経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

緊縮速報・厚生年金の不可解な決算報告

2024年08月04日 | 経済(主なもの)
 厚生年金の収支はマクロ経済に影響を及ぼすほど巨大なものだが、決算を読む人なんて、まあいない。2023年度決算の日経の記事も「積立金が47.6兆円も増えて良かったね」くらいのものである。しかし、賃金も物価も大きく上がっているのに、歳入が前年度比-0.2%、歳出が-3.6%なんて、あり得ないだろう。専門知識のない記者が異常に気づかないのは仕方ないが、決算の説明を「基礎年金を確実に支給するために必要と見込まれる額を組み入れた結果」という不可解なもので済ますなんて、決算報告の責任を果たせているとは思えない。

 歳出減は、基礎年金勘定への繰入を-2.1兆円も減らしたためだ。基礎年金の給付が前年度より増えはしても減るはずはなく、事業月報でも3%弱は増えている。すると、基礎年金勘定の財源は、厚生・国民年金勘定からの繰入と積立金受入なので、後者を予算額から倍増させたのではないか。予算とは大きく異なる経理なのだから、具体的説明があってしかるべきだろう。一般会計の決算概要では、基礎年金拠出金等年金特別会計への繰入で1.5兆円も不要を出したと明記している。

 こうしたイレギュラーな経理の下であるが、厚生年金は2.4兆円の緊縮になっている。2023年度は、可処分所得が増えず、消費が停滞したが、それを裏書きする形だ。マクロ経済を運営する者は、一般人のように「貯金が増えて良かった」と喜んでいるようではダメで、急な緊縮は成長に悪影響を及ぼすと見て、財政全体での調節を考えなければならない。もっとも、緊縮は常に善で、財政が作る貯蓄は自動的に民間が投資して吸収するという机上の理論を信奉しているようでは、何を言ってもムダであるが。

(図)



(今日までの日経)
 米景気不安が急拡大 7月失業者、2割増。米「質への逃避」加速 NY株連日の急落。日経平均2216円安 下げ幅歴代2位。GPIF、4〜6月の収益8.9兆円 3四半期連続プラス。年金積立金、過去最大の255兆円 23年度決算。


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