2月は消費が順調に伸び、前期12月のつまづきもあって、1-3月期の消費は年率2%を超えることになりそうだ。3月の結果が出る頃にば、「雇用逼迫でも、弱い消費」という認識も払拭されるのではないか。安倍政権はスキャンダルに見舞われているが、景気は明るさを増している。その大きな功績は、この4月からの消費増税の見送りだろう。3年かかって、消費は駆け込み前水準の回復まできた。国民生活の向上は、ようやくスタートラインにつく。
………
2月の商業動態の小売業は前月比+0.2となり、財の物価上昇は前月比-0.1であったから、日銀・消費活動指数+は、若干のプラスが見込まれる。1,2月平均は、12月が低かったこともあって、前期比+0.6程になろう。このまま3月も推移すれば、その他の需要項目も順調であることから、1-3月期のGDPは高まりそうである。本コラムは、前期から上ブレを唱えてきたが、一期遅れで実現される運びだ。
消費の堅調さは、2月の家計調査にも表れており、消費水準指数(除く住居等)が前月比+0.4となった。そのため、内閣府・消費総合指数も若干のプラスとなり、1,2月平均の前期比は、日銀指数を上回ると考えられる。なお、2月の家計調査は、低めで推移していた勤労者世帯の消費性向がいきなり前月比+4.4となり、実質消費支出が+6.0にもなるなど、不安定さが見られることから、参照には注意がいる。
他方、消費を裏打ちする雇用については、失業率が遂に3%を割り、2月は2.8%まで低下したものの、これ以外の指標は、今一つである。就業者数は前月比-21万人、雇用者数は-11万人だった。新規求人倍率は、「除くパート」が前月比-0.02の1.81倍、パートが-0.10の2.66倍になり、いずれも前月に続く低下となった。ただし、新規求人の前年比増加数が落ちているわけではなく、中でも「除くパート」の建設業や製造業が増えている。
(図)
………
2月の鉱工業指数は、生産が前月比+2.0と大きく伸び、前月の低迷を覆す内容だった。1,2月の平均も前期比+1.6で十分すぎるほどである。背景には、世界経済の拡大に伴い、輸出増が続いていることがある。また、出荷は概ね横ばいにとどまる中、注目すべきは、在庫の積み増しがあったことだ。2四半期連続で在庫減がGDPを低下させてきたが、1-3月期には、そうした影響はなさそうだ。
設備投資を占う、資本財(除く輸送機械)の出荷は、1,2月平均が前期比-1.6であったが、前期が+3.6もあったことを踏まえれば、まずまずである。また、建設財の出荷は、同じく+0.3であった。前期の+2.2を受けて、今期がプラスであれば、満足すべき数字だろう。全産業活動指数で分かるように、1月に公共が底入れし、住宅も踏みとどまっていることから、建設需要が1-3月期のGDPの足を引っ張る心配はないと見られる。
外需については、日銀・実質輸出入を見ると、輸出は前期並みの伸びを保ち、輸入増は、これを下回っており、プラス寄与が期待できる。また、物価は、原油高と円安の影響はあっても、2月全国、3月東京ともに、総合の季調値は低下している。結局、以上のような状況からすれば、3月の経済指標の結果にもよるとは言え、1-3月期の成長率は2%を超える高いものになっておかしくない情勢にある。
………
消費が年率2%増の勢いを保てば、民間消費は、4-6月期には消費増税の駆け込み前水準を回復するところまで行く。つまり、3年かかって、改めて出発点に立つのである。これでは、いかに「雇用は回復した」と宣伝されても、国民生活はまったく豊かになっていないのだから、不満が燻るのは道理だろう。主婦や高齢者がより多く働くことで、ようやく生活水準を維持しているというのが実感に近い。
しかも、民間消費は、住宅投資に伴う帰属家賃の増加でかさ上げされており、これを除くと、3~4兆円も少なくなる。もし、計画どおり4月から消費増税を行っていたとすれば、ここから更に4.5兆円も抜いていたことになる。「国民を永久に豊かにしない」という意思でもあるのかと、そら恐ろしくなる。財政再建をするにしても、最高益を記録する企業部門は減税し、家計部門は徹底的に圧迫するというのは、いかなる経済思想なのだろう。
消費増税の見送りは、「リーマン・ショック並みの危機にある」という首をひねるような理屈づけだった。しかし、消費の実態からは、どんな政権であっても、常識的感覚があれば、取り得ない選択である。他方、公的年金まで含めれば、一般政府の収支は、2019年の消費増税前に黒字化する勢いだ。もっとも、「財政再建は日本の生命線」を信条とし、「貯蓄が余れば、投資は増える」を無自覚に前提とする人には、何を言ってもの感はある。
(今日までの日経)
認可保育施設・一次募集3割落選。雇用逼迫 成長の壁 失業率22年ぶり低水準、弱い個人消費。米物価指数2.1%上昇 2月、FRBの目標越え。
………
2月の商業動態の小売業は前月比+0.2となり、財の物価上昇は前月比-0.1であったから、日銀・消費活動指数+は、若干のプラスが見込まれる。1,2月平均は、12月が低かったこともあって、前期比+0.6程になろう。このまま3月も推移すれば、その他の需要項目も順調であることから、1-3月期のGDPは高まりそうである。本コラムは、前期から上ブレを唱えてきたが、一期遅れで実現される運びだ。
消費の堅調さは、2月の家計調査にも表れており、消費水準指数(除く住居等)が前月比+0.4となった。そのため、内閣府・消費総合指数も若干のプラスとなり、1,2月平均の前期比は、日銀指数を上回ると考えられる。なお、2月の家計調査は、低めで推移していた勤労者世帯の消費性向がいきなり前月比+4.4となり、実質消費支出が+6.0にもなるなど、不安定さが見られることから、参照には注意がいる。
他方、消費を裏打ちする雇用については、失業率が遂に3%を割り、2月は2.8%まで低下したものの、これ以外の指標は、今一つである。就業者数は前月比-21万人、雇用者数は-11万人だった。新規求人倍率は、「除くパート」が前月比-0.02の1.81倍、パートが-0.10の2.66倍になり、いずれも前月に続く低下となった。ただし、新規求人の前年比増加数が落ちているわけではなく、中でも「除くパート」の建設業や製造業が増えている。
(図)
………
2月の鉱工業指数は、生産が前月比+2.0と大きく伸び、前月の低迷を覆す内容だった。1,2月の平均も前期比+1.6で十分すぎるほどである。背景には、世界経済の拡大に伴い、輸出増が続いていることがある。また、出荷は概ね横ばいにとどまる中、注目すべきは、在庫の積み増しがあったことだ。2四半期連続で在庫減がGDPを低下させてきたが、1-3月期には、そうした影響はなさそうだ。
設備投資を占う、資本財(除く輸送機械)の出荷は、1,2月平均が前期比-1.6であったが、前期が+3.6もあったことを踏まえれば、まずまずである。また、建設財の出荷は、同じく+0.3であった。前期の+2.2を受けて、今期がプラスであれば、満足すべき数字だろう。全産業活動指数で分かるように、1月に公共が底入れし、住宅も踏みとどまっていることから、建設需要が1-3月期のGDPの足を引っ張る心配はないと見られる。
外需については、日銀・実質輸出入を見ると、輸出は前期並みの伸びを保ち、輸入増は、これを下回っており、プラス寄与が期待できる。また、物価は、原油高と円安の影響はあっても、2月全国、3月東京ともに、総合の季調値は低下している。結局、以上のような状況からすれば、3月の経済指標の結果にもよるとは言え、1-3月期の成長率は2%を超える高いものになっておかしくない情勢にある。
………
消費が年率2%増の勢いを保てば、民間消費は、4-6月期には消費増税の駆け込み前水準を回復するところまで行く。つまり、3年かかって、改めて出発点に立つのである。これでは、いかに「雇用は回復した」と宣伝されても、国民生活はまったく豊かになっていないのだから、不満が燻るのは道理だろう。主婦や高齢者がより多く働くことで、ようやく生活水準を維持しているというのが実感に近い。
しかも、民間消費は、住宅投資に伴う帰属家賃の増加でかさ上げされており、これを除くと、3~4兆円も少なくなる。もし、計画どおり4月から消費増税を行っていたとすれば、ここから更に4.5兆円も抜いていたことになる。「国民を永久に豊かにしない」という意思でもあるのかと、そら恐ろしくなる。財政再建をするにしても、最高益を記録する企業部門は減税し、家計部門は徹底的に圧迫するというのは、いかなる経済思想なのだろう。
消費増税の見送りは、「リーマン・ショック並みの危機にある」という首をひねるような理屈づけだった。しかし、消費の実態からは、どんな政権であっても、常識的感覚があれば、取り得ない選択である。他方、公的年金まで含めれば、一般政府の収支は、2019年の消費増税前に黒字化する勢いだ。もっとも、「財政再建は日本の生命線」を信条とし、「貯蓄が余れば、投資は増える」を無自覚に前提とする人には、何を言ってもの感はある。
(今日までの日経)
認可保育施設・一次募集3割落選。雇用逼迫 成長の壁 失業率22年ぶり低水準、弱い個人消費。米物価指数2.1%上昇 2月、FRBの目標越え。
他の総理だったら再増税強行で、いつもの負けパターンに入っていた可能性が高いでしょうね。石破氏などは「消費税率を10%に上げる日は早ければ早いほどいい」などと恐ろしい発言を参院選直後にしています。増税再延期に面従腹背だったのは明らかです。
民進党は論外ですが自民も現在力を持っている者でコテコテの財政再建派じゃないのは安倍総理、菅官房長官、二階幹事長くらいしかいません。今の回復は非常に危ういバランスの下で成り立っているのかもしれません。