経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

本当に有効な子育て支援の形

2011年09月13日 | 社会保障
 しばらく社会保障を書いてなかったので、小ネタで一つ。昨日、日経ビジネスO.Lに掲載された、宇南山卓先生の「本当に有効な子育て支援とは」を取り上げてみよう。内容は、子ども手当について、所得制限をより厳しくし、現物給付した方が効果的というものだ。おっしゃるとおりではあるが、考えるべきところはある。

 ある政策目的を達成するのに、目的物そのもの、すなわち、現物給付をする方が有効なのは、ある意味、当たり前である。現金給付は、受給者に選択の余地を与えるのが有効な場合、それは時期の選択も含めてということになるが、そういう場合に限られる。ただし、子ども手当は、税制を補完するものという背景もある。

 子ども手当の財源は、結局、年少扶養控除の廃止によって、ほぼ全額が賄われることになった。つまり、年少不要控除の代わりでもある。控除は、扶養の負担がある者には、税を軽くするということであって、その分を何に使おうと自由であった。したがって、子ども手当が貯蓄に回ろうとも、それで構わないのではないかという見方もできる。むろん、それは、「負の所得税」でやれという反論もあると思うが。

 むしろ、筆者が注目するのは、子ども手当は、貯蓄も含め、ほとんどが子供のために使われていることである。現金で出しておいて、この結果は、十分なようにも感じられる。問題は、宇南山先生も指摘するように、子供の学費として貯蓄されていることで、給付と使途に時間的ズレがあることだ。このあたりは、同じ「バラマキ」でも、高校無償化があまり批判されないのと、軌を一にするところがある。

 子ども手当は、「中学生手当」と言われたりもする。従来の児童手当でも、小学生までは給付対象になっており、高校生は先の無償化が行われたからである。このため、比較的、子育て負担の軽い時期が焦点となってしまった。これに関して、宇南山先生は、高等教育へのシフトを主張されているわけだが、筆者は、反対に、乳幼児期への給付を厚くすべきだと考えている。

 子ども手当の使途の調査は、あくまで、子供を持つ人の答えである。少子化を緩和するためには、これから子供を持とうとする人が、それに踏み切れるよう制度を整える必要がある。それには、ゼロ歳時に、所得が減らないような保障がいるし、1~2歳時に容易に保育所に預けられる保障もいる。1~2歳時は、親が保育する選択肢として、現金給付も意味がある。このあたりの制度設計は、基本内容の「雪白の翼」や小論をご覧いただきたい。

 最後に、ここは価値観の相違だろうが、筆者は、低所得者に限定せず、給付や負担に差を付けつつも、すべての者を対象として給付を行うべきだと思う。低所得者に限定すると、制度は社会的な支持が得にくくなり、厄介者扱いをされがちだ。もし、医療保険が低所得者だけのものなら、所得比例の保険料や税で支えようという気持ちには、抵抗感が生じる。

 とりわけ、少子化の克服は、社会を維持していく上で絶対に欠かせないものだ。究極の行き着く先は、絶滅になるからである。その意味で、社会があってこそ豊かでいられる高所得層も含め、子育て支援は、ユニバーサルなものであるべきだと考える。持続可能にするために、ある程度の大きさの社会保障は必要なのである。

(今日の日経)
 欧州銀へ無制限に資金。ギリシャ債務不履行警戒、債務不安仏銀に波及。政府に大手銀が救えるのか・土屋直也。産業素材が軒並み下落。復興増税5~10年で調整。経産相・原発再稼動に前向き。仏核廃棄物施設で爆発。東電が賠償請求用紙を6万世帯に発送。65歳まで再雇用を厳格に・厚労省。自動車保険料上げ。日米金利差縮小で逆張りの円買い・清水功哉。英・総合金融業を修正へ。中国建機・一段の落ち込みも。100万円切るEV充電器。経済教室・対外戦略・田中明彦。

※いよいよ欧州も正念場。※復興需要は出てない。※それで増税。※賠償対象は6万世帯だけなのか。×1000万円で6000億円。※とうとう雇用がないままに引き上げになる。※FXでも金利差が効いてるとはね。

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