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「容疑者Xの献身」

 日曜日、WOWOWで「容疑者Xの献身」を見た。福山雅治主演のこの映画は、昨秋公開され、塾生の何人かも見て、「面白かった」と言っていたので、日曜の朝に新聞で放送を知って、急遽見ることにした。フジTVの月曜9時から放送されたドラマ「ガリレオ」の劇場版だそうだが、私はそのドラマを一度も見たことがなかったので、何の先入観もなく見られた。ただ、娘の大学でロケが行われ、「柴崎コウにはオーラが出ていた」とロケを見学した友人の話を娘がしていたのを、映画が始まってすぐに思い出した。
 柴崎コウといえば、その目力の強さにはいつも驚くが、この映画の中ではそれが余り感じられなかったのはどうしてだろう。そう言えば、主役の福山雅治からもインパクトが感じられなかった気がした。もっと華のある存在だと思っていただけにちょっと意外な気がした・・。
 この映画のあらすじは以下の通り。

 花岡靖子(松雪泰子)は娘・美里とアパートで二人で暮らしていた。そのアパートへ靖子の元夫、富樫慎二が彼女の居所を突き止め訪ねてきた。どこに引っ越しても疫病神のように現れ、暴力を振るう富樫を靖子と美里は大喧嘩の末、殺してしまう。今後の成り行きを想像し呆然とする母子に救いの手を差し伸べたのは、隣人の天才数学者・石神(堤真一)だった。彼は自らの論理的思考によって二人に指示を出す。
 そして3月11日、旧江戸川で死体が発見される。警察は遺体を富樫と断定、花岡母子のアリバイを聞いて目をつけるが、捜査が進むにつれ、あと1歩といったところでことごとくズレが生ずる事に気づく。困り果てた草薙刑事(北村一輝)は、友人の天才物理学者・湯川(福山)に相談を持ちかける。
 すると、驚いたことに石神と湯川は大学時代の友人だった。彼は当初この事件に傍観を通していたが、やがて石神が犯行に絡んでいることを知り、独自に解明に乗り出していく。

 しかし、こんなありきたりな事件の解決にわざわざ「天才物理学者」に相談を持ちかける必要があるだろうか。柴崎コウや北村一輝が扮する刑事たちが余りに無能に見えてしまう。かといって、福山の湯川の推理も意表をつくものではなく、「ああ、そうなのか・・」「やっぱりね」といった程度の感想しかもてないのだから、謎解きを楽しみにしていたなら拍子抜けしてしまう。これでは、「わざわざ映画にしなくても・・」といみじくも妻が言い放った評が、この映画にもっともふさわしいかもしれない。
 だが、容疑者役の堤真一はなかなかの異彩を放っていた。私が彼に抱いていた颯爽としたイメージ(例えば少し前に見た「クライマーズハイ」の新聞記者役)とはかけ離れた、風采のまったく上がらぬ、まったく冴えない中年数学教師を巧みに演じている。ある分野には頭抜けた能力を持ちながらも、実生活ではその能力を認められず、鬱屈した生活を送っている男の、満たされない心の奥底を垣間見せてくれた彼の演技は、賞賛に値する。彼の好演によって福山が霞んで見えてしまったのは仕方のないことかもしれない。
 

 人気TVドラマを映画化した作品が昨今は多く見受けられるが、ドラマの人気に便乗した映画作りは、どうしても安易な気がしてしまう。と言っても、「ルーキーズ」や「ごくせん」はTVドラマを少しばかり見ただけだし、そのまったく逆に「花より男子」やこの「ガリレオ」はTVドラマは見たことがない、さらに「HERO」に至っては映画もTVドラマも見ていないから、そう偉そうなことが言える立場ではないのだが・・。
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