蚊帳の外
政治の混乱を生じさせた裏金問題。安倍派にとっては致命的となった。安倍シンパの評論家氏が、安倍氏は自派の裏金問題を事前に指摘して、改善要求を行っているのを身近に見聞したとの証言を行ったが、結局全く聞く耳など持たぬ連中であったようで、安倍氏に対しても安倍派にとっても何の救済証言とはならなかった。安倍氏が銃弾に倒れてからも、裏金と言えば「安倍派、安倍派」と主犯は安倍氏と言わんばかりであった。権力に阿るマスコミも亡くなった人にすでに権力がないことは知っている。安倍氏自身も安倍シンパ氏もすでに信用はなかったのだ。本を売るための一部の雑誌社と、キングメーカーを目指す前総理や右翼を自認する高市早苗経済安全保障担当大臣くらいが支持する程度である。
裏金問題では多くの議員の名前が挙がる中、今回の総裁選に直接影響が出たのは、前経済産業大臣の西村康稔氏と参院幹事長だった世耕弘成氏ではなかろうか。西村氏は1年間の党員資格停止、世耕氏は離党勧告を受け離党した。世耕氏は、安倍氏の腰巾着の時は羽振りが良かったが、所詮実力を伴ったものではなかった。岸田総理を甘く見て、国会で批判したのは失敗だった。参院から衆院への鞍替えにも二階氏地盤の障害がある。
岸田政権で官房長官を務めた松野博一議員も蚊帳の外に追いやられた一人。安倍政権で長く官房長官を務めた菅氏が、総理大臣にまで出世した例を引くまでもなく、官房長官ポストは総理への一里塚。小泉内閣の福田官房長官なども辿った出世街道。官房機密費がどう使われているのか公表の義務もないようで、内閣とまさに機密を共有できる役職である。
本来は中曽根総理を支えた角栄派閥ではあったが、後藤田正晴氏くらいの総理さえ凌ぐ人物(佐々淳行氏著(名著)「わが上司後藤田正晴」の受け売りである)が、官房長官に相応しいのだが、今はそんな人物は居りはしない。それとリーダーは、身近に優れた側近が必要である。池田勇人総理の時に居られた伊藤昌哉氏など印象深い。岸田さんは良き側近にも恵まれなかった。というより自身の人物観が小さい。人間の器は、登用する人物に表れる。企業でもそうだ。どんな組織でもリーダーとリーダーが選ぶ側近でその組織の命運が分かれる。自派閥の小野寺五典氏を官房長官に据えて、その意見に耳を貸しておれば、政権には違った展開があったのではないか。上川外務大臣もその登用が遅れた。
今回の総裁選で蚊帳の外に置かれた連中が、次回総裁選までに挽回できるか。汚名を返上し、次の衆院選を勝ち抜き、総裁候補にまでなるのは容易ではないだろう。