たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

ハンガリー映画「人生に乾杯!」日本のシニヤ世代に元気を!

2009-08-28 21:25:12 | 劇場映画

初めてハンガリーの映画を観ました
人生に乾杯!です。シネスイッチ銀座

かつては一時期、ソ連共産党支配下の社会主義国であった東欧の小国・ハンガリー。
1956年、首都ブダベストは、ソ連支配に抵抗する民衆蜂起による動乱の最中であった。
そんな戒厳の街で一組の男女が出会った。
男はソ連共産党による反乱市民摘発の手先となって、
女は富裕家庭の娘として、天井裏に身を隠していた。

それから半世紀、エミルとヘディ。今では81歳と70歳。
わずかな年金では電気代も払えず、明かりもない。
テレビは隣の家で見せてもらう生活だった。
思い出のダイヤのイヤリングも差し押さえ供出、競売にされてしまう。
悲しむ妻・ヘディを見かねて、

腰痛を抱え、日常生活にさえ苦痛を伴う81歳のエミルは怒った。
大事に保管していた旧ソ連の要人専用の名車「チャイカ」を始動させる。

車内に保存していたトカレフ拳銃を手に、向かった先は郵便局。
窓口の女性に、きわめて紳士的にお金の提出を求めた。

市場主義経済の下、生活もままならない年金制度。
怒れるシニヤ・パワーを見せてやる、とばかりに、
チャイカとトカレフを武器に、二人の「紳士強盗」行脚が始まった。

そして、思い出のイヤリングを取り戻して妻の手に。
再び青春のときめきを取り戻す。
悲壮感などない。実におおらかな「紳士強盗」道中。



当然、警察当局は逮捕に乗り出す。
美人刑事とちょっとお人好しで、恋人の相棒が追跡する。
さすが、かつてのソ連要人御用達の名車・チャイカ。
警察のパトカーなどでは太刀打ちできない。
戦車並みの馬力を発揮する。

年金老夫婦の「紳士強盗」がマスコミを騒がすようになると、
全国の年金生活者から「喝采の嵐」が沸き起こる。
マスコミも、ヒーローとして取り上げ、
劣悪な年金制度に国民の怒りが爆発。「年金動乱」の様相さえ出始めるのだった。

やがて老夫婦は息子との思い出の別荘で語り合う。
「もう止めよう」ということになり、人質としていた美人刑事を解放する。
警察当局の包囲網が迫る。

「死ぬまでに一度、海を見たいはわ」というヘディ。
「これも必要になると」ガソリン缶を積み込むエミル。

巨大なブルトーザーで封鎖された一本道を、チャイカは猛スピードで突っ走る。
「止めてっ!」と泣き叫ぶ美人刑事。チャイカはブルに突っ込み炎上。

半世紀前の戒厳動乱下の街で、ダイヤモンドのイヤリングが女の手に。
そして「海を見たいと」言った老妻の願いは……

年金生活に痛めつけられている「後期高齢者」のみなさん。
この映画を観て元気を出しましょう。
静かな感動と勇気の出る映画です。

これから見たい人はここで。

ある映画評には以下のような記述があった。
◆社会主義を信じていた旧世代が経済原則に切り捨てられる姿にスポットをあて、庶民の不満を代弁するかのように世間に復讐する老人を追う。
◆個人の密やかな愛の思い出まで奪ってしまう現代社会の冷たさに彼の怒りは爆発する。

クララ・シューマン 愛の協奏曲

2009-08-18 20:41:01 | 劇場映画
お盆休みといえばやはり映画館。
たにしの爺たちの昭和世代は、正月とお盆は映画が娯楽であった。
爺の一番好きなスクリーン、ル・シネマは東京は渋谷の Bunkamura の6階にあります。
ここの2つのスクリーンは、いつも質の高い映画をロングランで上映してくれる。場内では一切の飲食を禁止しているところも気に入っている。

見たかった映画は 「クララ・シューマン 愛の協奏曲」

ドイツ・ロマン派音楽の代表ロベルト・シューマン(1810年~1856年)、その妻でピアニストのクララ・シューマン( 1819年~1896年)、そしてヨハネス・ブラーム(1833年~1897年)の3人をめぐる、よく知られている史実を映画化した作品。

冒頭から、夫のピアノ協奏曲イ短調第1楽章を演奏するクララ・シューマン(マルティナ・ゲデック)を、二人の男が見守っていた。1人は夫のロベルト・シューマン(パスカル・グレゴリー)。もう1人は若き作曲家、ヨハネス・ブラームス(マリック・ジディ)。

舞台はデュッセルドルフ。演奏旅行で疲れたシューマン夫妻が同所で音楽監督の職を得て、豪華な邸宅と料理人や家政婦も付く事になる。子どもたちも大喜び。ようやく作曲活動に集中するようになる。ピアノの弾き語りなどをしながら、作曲に励む若き天才・ヨハネスがシューマン家族の中に迎えられる。

代表作・交響曲第3番「ライン」の作曲に打ち込みながら、神経の病は悪化する。そして、ヨハネスの才能を評価しつつも、妻クララとの疑惑に悩むロベルト。あくまでも明るいヨハネスは子どもたちにも慕われて、献身的にクララに尽くすのだった。

映画としては、複雑なストーリーや伏線は何もない。単線的に史実を追う作りになっている。その点は平凡でもあるし不満でもある。

圧巻はやはり、全編に挿入される二人の天才作曲家の交響曲の数々。クララの葛藤が主題となって、彼女の奏でるピアノ協奏曲をはじめ、ドイツロマン派の音楽が堪能できた映画であった。

それとなんといっても、3人の芸術家らしい風貌と品格。ロベルトの狂気の中にもクララとヨハネスを見つめる澄んだ目。若く才気溢れる天才・ヨハネス。そして気品とやさしさに満ちたクララ。その豊満な胸乳がなんとも美しい。
ロベルトの死後、ヨハネスはその禁断の園に触れることができたが……

最終章ではブラームスのピアノ協奏曲第1番ニ短調第1楽章を官能的に弾くクララ、見つめるヨハネスの複雑な心情が切ない。彼は生涯彼女を慕い尽しながら、大作曲家の名声を音楽史に残した。

監督はヘルマ・サンダース=ブラームス。彼女はヨハネスの叔父から連なる正統なブラームス家の末裔というのも話題のひとつといえる。

毎日新聞の8月20の夕刊に来日している同監督の話が載っています

噂の名著「虚数の情緒」 吉田武著

2009-08-14 17:24:43 | 本・読書

 「勉強」が唯一の趣味である、たにしの爺……
予てから手にしたいと思っていた巨著「虚数の情緒」
―――中学生からの全方位独学法―――
 東海大学出版会、2000年2月20日発行。
総ページ1001、4300円。

 書店で幾度も手にしてみたが、値段と厚さと中身――
半分は数式の羅列と数表・図形ばかりの本書。
基本的には「数学書」である。
購入しても、果たして読み切れるかと考えると、
買い込む勇気が出なかった。

 市の図書館に久しぶりに行ったので、
検索してみたら、あった。「どこにありますか」と、
係りに聞くと、「書庫にしまってあります」という。
「貸してもらえますか」と聞くと、係りの人「ハイ」。

始めて見たらしく「すごい本ですね」といって、出してきてくれました。
2週間の貸し出し期間を何回、延長したら読了できるか、
それとも途中で手に負えなくなり、停読になるのか。

 まず、著者・吉田武さんの8ページにわたる「巻頭言」から読み始めよう。
 「二十一世紀の我が国は、嘗て無かった未曾有の混乱状態になるだろう。
………………(中略)…………………………
我が国の知力は明らかに落ちている、品性を失っている、それも凄まじい勢いで、
………………(中略)…………………………
何か大事なものを欠いている、人間的な色彩を失って居るのである」
 爺もそう思っている。



テンプレートを変えてみました。

2009-08-08 10:24:10 | Weblog
 たにしの爺、
5年間愛用してきました「ブルー基調のテンプレート」
シンプルいずビューティフルで好きでしたが、
 突然、変更したくなり、このようになりました。
文字の色が気に入らないですが、
しばらく様子を見ます。

よそ様のブログを拝見すると、
いろいろ楽しそうなことを仕掛けています。

 爺には眩しすぎて見難いものもありました。
単純こそ美しい、この気持ちは変わっていません。
 これからも、ごひいき下さい。


今日は立秋 暦の季節は 速すぎる

2009-08-07 06:08:02 | Lyricism

今日は立秋です。
暦の上では、秋の気配の始まりです。

秋立つや躓きつつも捗りて (山田弘子)
4日に九州北部・中国・北陸地方が、
梅雨明けしたばかりでした。
東北地方は、まだ梅雨の最中です。
秋立っても、梅雨のまま、ということなのでしょうかね。

 たにしの爺の周りの田んぼも、稲の出穂(しゅっすい)期が過ぎました。
少し日照不足のようですが、これから盛り返してくれるでしょう。



 隣りの蓮畑は、すっかり蓮の実ばかりになってしまいました。
「気味が悪い」という人も居ます。
たにしの爺は、E.T.に似ていると思います。

 花を付け始めたハギの枝越しに見る空は、
何とはなしに、秋の空の雲行きです。



 世間はまもなく、セミの声も打ち消されるような、
センセイたちが「就活」で声をからす日々が始まります。
学生たちは自費で「就活」に汗を流しているのに、
このセンセイたちは、国費でやっている。
試験官は私たちです。「変な」センセイを選ばないようにしましょう。

 そう言えば「国会議員」を「選良」とも言います。
だれがそんなことを言い始めたのでしょうか。
よほど、善良なお人だったのではしょう。
いまは、だれもそう思う人はいません。

ヒグラシの 声聴くときぞ 朝時雨 (爺)
 たにしのあぶ句です。



 8月はまた、祷りのつきです。



8月のはじめは、花であいさつ

2009-08-01 11:21:41 | Lyricism

七月はまた立葵 色とりどりの/また葡萄棚 蔭も明るい/
烏揚羽がゆらりと来て/艶な喪服をひるがへす(三好達治)

8月がスタートしました。どうやら冷夏の様相。

ネタの夏枯れで、7月中に聴いたN響のプログラムメモを。
  演奏NHK交響楽団、指揮ジェームズ・ジャッド(イギリス)、
ピアノジョナサン・ビス(アメリカ)
  幕開け曲はドヴォルザークの序曲「謝肉祭」作品92。
 カーニバルの情景を力強く打楽器で華やかに描写し、木管と弦が故郷・チェコの自然を思わせる調べを奏でる。ジャッドの指揮で高潮と静けさが繰り返される素晴らしい開幕曲だった。
  2曲目はジョナサン・ビスのピアノで、モーツアルトのピアノ協奏曲第21番。
 この曲は数あるモーツアルトのピアノ協奏曲のなかでも美しいメロデーで知られている。ビスは大きな体と長い手で、アメリカ的な響きを聴かせた。また、第2楽章ではすべての弦によるピチカートのソフトな音調が印象的だった。
  終曲のプログラムは、ブラームスの交響曲第4番ホ短調。
  圧倒的な重奏と多彩なメロデーが繰り返され、ジャッドの巧みな表現の指揮によって聴く者を高揚させた。

少し眠いモーツアルトでした。
今夜のNHKクラシック番組アマデウスは「ブラームスの交響曲第4番ホ短調」です。(2日追加)