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金メダル

 「どうだった?」
1週間ぶりに塾にやって来たK君にたずねた。
 「うん、優勝した」
 「優勝?ほんとう?すごいじゃん!!!! で、どの種目?」
 「100×4リレー」
 「そうか、そうか、すごいことだ。やったな!!」
高校3年のK君は陸上部に所属していて、今月初めに行われた高校総体に出場して見事優勝したという。200m、400mにも出場したはずだが、リレーで栄冠を勝ち取ったようだ。東海大会は第一走者の自分がこけてしまい、3位に甘んじたものの、ぎりぎり全国大会への出場切符を手にした経緯があったため、出発前はあまりはかばかしいことは言っていなかった。なのでまさか優勝するなんて予想もしていなかっただけに私は嬉しくてたまらず、試合の模様をあれこれ聞いてみた。
 「決勝はフライングしてもいいやと思って、かなり早めにスタートをきったのに止められなかったから、ラッキーと思いながら走ったら一番でバトンを渡せた。後はみんなががんばってくれたので優勝できた。運がよかったと思う」
淡々と振り返る様子には、なんの衒いもない。
 彼は小6の始めから私の塾に通い始め、志望した私立中に合格し、その後ずっと塾に通い続け、今年でもう7年になる。中学ではラグビー部、高校になって陸上部に変って、かなりハードな練習を積み重ねてきたようだが、その間、時々欠席することはあるものの、部活と勉強を両立させてきた生徒だ。そんな彼が日ごろの成果を存分に発揮して日本一になったのだから、私は嬉しくて仕方がない。
 「日本一なんて学校始まって以来じゃない?」
 「そうかなあ・・。水泳も強いし、テニスも強いから、初めてってことはないと思うけど・・」
 「なんにしてもすごいよなあ、日本一なんだから」
 「あんまり実感が湧かないんだけど・・」
 「何言ってるんだ、日本一だぞ。どんな分野でも日本一なんてなれるものじゃない。もっと自慢に思えよ」
 何だか私のほうが興奮してしまい、舞い上がってしまった。
 「メダルはもらえたの?」
 「うん、金メダル」
 「おお!!金メダルか。すごいなあ、見せてくれよ」
 「分かった、今度もって来る」
 「頼むよ」
そして・・、

 

 
本当にもってきてくれた。たぶん左側が表で、右側が裏。箱から出してくれたのを写真にとってみた。はい、といって私に手渡してくれたから、
 「いいの?」
と遠慮するそぶりは見せたものの、すぐに受け取ってみた。意外に重い!!ズシリとした手ごたえがあり、優勝の重みが伝わって来る。あまりに嬉しくて、ほかの塾生たち全員に見せて回ったら、皆一様に「ほうっ」とため息をつく。高校総体優勝の重みは、現役高校生のほうが実感しやすいのだろう、改めて快挙だと実感した。
 「首から掛けてみた?」
 「表彰式の時に掛けた」
私も掛けていいか?と思わず聞きたくなったが、ぐっと我慢した。
 この後、まだ全日本選手権にも出場するそうだ。さすがにそこでの優勝は厳しいようだが、最後まで諦めずにがんばって欲しい。その後は・・、遅ればせながら受験生として大学合格に向かってしっかり勉強していかねばならない!!

 しかし、今は心から「優勝おめでとう!!」
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