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現場力について考える第3回

2015年03月07日 | ブログ
現場力

 第2回に書いた通り、現場力とはオペレーションによるパフォーマンスの力量であるが、それには二つの性格が異なる技能があるという。ひとつは、ものづくりの職人技に見られるような、緻密な加工などを実現する身体的制御型技能であり、もうひとつは、変化する環境変化に気付き、条件に即応した行動が取れる問題解決型技能である*1)。

 同じように加工を行っていても、材質の変化などに追随して作業の微妙な修正が必要なこともある。また、毎日の現場はいつも通りではないかも知れない。また従来通りやっていたのでは効率が悪く、時代に合わなくなっているかもしれない。日々改善が必要だ。そのように、常に問題を発見し解決する技能は、普遍的にどのような現場にも求められるのだ。決められたことだけ決められたように確実に行うことも当然に大切だけれど、現場力とはもう少し踏み込んだ概念のように思う。

 改善のためには、問題を発見する、問題を提起する、そして解決する。この三つの能力が必要であるが、その能力を身につける第一歩は担当者の当事者意識であり、自分の仕事に誇りと熱意がなくてはならない。どんな単純と思える作業にも工夫の余地はある。それを見つけるためには常に自分の頭で考える習慣を身につけることが必要だ。

 たとえ小さい組織であってもそのリーダーは、組織の最適化のためのマネージメントを行う中で、部下の自身で考える行動を支援し、認め、評価する姿勢が必要である。評価することで改善は継続され、そのような担当者を増やすことで、個々のスキルを組織のスキルに進化させることができる。良い組織文化が醸成されてゆく。すなわち、現場力は個人の技能を組織力に高めること、そしてその継続が必要なのである。蓄積された現場力が、競争力の源泉となるのである。

 私の若かりし頃の研究室の話は、本ブログ初回(2008年4月~5月)の「プロジェクトZ」に記したが、研究者、研究補助者の隔たりなく、職場全体が考える集団になった時、員数で10倍規模の当時の世界ブランド企業の研究室と同等以上の成果を納めることが出来た。ひとつの現場力の成果ではなかったか。

 当研究室では、大学を出た研究者と高校卒の研究補助者(実験者)の2階層で仕事を行っていたが、ヨーロッパのブランド企業は研究者、実験者、実験監視者、終了後の器具洗浄者など幾層にも分担してひとつの実験を行うシステムとなっていたようだ。メリットはある。スクリーニング(ふるいわけ)実験では、威力を発揮していた。しかし、伝統的な階層社会では、下層の実験者が、われわれのように上位者の領分を侵すことはなかったであろう。

 仕事の領分が明確であることは合理的ではあるが、諸々の変化への気付き(生の情報)が、それぞれの階層内に留まる。そこに現場力の差が出る。ただ、担当者に必要な権限を委ねることは必要であるが、その譲り方は難しい。下位者の勢いに押されて放任になっては組織は成り立たない。一時の成果を嵩に、下位者に越権行為があっては論外である。分を弁えた上で協働することで、上下の垣根を超えて現場力は発揮されるのである。



*1) 森谷正規「現場の力」2003年7月、毎日新聞社刊。福山弘著「量産工場の技能論」において指摘されているとのこと。
本稿は、遠藤功著、「現場力を鍛える」2008年8月第28刷、東洋経済新報社刊を一部参考にしています。
コメント
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