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暴れる象と芸象15 贈り物の効能

2016-06-17 15:44:36 | Weblog
写真は昆明動物園の孔雀。動物園に限らず、雲南各地のテーマパークでは放し飼いされたきれいな羽の孔雀たちが群れていた。

【贈り物を切らさず国を安定させる呉】
 巨象のほか呉からの贈り物は、三国志「呉書」に出ているだけでも、

雀頭香といった高価な香料、
大貝(紫の文様のある白い貝)、
明珠(大きな真珠)、
象牙、犀の角、
孔雀、翡翠(青い鳥)、闘鴨(けんかさせるための鴨)、長鳴鳥など

 呉国の特産品のオンパレード。
 なかには捕虜となった魏兵を「贈る」といったケースもありますが、ともかく珍奇な生き物系の「貢ぎ物戦術」は呉の外交戦略の最重要な柱だったことがうかがわれます。

これ以前より漢王朝に贈り物をまめに贈っていました。

孫権の兄の孫策が漢の朝廷から錫命という名誉ある勲章のようなものを最初に授けられた理由もこれ。
正史の『三国志』(物語の三国志演義とは違い、歴史書のほう)には
「孫策が遠方の地にありながらおこたりなく贈り物を奉じてくることから」(漢以策遠脩職貢)と書かれているのです。
 漢王朝とそれを操る魏が驚くほど、インパクトのある質と量の贈り物をしていたことがわかります。

黄初元年(222年)秋9月の魏の文帝が呉の孫権に贈った文には
「君が臣下に名を連ねて以来、珍宝を貢納する使者は道々にあふれた」(自君策名已來,貢獻盈路)ともあるほどです。

 魏の曹操が死去した年、魏の文帝(曹丕)が、孔雀や象牙など呉の珍宝を取りそろえて贈るように言ってきたとき、呉の大臣らは理不尽すぎる要求として「これ以上、贈る必要はない」と反対するなか、孫権は「江南の人民を守るため」「魏帝の求めてくるものは、われわれには瓦石(がらくた)にすぎない」といって、すべて取りそろえて贈っています。

 ある意味、物の豊かな国ならではの戦略ともいえますが、魏は要求し、呉は応える緊張した関係のなか、いかには双方の国の一般通念として、貢納物の授受が国にとって重要な意義を持っていたかがよくわかります。
(次回は象が贈ることができなかった国の悲劇について)
コメント
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