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■科学技術ニュース■東北大学と名古屋大学、光を用いた「小澤の不等式」の新たな検証実験に成功

2013-07-25 10:10:44 |    物理

 東北大学電気通信研究所・枝松圭一教授,名古屋大学大学院情報科学研究科・小澤正直教授らの研究グループは,量子力学の基本原理のひとつである「測定誤差と擾乱に関する不確定性関係」として知られるハイゼンベルクの関係式が破れており,小澤教授が発見した新しい関係式が成立していることを,光を用いた実験で明瞭に検証することに成功した。

 量子力学では,二つの物理量(例えば位置と運動量)の測定に関して,一方の物理量の測定誤差と,その測定によって他方の物理量が乱される量(擾乱)との間には,一般に,一方を小さく
しようとすれば他方を犠牲にしなければならないトレードオフの関係があるとされている。

 この関係は,1927 年にハイゼンベルクによって提唱された「ハイゼンベルクの不等式」と呼ばれる関係式によって表現され,「測定誤差と擾乱に関する不確定性関係」として知られてきた。従
来はこの関係式が一般的に成立するものと思われてきたが,小澤は,ハイゼンベルクの不等式は無条件に成立するものではないこと,運動量を乱さずに位置の測定が可能な特別な場合があることを理論的に明らかにし,2003 年にハイゼンベルクの不等式に代わって常に成立する新たな
関係式(小澤の不等式)を提唱した。

 同研究グループは,光の粒子である光子の偏光について,測定の強さを連続的に変化させなが
ら誤差と擾乱を計測する実験系を準備し,縦横方向の偏光の測定誤差と,その測定によって斜め45 度方向の偏光が受ける擾乱の関係を実験的に計測した。

 そして,それらの間の関係を調べた結果,ハイゼンベルクの不等式が明瞭に破れ,小澤の不等式が成立していることが検証されました。

 ハイゼンベルクの不等式の破れと小澤の不等式の検証については,昨年来,中性子や光を用いた実験で報告されているが,測定方法が限られていたことや,誤差や擾乱の計測精度が低い等の問題があった。

 今回の実験結果は,測定の強さを変化させる一般的な測定においてもハイゼンベルクの不等式が破れ,小澤の不等式が成立していることを明瞭に検証したもので,「測定誤差と擾乱に関する不確定性関係」という量子力学における基本原理の見直しとなることはもちろん,従来のハイゼンベルクの不等式の限界を超えた超精密測定技術や普遍的な誤差・擾乱関係に基づく新たな量子情報通信技術の開発が期待される。

 また,我が国の研究者が発見した基本的かつ重要な理論提案が我が国において実験的に検証されたという点においても,我が国の科学技術史上特筆すべき成果と考えられる。

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