写真上は大理で毎夜、開かれる『胡蝶の夢』の南詔国の儀仗隊の場面。
写真下は、大理で発掘された、おそらく南詔国の楽隊の像。(大理の博物館にて撮影。)
【雲南映像の遺したもの】
残念ながら「雲南映像」は終了したが、この成功は、雲南観光業に多大なる影響を及ぼした。まず、雲南各地の主要観光地(*注)に、似たような大がかりな夜公演が開かれるようになった。いずれも観光客がホテルやタクシーの運転手に一言、行く意思を告げれば、流れるようにチケットが用意され、場合によっては夜のお迎えまでつく。
実際、どこに行っても、ご高齢の日本人観光客に出会った。
「一日中、旅行会社設定のハードな旅程をこなし、雲南料理のフルコースで胃を重くして、夜の舞台見物か・・。」
とため息が出たものだ。(私なぞの体力ではとても無理!)
2005年2月から始まった大理の「胡蝶の夢」を例に挙げよう。
大理にかつて栄えたという南詔国の儀仗隊と白族の争いをモチーフにした踊り、というフィクションがひたすら繰り広げられ、派手な音楽と光とアクロバティックな要素も加わった一大スペクタクル。ヤン・リーピンの「月光」とそっくりの踊り、ちょっとディズニーシーあたりで見たようなデジャブーにもおそわれる・・。
踊りの形式は雲南の少数民族とは縁もゆかりもない、西洋バレエを基礎としたもので、北京の有名演出家が指揮し、中国各地から集まったプロの劇団員98名が踊るというもの。
中国では先駆的だった、ヤン・リーピンら民間の独自運営、本物の「雲南少数民族」にこだわった『雲南映像』とは違い、市の中心部に「胡蝶の夢芸術劇場」という特設スタジオを持ち、2匹目のドジョウを狙う政府後援のものなので、その性格も自ずと異なってくる。
大理を旅した中国の若者のブログを見ると、「胡蝶の夢」のような舞台は北京でいくらでも見られる、と評判は今ひとつだが、2005年11月に行われた第5回中国舞踊荷花賞では、舞踊詩銀賞ならびに最優秀舞台美術賞を受賞している。さすが中国第一級演出家の舞台といえよう。
ただ、このことからも分かるとおり、観光向けの企画に特化するあまり、見せ物的で、ただ美しいだけの、スペクタクルな踊りばかりが目立つようになってきた。当然、雲南の伝統的な踊りそのものにも、大きな影響を与えている。(このことは次回に。)
ちなみに「胡蝶の夢」など、現在も公演は続行中。政府がバックについているから、と経営が甘くなる、どこぞの航空会社のようにならないことを祈りたい。
とはいえ、日々の舞台の中心はあくまで若手劇団員。夜10時過ぎに舞台が終了するやいなや、劇団員が疲れも知らずに一生懸命に稽古をする姿は、向上心に満ちあふれており、不意に本編以上に感動してしまった。
*注 ほかには麗江『印象麗江』『麗水金沙』、シーサンパンナ『モンパラナシー(勐巴拉那西)』など。
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