たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

「知的な刺激」に魅せられた「魔女」の激風

2006-05-31 14:44:59 | 本・読書

同時通訳者、作家の米原万理さん56歳の夭折
「不実な美女か 貞淑な醜女か」
<これほど知的な刺激を受けた本はない。>

講演会の際、お目に掛かったとき、上記の本について話すと、米原さんは「お仕事はなに」と聞かれた。
「××××」と答えると「そう」と言って、持参した本にサインして下さった。

その後、米原さんの著作を何冊か読んだ。どの本もとにかく面白い。軽妙で洒脱でしかも真理を含んだ文章に、何度も啓発され刺激を受けたものでした。
ロシア語同時通訳の凄さはもとより、幼年時代をチェコのプラハで、ソ連の学校に通って過ごしたことによって得た戦後「東欧社会の真実」をエッセイ、小説、物語として本質を見事に描き出していることでしょう。
また、人間の本性を、ユーモアあふれるシモネタで語る天才でもあった。

この春まで、NHKラジオで(水曜日の午前)最近、読んだ本を取り上げ、この本の何処が素晴らしいのか、ユニークな視点で紹介しているのを、何回か聞いたことがある。
私には聞いたこともないような本が多かった。
訃報:米原万里さん56歳 死去=ロシア語通訳、作家

映画 ダ・ヴィンチ・コードに吹く暗号風

2006-05-27 17:27:44 | 劇場映画

「モナリザの微笑」にホソク笑む3社
映画配給会社の「ソニーピクチャーズ」
原作出版「角川書店」と興行の「東宝」

日本全国で800を超すスクリーンで上映され、記録的観客動員だという。
昨秋からの巨費を投じた宣伝と話題性で映画興行記録を更新しそうな勢い。
上映初日の21日、夜7時のNHKニュースではトップ扱い。
世界中がこの映画に”賛否の渦”の話題になっていると報じていた。
「キリストに子孫がいた」などネタばれのコメントも。
一度観ると「ナゾが深まる」仕掛けがいっぱい。
要するに本を読んでいないと「モナリザがどうしたの??????」
本を読んだ人は「あっという間のナゾ解き」と、解説的セリフの連続。仮の姿から突然に正体を現す重要人物。
うん・うん・うん……原作の粗筋を映像的に再確認するだけ。
ナゾ解きに活躍していたソフィーヌヴー。映画では聞き役。オドレイ・トトウの高貴性が救いだった。
キリスト教に関わりのない「皮相な鑑賞」をお許しください。

えごの花陰 オトシブミの揺籃揺する五月風

2006-05-24 09:28:32 | Lyricism

数ミリの虫が子孫を守る「必死の知恵」
一念とも思える驚異の技「葉巻」の揺籃

オトシブミ科の甲虫。頭部は細長く後方がくびれる。広葉樹の葉をまるめて巣をつくり、中に産卵して地上に落とす。中の幼虫は葉を食べて成長する。(落し文の揺籃)
公然と言えないことを記して、わざと道路などに落としておく文書。らくしょ。(以上、広辞苑から抜粋)

博物誌で調べてみた。4月ごろから成虫は現われ、クリ、クヌギ、ナラ、ハンノキなどの樹の葉を巻き、「揺籃」をつくる(写真はえごの花の樹葉に巻かれたもの)。卵を一個ずつ生みつける。完成後、地面に切り落とされれ、幼虫は地面に落ちた「揺籃」の中で葉を食べて育つ。一ヵ月くらいで成虫なり出てくる。
もっと詳しく知るためにはここ「オトシブミの国」。大変参考になりました。ありがとう。

初夏の季語で「落し文」
手にしたる女人高野の落し文(清崎敏郎)
落とし文拾いて渡る思川(松尾ふみを)
女人高野=室生寺、五重塔へ続く石段脇の石楠花が見事だった。
オトシブミから室生寺に導かれた「たにし」はしばし、思い出に時間を止めた。中身はヒツ。
匿名ブログ 落し文ほど 品格なしたにしの自戒

みどり葉の風に乗って、何処に渡るのか花筏

2006-05-21 17:33:09 | Lyricism

花は流れて花は流れて何処で散る~

葉の真ん中あたりに花をつけ、夏に同じ場所に黒っぽい実をつける。みずき科。
雌雄異株で、雄株のものは花が数個付くが、雌株は1個しか咲かない。したがって写真の花は雌株ということになる。近くに雄株がないかと探したが見当たらない。

風綴り⑮<万葉の風・その二>
泊瀬風かく吹く夜は何時までか 衣片敷き吾が独り寝むよみ人しらず(巻十・2261)
神風の伊勢の国にもあらましを なにしか来けむ君もあらなくに大伯皇女(巻二・163)
風吹きて海は荒るれど明日お言はば久しかるべし君がまにまに柿本人麿(巻七・1309)

「花筏」には別の意味もあり、桜の花が散って花びらが水に帯状に浮かんで流れるさまを「筏」に見立てていうことばでもある。
季語にもなっている。花筏は茶花としてもよく利用されるという。

早苗が根付く湧水田を渉る青嵐

2006-05-19 19:08:45 | Nationalism

走り梅雨が新しい木芽をぬらして、緑が濃くなった。
ウグイスの鳴き交わしが、里山にひびき渡っていく。
田植えの済んだ青田には、仲間たちが戻ってきた。

おけら、げんごろう、マキガイ、どぜう、みみず。
みのむし、おとしぶみ、蛹たちが脱皮の最中だ。
青蛙おのれもペンキ塗りたてか 芥川龍之介

風綴り⑭<初夏の風編>
青嵐 青東風 青田風 乾風 薫風 景風 黄砂風
菖蒲風 新樹風 麦秋風 若葉風 ツバメ返しの風
あぜ道を モグラも渡る 田植え時
たにしがあぶ句を噴いている。

一人静、二人静に吹く舞い風

2006-05-16 16:36:20 | Lyricism

静や、静、静の~ 白拍子の舞姿に似て

センリョウ科の多年草。葉間に花軸を出し、白色の細花を穂状につける。静御前の霊が自身の乗り移った菜摘女と共に、同じ衣装で舞いを舞って見せ、吉野の勝手社の神職に弔いを頼む。(広辞苑から抜粋)

植生地は以前から承知していたが、残念ながら、一人静はすでに花の時は過ぎていた。こんなブラシ様の花が咲くという。(すいません。一人静の写真見させてください)

風綴り⑬ <万葉集の風・その一>
采女の袖吹きかへす明日香風 都を遠みいたづらに咲く志貴皇子(巻一・51)
伊香保風吹く日吹かぬ日ありといへど 吾が恋のみし時無かりけりよみ人しらず(巻一四・3422)
わが背子が着る衣薄し佐保風は いたくな吹きそ家に至るまで大伴坂上郎女(巻六・979)
たにしが初めて知った「二人静」は、
名古屋時代に食べた両口屋是清の銘菓だった。

「ダ・ヴィンチ・コード」の映画に吹く旋風

2006-05-13 12:06:02 | 本・読書

世界的ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」
「ナゾ解き」に興味津々。映画封切り迫る。

禁断のキリスト教史のナゾに迫るダン・ブラウンの超大作=ダ・ヴィンチ・コード。
分厚い原作本2冊。「ナゾ解き本」など、関連図書が書店に山積みされている。


事実は次のように始まる。ルーヴル美術館のジャック・ソニエール館長の死体が館内で発見され、周辺に奇妙な暗号が残されていた。 
館長の孫娘、女主人公・暗号解読官ソフィー・ヌヴォーの出自とは?。
フランス警察に追われる、宗教象徴学専門教授・ロバート・ラングドン。
作品の複線は「聖杯伝説」「マグダラのマリア」「モナ・リザ」。
問題絵画「マグダラのマリア」は、いま上野の都立美術館でやっているプラド美術館展 で見ることが出来る。
登場人物はそれほど多くはないが、ストーリー展開とともに、意外な正体を見せ始める。ディテールのはっきりしない、重要登場人物も2,3人居る。
映画はそれをどのように処理するのか。
いよいよ20日、世界同時封切り。

映画オフィシャルサイト
「ダ・ヴィンチ・コード」関連リンクサイト
たにしの興味は「聖婚」の儀式。
男は「あの一瞬」神と対話しているという。

落葉松林、天空の露天に吹く、浅間展望の風

2006-05-08 12:51:48 | Lyricism

郷里に慶事があり軽井沢、小諸をまわった。
一夜、浅間高原山ろくの温泉宿に泊まった。
蓼科連峰を望む天空の露天風呂を満喫した。

ウン十年か前になる、高校一年の最初の国語の授業。
担任教師が島崎藤村の「落梅集」冒頭の自序を黒板に書付け、
新体詩の曙を謳う藤村詩集から授業が始まったことを、覚えている。

「遂に、新しき詩歌の時は來りぬ。
 そはうつくしき曙のごとくなりき。あるものは古の預言者の如く叫び、あるものは西の詩人のごとくに呼ばゝり、いづれも明光と新聲と空想とに醉へるがごとくなりき。
 うらわかき想像は長き眠りより覺めて、民俗の言葉を飾れり。
 傳説はふたゝびよみがへりぬ。自然はふたゝび新しき色を帶びぬ。」
(以下略)





千曲川旅情の歌 
      島崎 藤村

小諸なる古城のほとり
雲白く遊子悲しむ
緑なすはこべは萌えず
若草も藉(し)くによしなし
しろがねの衾の岡辺
日に溶けて淡雪流る

あたたかき光はあれど
野に満つる香りも知らず
浅くのみ春は霞みて
麦の色はつかに青し
旅人の群はいくつか
畑中の道を急ぎぬ

暮れ行けば浅間も見えず
歌哀し佐久の草笛
千曲川いざよふ波の
岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飲みて
草枕しばし慰む



手嶋龍一著「ウルトラ・ダラー」読後に吹く闇の風

2006-05-05 11:32:14 | 本・読書

「事実は小説より奇なり」といわれる。
その「奇なる事実」を小説にした本だ。
外務省に記録されない「公電」がある。

いま話題の本、手嶋龍一著「ウルトラ・ダラー」を一気に読み終えた。新潮社
手嶋さんは、前NHKワシントン支局長。とんでもない重要ニュースでも、柔和な表情で冷静な語り口が常だった。あのニューヨーク9・11同時テロの真相・惨状を、10日間以上も寝ないで続けていた人。手嶋龍一オフィシャルサイト

本の内容は、いろいろ書かれているし、ネタばれになるので記さない。
ここでは本書に登場する女性たちに注目したい。
主人公の表の顔は英BBCのラジオ特派員、スティーブン・ブラッドレー。本当の顔はインテリジェンス(諜報や情報分析)の専門諜報員。湯島の黒竹の垣根に囲まれた日本家屋に住んでいる。
この特派員に絡む女性たちが、なんとも言えない知的で魅力的なのだ。
①高遠希恵=内閣官房副長官、外交・安全保障政策総覧している。頭の切れと才知は外務省の局長を凌ぐ。
②槙原麻子=福原流篠笛のお師匠さん。スティーブンの先生。和服を着せたら絶品の魅力的な佳人。
③瀧澤泰子=アジア太洋州局長、瀧澤勲の妻。豪華な着物が似合う外交官夫人。
④ミッシェル=ひたむきな眼差し、韓国の女性ITエンジニア。
⑤成島久美子=呉服店の売り子、ミッシェルに取り込まれてしまった成島エンジニアの妻。
⑥安斉万里=気が利くスチュアーデス。
⑦オリアナ・ファルコーネ=米情報機関の凄腕の主任捜査官。
男として描かれるのは英の主人公、米の同僚だけ。日本人の男は国際諜報戦の陰謀に取り込まれるだけ。
幾度となく書かれる、食事と着物のウンチクにクソ!!
NHK受信料を払っている、たにしには無縁の世界だ。

新緑眩しく、若葉ゆらぎに吹く薫風

2006-05-03 10:59:02 | Lyricism

新緑の 風にゆらるる おもひにて (飯田蛇笏)夏山は 目の薬なる しんじゅかな(李吟)
万緑の 万物の中 大仏(高浜虚子)あらたふと 青葉若葉の 日の光(芭蕉)
万緑の中や吾子の歯 生え初むる  中村草田男

青葉若葉の中を歩いてきた。徘徊人には圧倒される緑が眩しすぎる。緑は本来生命の発生・生育を表わす言葉だという。赤い、青い、黄色い、は日常でも出てくる形容詞だが「緑い」とは言わない。
だから新緑の色は青葉というのだろう。

「緑・みどり」とは植物の芽が伸びゆくさま、その柔らかくも「たくましく伸びる芽」を指す。それが赤ん坊である場合、「嬰児(みどりご)」と呼ばれる。これから伸びゆく、まだ頼りないが、輝きに満ちた命が「緑・みどり」なのだという。

風綴り⑫ <色の付く風、色を感じる風編>
青東風(こち) 黒南風(はえ) 白南風(はえ) 青田風 青嵐
青北風(北風の初め) 色なき風(秋風)=白風 風薫る 若葉風
教えて、他にも色の付く風
大型連休 近場の林 徘徊す
たにしが不味いアブ句を吐いた。