経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

キシノミクス・上向いてきた消費

2024年08月11日 | 経済(主なもの)
 6月のCTIマクロが公表されて、4-6月期の名目の前期比は+0.5となった。この間、尻上がりに伸びているのも良い傾向である。むろん、物価上昇を受けて、実質では、前期比-0.2になってしまうが、今週、公表される4-6月期GDPで、事前予測のコンセンサスどおりの高い伸びになるかが注目だ。いずれにせよ、賃上げや減税で可処分所得が伸びており、今後も消費の加速が見られれば、この1年の停滞から脱する景気の節目となる。 

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 この国では、投資をあがめて、消費をいじめるという不思議な経済政策をする。どちらもGDPを構成するし、消費の割合は高いのだから、可処分所得を削り、消費を抑制すれば、なかなか成長しなくなるのは道理だが、成長戦略という名の下で、可処分所得の動向は顧みないという無理が通ってしまう。企業は、需要が増えないと、とても設備投資はできないという卑近な現実があり、産業政策は空回りする。

 脇田成先生は『日本経済の故障箇所』で、企業が貯蓄して賃上げをしないから、成長が停滞したという指摘をされていたが、企業にしてみれば、いかに儲かっていても、売上が増えていないと賃上げは厳しい。還元するにしてもボーナスだ。この2年、打って変わって賃上げができたのも、名目だけにせよ、売上が増えたからである。設備投資にしても、売上が見込めるからこそやれる。

 1997年以来、アベノミクスの消費増税に象徴されるように、景気回復期に消費を殺ぐ反成長政策が取られて来たが、今回は、たまたまにしても、物価高補助や定額減税が取られて、そうならなかった。日銀が、物価上昇の見通しを持って、円安バブル潰しという、本来、求められる政策に舵が切れたのも、こうした背景があればこそである。その意味で、CTIの4-6月期の名目の上向き、実質の底入れは、とても重要なのだ。

 もっとも、一時的な所得増は、耐久財に偏りがちで、クルマは生産制約、家電は半分が輸入と生産増に結びつきにくくなっているし、旅行などのサービスが増えるにしても、供給を増やすより単価アップという感じで、さらに次へと上手く回って行くかは課題もあるものの、7月の景気ウォッチャーの現状が+0.5になった上、先行きも+0.4になっており、希望が持てる展開になっている。

(図)


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 筆者が経済研究を深めたのは、社会人を経験してからなので、金利などのインセンティブが設備投資を動かすとする経済学はまったく信用していない。デフレ前から、そんな経営者は見たことがないからである。経営者が見ているのは、何を判断するにせよ、売上ばかりだ。カネを貸す銀行だって、売上が立つのかを気にかける。経済学的には合理性に欠ける行動かもしれないが、現実は、そういうものなのである。


(今日までの日経)
 企業成長「第2の死の谷」増収率、米欧の半分。南海トラフ 巨大地震注意 初の臨時情報。日本、海外資産が稼ぎ頭に 所得収支19兆円黒字。オフィス供給、過剰感解消。

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