読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

セックスエリート 酒井あゆみ 幻冬舎アウトロー文庫

2006-12-26 23:16:58 | 読んだ
幻冬舎アウトロー文庫にある酒井あゆみの本は全て読んでいる。(といっても3冊だけど)

この人の書くものは面白い。といっても可笑しいという意味の面白いではなく、非常に真剣な部分を強く感じるのである。
なんというか「身を削って書いている」というふうに思えるのである。

この人は自身が風俗関係で働いていたので、風俗で働く女、に対して我々が持っているような感覚ではない別な感覚で迫っている。
その辺が、新鮮でそして真剣さが感じられるのである。

風俗嬢、というだけで一種の偏見があるが、その偏見のママで書いたものは一過性のものでしかない。
彼女たちに対する一種のシンパシーと近親憎悪的な反感、これが織り交ざっているところが、深み、を生むのではないだろうか。

本書は副題に「年収1億円、伝説の風俗嬢をさがして」とある。
そして著者は「プロ」の風俗嬢こそ年収1億円、有名店のナンバー1であると思い取材をするのだが、出てくるナンバー1の風俗嬢は「アマチュア」的なのである。
そこに違和感と不安感を抱いてゆくさまが、こちら側を「フーム」とうならせるのである。

風俗に限らずいまや職業は「プロ意識」など必要としない。
その職業が何であれ「プロ」の目線や技術で何かを受け取り代金や料金を支払うことを買い手側が好んではいないのではないだろうか?
そういう買い手側の意向を早くつかんだ人たちが「勝ち組」に回っているような気がする。
そういうことを本書を読むと「ああ」と感じたりする。

本書には著者の同居人という人が出てくるが、こちら側の感覚では「なぜこんな人と一緒にいるのだろう」という人である。
「酒井あゆみともあろうものが」という思いも浮かぶ。
しかし、他人については冷徹で明確な判断を下すことができるのに自分のこととなるとそうでもない、というところに、酒井あゆみの真骨頂があるのではないかと思いなおしたのである。

風俗のことを知りたいという人にはお勧めではないが、人間を知りたい人にはお勧めの本である。
コメント
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