中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

現場力について考える第8回

2015年03月22日 | ブログ
私の改善提案

 企業における改善提案活動は相当古くからある。私の入社時(昭和41年)に、石油化学の会社でもすでにやっていた。ただ、その後小集団活動と併行して行われたように、何でもいいからドンドン出しましょう的なやり方ではなく、業務としてのフォーマルな感じの活動だった。それなりの論拠と実効が伴うことを要求されていた。従って、配属された三交代の現場ではあまり提出する人は居なかったように思う。上司からの積極的な奨励もなかった。

 私が最初に改善提案に挑戦したのは、入社2年目ではなかったかと思う。エチレングリコールプラントでは、エチレングリコール*4)を主製品とし、副製品としてジエチレングリコールとトリエチレングリコールを生産出荷していたが、トリエチレングリコールは生成割合が少ないため、原料のジエチレングリコール精製残渣をタンクに貯め置き、バッチ(回分式)運転で精製していた。この装置は原料を加熱するドラムと精製(蒸留)塔が分離されており、運転終了後、蒸留塔である程度きれいになったトリエチレングリコール残液が加熱用ドラムに還流して捨てられることになっていた。私は、加熱用ドラムと精製塔の間に手動バルブがあることに目を付け、運転終了時、このバルブを閉めて、次のバッチ収率を上げることを提案したのである。

 不採用だった。今考えると、製品品質は蒸留塔トップで管理されており、この留分が規格を外れた時点でバッチ終了とするため蒸留塔に残った残液はすべて規格外である。最初の改善提案は失敗だったが、当時から三交代勤務の中でも、オペレーションについていろいろ自身の頭で考える習慣があった。またプラントでは、ポンプの修理などメンテナンスは専門の下請け作業員の仕事であったが、耐圧ホースのコネクションに始まり、ゲートバルブのパッキングの入れ替え、タンク内に入ってのヘドロの清掃など、自分達でできることは番方責任者(フォアマン)の指示で行っていた。現場に張り付いて汚れ仕事までをやった経験は、職種は異なってもものづくり現場を見る目は明らかに育んでくれたと思う。

 改善提案に挑戦すること。すなわち自分の頭で仕事を考える習慣や、下請け任せにせず、できる作業を自らやることは、個々担当者の現場力を高める。当時はまだ、TQCとか明確な指針が現場にあったわけではないと思うが、諸先輩方は優秀であり、経験からの暗黙知をそれぞれが形式知に変えて後輩を指導していた。豊かな現場力が育まれていた。




*4)ポリエステル繊維、ポリエステル(PET)樹脂原料。車のラジエーターの不凍液に使用される。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする