語の著作には『自分を変える気付きの瞑想法』、『仏陀の実践心理学』、『大念処経』『仏教は宗教ではない』などがあります。

本書『慈悲の瞑想 フルバージョン 人生を開花させる慈しみ』は、最近凝っているメンタリストDaigoの動画の1つで推薦されていたので読んでみることにしました。
大まかに「慈悲の瞑想」の基本的心得、世の中の仕組みや人間の心の仕組みと言ったことが上座部仏教的要素を交えながらも分かりやすく説明する第1部と、「慈悲の瞑想(フルバージョン)」のテキストと実践に重要なガイダンスを加えた第2部で構成されています。

正直、「自分のこころってけがれてるなー」としか思えない本でした。しかし「慈悲の瞑想」の言葉の中から自分に合った、またはその日の気分にあったものを選んで毎日唱えることで心が変わって来るという助言があり、覚えるべき呪文は「私のこころは空気のように」ということなので、まずは実践してみることかなとも思いました。
心の中に抱くイメージは心の状態に多大な影響を与えるので、この瞑想で唱えるイメージを習慣化することで、確かに認知療法的な効果がありそうな感じがします。

一番耳が痛いというか、目が痛いなと思ったのが「エゴの錯覚」ですね。
「私は他より優れている」と感じることは高慢です。
「私は他と同等だ」と思うことは同等慢です。
「私は他より卑しい存在である」と思うことは卑下慢です。
慢とは、私のエゴの錯覚から起こるものです。
私は、エゴの錯覚がこころに現れないように、と精進します。
私は、慢により現れる対立・悩み・争いから離れるように、と精進します。

ポジティブにせよネガティブにせよ、イコールにせよ、「自分のことを気にしすぎる」、そして「他者と比べる」こと自体に弊害があると説くわけですが、他者とぶつかるなので問題を引き起こすことを避けるためにあえて「自分はいない」と念じてみるという初歩的な「無我」の観察から始めることが勧められているので、「それくらいならできるかも?」という気になります。
「自分を直す」のではなく、「自分はいない」とイメージするところにポイントがあります。

仏教的世界観をすべて受け入れる必要もなく、難しい仏教用語を覚える必要もない。入りやすいところから入って、こころに言い聞かせてこころを躾けていくというスタンスが、宗教の匂いに拒否(に近い)反応を起こしやすい人にも受け入れやすいのではないかと思います。

私はこの本をKindle版で読みました。Kindle版のよいところは、スマホ画面の大きさに最適化されていることです。私はタブレットで読みましたが、「慈悲の瞑想」の一部の文を唱えるにはスマホで見られるほうが便利ですね。


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書評:横山秀夫著、『影踏み』(祥伝社文庫)

2020年09月02日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行



【商品説明】
「双子というものは、互いの影を踏み合うようにして生きている」……ノビ師・真壁修一の相棒は、父母とともに炎の中で死んだ双子の弟の「声」。消せない過去を背負いながら、愛する女のために義を貫き、裏社会に葬られた謎に挑む、痺れるほどに哀切な「泥棒物語」。累計50万部を突破した著者渾身の超1級クライム・ミステリー 。

「ノビ師」と呼ばれる種類の泥棒が主人公というのも変わってますが、さらに死んだ双子の弟を中耳に住まわせ(?)語り合ったり語り合わなかったりするという設定もファンタジーっぽく、クライム・ミステリーとしては奇妙な感じがします。
本書は大きなミステリーが1冊全体で解かれていくのではなく、時系列に並んだ章ごとに小さなミステリーがあり、主人公がそれらを裏社会特有の解決法で対処していく一方、双子の弟との関係、二人で競い合ったこともある女性・久子との関係が少しずつ進展していきます。
とはいえ、クライムの方にフォーカスがあるので、その後久子さんと腰を落ち着けるために泥棒稼業から足を洗うのかどうかまでは書かれていません。
30半ば。もともとは頭脳明晰で司法試験も受けようかという優秀な人だったので、弟と両親の死によって道が逸れてしまったとはいえ、やり直そうとすればできないことはないのに、あえて将来のことを考えないようにしているところが切ないですね。





書評:横山秀夫著、『第三の時効』(集英社e文庫)

書評:横山秀夫著、『64(ロクヨン) 上・下巻』(文春e文庫)

書評:横山秀夫著、D県警シリーズ『陰の季節』&『刑事の勲章』(文春e文庫)

書評:横山秀夫著、『臨場』(光文社文庫)

書評:横山秀夫著、『深追い』(実業之日本社文庫)

書評:横山秀夫著、『動機』(文春文庫)

書評:横山秀夫著、『半落ち』(講談社文庫)

書評:横山秀夫著、『顔 Face』(徳間文庫)~D県警シリーズ

書評:横山秀夫著、『クライマーズ・ハイ』(文春文庫)

書評:横山秀夫著、『出口のない海』(講談社文庫)