波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

泡粒の行方   第28回

2015-10-15 09:10:57 | Weblog
人間の一生は長くて短い。そしてその生かされている時間は自分が動いているのだが、自分で決めて自分の思っているようにしているようで、動かされているのであり、自分では何もできていない。そんな気がしている。欽二はこのときそんな運命を感じていた。
「福島の仕事はしなくてよい。そして新しい事務所を設けてそこで岡山の仕事に
専念してほしい、必要な人材は岡山から出せないので東京で調達してほしい。必要なものは何でも言ってくれれば準備する」ほほをつねるほど夢かと思えるよい話だった。今までの丁稚同然のやっとの生活から、立派な独立した事務所の責任者として仕事ができる。今まで考えることもできなかった運命が備えられたのである。
これからは全部自分の思うようにできる。誰に命令されるのではなく(とはいっても本社の主業務はあったが)自由に仕事を進めることができたのだ。
早速事務所を探した。できるだけ交通の便利なそして通勤に近い場所で安いところ、そんなことから乗り換えのない「秋葉原」とした。雑居ビルの4階に契約をした。必要な事務机ほかを備えたが、問題は人材だった。任されたとはいえどうするかとなると人の問題だけに誰でもというわけには行かない。
すると、隣の電気屋で働いていた若者がある日相談に来た。「実は折り入って相談があるんですが、」といわれて聞いていると、今の店での仕事がいやでどこかに移りたいのだが、知っているところはないかというのだ。急に言われても電気屋さんとの付き合いはないし、大阪か岡山か
どこでも行くというので探してあげようということにして、とりあえず岡山の上司に相談してみた。すると今度上京するの面接してみようということになった。
そこで話を聞いているうちに「今度の東京の事務所で働いて見ないか」という話になっていた。
そこで研修をかねて岡山工場へ言って3ヶ月の研修を受けてもらうことになった。
話ははじめから順調にスタートした。これで一人の営業マンを確保できた。と何の考えもなく喜んでいた。しかしこの話がまもなくとんでもない大きな問題になることを、そのときはまったく考えていなかったのであった。

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