波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

オヨナさんと私    第99回

2010-06-11 09:26:07 | Weblog
二人は成田国際空港のロビーに来ていた。普段の日とあって比較的に空いていて、静かである。空港は年々整備されて近代的に、そして便利になっているのが分る。時間を計りながらゆっくり手続きを進める。彼女は初めての海外旅行とあって少し緊張している。
「これで後は何もすることは無いから、少しゆっくりしようか。見物でもしたらいいよ」優しく声をかけると、嬉しそうにうなづく。みやげ物を始め、化粧品、装飾品が世界のブランド品を揃えておいてある。見るだけでも楽しく、気持ちが良い。しかし、殆どの人が通り過ぎるだけで、買い物をしている人は見当たらない。嘗ては酒、タバコの売り場に人が集中して大混雑をしている光景が出発ロビーでも見られたのだが、今はその面影は無い。
時代の流れをヨナさんは見る思いであった。サテライトの見えるところで、お茶を飲む。
「飛行機に乗ったことはあるけど、海外は初めてなの。大丈夫かしら」素朴な子供のようなことを聞く彼女に「同じだよ。ちょっと長く乗るだけさ。といっても3時間ちょっとだけど、多分寝る暇も無いと思うよ」たわいの無い会話で緊張をほぐす。搭乗を知らせるアナウンスがあり、二人はサテライトへ向かった。
予定より、少し遅れて飛行機は飛び立った。ぐんぐんと上昇する時のパワーはやはり一種普段経験することの無い迫力を感じる。この時の気圧の変化が微妙に身体に影響するのだが、体調の悪い人はその影響で気分が悪くなることもある。そこを過ぎれば平衡飛行に移り、機内の様子も落ち着いてくる。「大丈夫だったかな。少し急上昇できついけど、もう少ししたら飲み物と機内食が出るよ。」「えー。もう出るの。どんなものが出るのかしら。楽しみだわ」「あまり期待しないほうがいいよ。ビジネスとか、ファーストクラスだと内容も違ってくるけど、エコノミーはコンビに弁当よりお粗末かもしれないよ。といってもしょうがないんだけど。出す前に魚か肉かと聞いてい来るから、どちらにするか決めておくといいよ。」
「じゃあ、あなたは肉で、私は魚にして少しづつ試食しましょうよ。」他愛の無い会話は何時までも続き、なにを話しても二人にとっては、とても楽しく、また貴重な会話であった。
やがて機内食がテーブルに運ばれ食事が始まる。黙々と食べながら、「これって、味が薄いのね。もう少し味が付いていると食べやすいかも」と呟く。「多分、万人向きに薄くしてあるんだと思うよ。好き、嫌いがあるからね。」何時の間にか、彼女の肩がヨナさんのほうへ
よりかかり、二人はそのまままどろんでいた。

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