たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

「譜めくりの女」のストイックな罠

2008-04-29 20:17:34 | 劇場映画


アリアーヌ=カトリーヌ・フロ(左)とメラニー=デボラ・フランソア

フランス映画「譜めくりの女」

敏腕で有名弁護士の事務所に、実習生として一人の女性が採用された。
彼女はキチンと仕事はするが、聞かれたことしか話さない。気持ちを一切語らない。
弁護士が長期出張することになり、女性は家の子守役を買って出る。

家に行った彼女メラニー・プルヴォスに、弁護士は妻を紹介する。
売れっ子のピアニストのアリアーヌ・フシェクールだった。
この弁護士さん宅の、まあ立派なこと。お城のような大邸宅。
広い庭にテニスコートと広大な森。地下にはプールもある。
一人息子は母親の血を引いてピアニストを目指している。



ある日ピアノのレッスンをしている妻ピアニストの「譜めくり」を手伝う。
その完璧な読譜力のとりこになったピアニストは、彼女の「譜めくり」がなければ、不安でコンサートに出られなくなってしまう。
息子のピアノレッスンを依頼された彼女は、速いテンポの難曲を弾かせようと指導する。

弁護士が出張から帰ってくる前日、役目を終えて帰る彼女に、妻のピアニストはお礼をしたいという。
彼女は言う「サインが欲しい」と、ピアニストは、彼女を失っては演奏活動が出来なくなる。
サインする写真の裏に、思い詰めた告白の文字が……
父に聴かせるためレッスンした曲を引き始めた息子は、手の筋が痛いといって、手が止まってしまう
帰ってきた弁護士は、机の上にあった、白い封筒を手にする……



「譜めくり」をしながら、ピアニストに注ぐ氷のような眼差しと、喝采を浴びるピアニストへの愛撫。
 彼女メラニー・プルヴォス(デボラ・フランソワ)もまた、少女時代にピアニストを目指しコンセルヴァトワールの入学試験を受ける。
その試験でメラニーの演奏中、審査員委員長を務める有名なピアニストのアリアーヌ・フシェクール(カトリーヌ・フロ)がファンのサインに応じて、メラニーは調子を乱して、音楽家への途が閉ざされた。

この映画のメーンコピーは
「あなたがいないと、だめになる」
1時間25分の短い映画だが、全編に流れるピアノ曲とメラニー冷たい眼差しが、妖しさとミステリアスな魅力となって惹き付ける。