徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:松岡圭祐著、『千里眼 美由紀の正体 上・下』(角川文庫)

2021年06月26日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

千里眼の新シリーズ第7・8巻は上下巻に分かれた長編で、前巻『堕天使のメモリー』 で仄めかされていた美由紀の失われた記憶に迫ります。
記憶を失った女性が手にしていた国防機密の図面を取り返すために、彼女の夫の振りをして近づき、任務の範囲を超えて彼女と夜の関係を持った男に対し、美由紀は過剰な暴力を振るって引っ立て、被害者に謝罪させます。それだけにとどまらず、その女性にそのような図面を持たせるように仕組んだものを探ろうと次々と不法侵入や器物破損、窃盗、傷害を犯しつつ犯罪を暴き、雑誌のスクープのために計画されていたやらせのテロを未然に防いで犯人を逮捕に導きます。しかし、さすがに今回は国家の緊急事態と言うほどのものではなかったため、常軌を逸した暴走と捉えられ刑事裁判で有罪判決が濃厚になります。
そんな中で彼女の精神鑑定を引き受けた同僚の臨床心理士・嵯峨敏也の協力により、彼女の過去のカギを握ると思われる相模原団地(米軍施設内居住地)へ行く許可を取って見学に行くと、そこは犯罪の巣窟で、真実を目の当たりにしてしまった美由紀は捕まり、麻酔で動きを封じられ、絶体絶命のピンチに陥ります。美由紀と一緒に相模原団地に行く予定だった雪村藍が後から現地入りし、動けなくなった美由紀を目の当たりにします。車で事故を起こしたと言い聞かされますが、しばらくして違和感を抱き出し、美由紀救出のために尽力します。

下巻は、美由紀救出と相模原団地で行われていた犯罪の全貌曝露のため、美由紀の元カレ・伊吹直哉と美由紀の知り合いの外務省官僚・成瀬史郎が非合法に乗り込むところから始まります。
そして、美由紀がかつて確かに相模原団地に囚われていたことがあることが判明し、美由紀のかつての買い手を探すことになりますが、そこでも様々な他の犯罪が判明し、元凶にたどり着くまでに相当の無茶をすることになりますが、ここでは美由紀単独ではなく、伊吹も一緒に行動します。
こうしてまた、捜査特権のない一介の民間人にもかかわらず犯罪者を追いかけることで余罪を重ねてしまうあたりはこのシリーズではもうお馴染みのことですね。この現実離れした無茶ぶりがこのシリーズの魅力であり、最もカタルシスをもたらすものなのではないかと思います。
最終的に美由紀の過去も記憶を失った経緯も判明し、知ることで美由紀自身も成長します。

ただ、ラストのメフィストのジェニファー・レインとの対峙がどういう経緯なのかは謎でしたが。


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