京男雑記帳

洛中で生まれ育った京男が地元視点で見た日常風景や話を雑記的に掲載

そこの土瓶降りてきなさい!

2006年10月25日 04時17分18秒 | 風景


京都の古い街を歩いていると不思議なものや懐かしものに会える。
秋になって涼しくなってできるだけ歩くようにしているんです。
新しい発見がいっぱいあるしね。
オープンカーだと見逃してしまう。
京都の観光は絶対歩きがいいですよ。
車やバスでは、京都の魅力は満喫できない。
食べるものもその辺りにある普通のおうどん屋さんなんかがいい。
立派な料亭で京料理では、ほんとうの京都がわからんかも。



この土でつくった格子は懐かしいな。
西陣の母方の実家の二階がこの窓やった。
天井が低くて暗くて、しかも階段が箪笥になっていたりかなり面白かった。
台所は吹き抜けになって天井に天窓が開いていたな。
空が見えて不思議だった。
この格子の内側から外を見るのが好きだった。
でもね。火事になったらどうしょうとちょっと怖かった。



鍾馗さんもなんや怖かった。
鍾馗さんは邪気を追い払ってくれているんです。
「鍾馗さん」というのは、唐の玄宗皇帝が病に伏した時に、夢の中で鬼が楊貴妃の宝物を盗もうとした時、そこに出てきてその鬼を退治したという伝説の英雄。
この故事にちなんで、疫病神を祓い、魔を取り除くと信じられていました。
京都人は、この鍾馗さんが好きなんです。
たいていは藍袍を身にまとい、右手に太刀を持って前方をにらみつけています。怖いながらもなぜかユーモラスな姿ですね。
なんで京都で、この「鍾馗さん」を屋根に置くようになったんやろね。



こんな話が伝わっています。
昔々、三条あたりに薬屋さんが大きな家を建てはったんやそうです。その薬屋さんが屋根に大きな鬼瓦をおかはったらしい。そしたらお向かいの家の娘さんが、その鬼ににらまれているような気がして夜ごとうなされはったんやそうです。とうとう病気になって寝込んでしまわはったそうです。あれこれ手をつくさはったけどいっこうによくならへん。お向かいの薬屋さんに「鬼瓦を取り外してくれはらへん」と頼みに行かはったけど、その薬屋さんもぎょうさんお金を使こてつくらはった鬼瓦やし、外せへんとの冷たい反応。
そこで親御さんは考えはった。鬼に勝つもんは何かと。中国の伝説にならって鍾馗さんの形をした瓦を特別に瓦屋さんにこさえてもらわはった。で置かはったんです。
するとその娘さんの病気はすっかりよくなったんやそうです。
これが鍾馗さんを置くようになった由縁とされています。
鬼瓦を無理矢理降ろしてもらって角を立てるより、鍾馗さんで解決しようとしたのがいかにも京都人らしさがあるんです。
また、ご近所よりも大きな鬼瓦をうれしがってつけてはあかんという教訓にもなっているんです。
コメント (8)
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