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この頃気になることなど第8回

2012年06月22日 | Weblog
続、三文評論家の戯言

 政治家は批判されるが、評論家はほとんど批判されない。だからいい加減な発言がそのまま世間に流布されて一般の人々はそんなものかと思ってしまう。

 ところで、「亡国の“戦犯”徹底追及」であるが、戦犯に小泉氏を上げなかったジャーナリストの船橋洋一氏は、国益を守ることをリーダーの使命として、海部氏と鳩山氏を戦犯に上げている。しかし、湾岸戦争での身勝手な一国平和主義で海部氏を批判しているかと思えば、民主党ブレーンの松本氏の米国のイラク戦争に対する小泉氏への批判に同調して、『大義なきイラク戦争でサマワまで、陸上自衛隊を派遣したのはまずかった。米国に対して貢献の仕方をもっと工夫するべきだった』*6)と述べている。どうすればいいの。

 さらに船橋氏は、アジア外交に影響したと小泉氏の靖国参拝を批判しているけれど、アジアの多くの国々の中で靖国を問題にしているのは、韓国と中国だけで、いずれも為にする言いがかりでしかありはしない。一国の総理が年に一度、国を守るためにその命を落とした同胞の慰霊に赴くことに誰に遠慮が要るわけがない。総理の靖国参拝を批判する知識人など、多少一般人より頭が良いかもしれないが、人間としての根幹の部分が腐っているとしか思えない。

 東京大学の御厨貴教授は、『平成の日本政治が国民不信を招いたのは、誰か個人の政治家に原因があるのではなく、政権の引き継ぎに大きな問題があった』としているけれど、主題に対する答えとしてはピントがボケている。敢えて暈かした感もある。小泉氏から安倍氏への禅譲に問題があったとするなら、戦犯は小泉氏か安倍氏を上げればいい。もっとも総理を選ぶシステムの欠陥を言うなら、橋下氏の船中八策ではないが、首相公選制など制度に言及すべきだ。

 御厨氏は、郵政選挙の際に参議院で否決された法案で、衆議院を解散するのは掟破りで前代未聞と批判しているけれど、この場合の「掟」とはせいぜい政界の暗黙の掟のことで、そんなものは国会議員の勝手で国民の幸せを担保するものではない。参議院で否決された法案も、衆議院の2/3以上の賛成で成立するものもあり、それを目指して解散することも当然有り得る手段だ。

前代未聞だからいけないというのも、いかにも因習を重んじる学者の悪癖で、そんなことだから進歩がない。外国の成功事例を持ってきたものならいいが、後輩の個性的で斬新な意見を、これまでどれだけ封じてきたかと思える発言である。そのような人物が最高学府しかも東京大学の教授をやっているから、折角優秀な学生が入学しても出て行く頃には並みの人間になるのではないか。

 後藤氏は、『自民党が長年培ってきた、派閥という政治家の人材育成システムを壊し、郵政選挙では小泉チルドレンという政治家として何らふるいのかかっていない議員を大量に生み出した』。『それまでは非常に厳しかった政治家への門戸を容易に開いた』などと述べているが、小泉氏以前のマスコミの徹底した派閥政治批判はどこに消えたのか。また従前より、さらに質の悪いと思われるタレント議員が大量に跋扈していたことをどのように説明されるのか。

 小沢チルドレンと小泉チルドレンを同レベルで論じているのも、対談者の質が疑われる。郵政選挙での自民党比例候補は、党として複数回の面接及び論文審査の上で選抜したと聞いている。小泉氏の私的な登用ではない。一方小沢チルドレンは小沢氏の政治団体丸抱えで、秘書を付けて選挙に勝つための現地指導を徹底したものである。角栄氏の負の遺産である、金権政治を選挙に活用実践したものだ。まさに味噌も糞もである。

 保坂氏の『敵を作り切り捨てる手法。国会や党内で議論を重ね、政策を成就させてゆくという道を閉ざしてしまった責任は重い』という小泉批判も的外れだ。何も敵を小泉氏が勝手に作ったわけでもなかろうし、郵政民営化論議は党内や国会で尽くされたと聞いている。

 現在の消費税増税等での民主党内のゴタゴタでも分かる通り、郵政民営化も党内に族議員を中心に既得権益を守るための反対が激しかった。決められなければ首相にリーダーシップが無いと叩き、決めると「議論を十分尽くさなかった」とくる。三文評論家は批判のための批判に終始している。





*6)日本の陸上自衛隊は戦争に行ったのではなく、道路や橋など現地住民の生活復旧に貢献した。結果一人の死者も出すことはなく、誰も殺さず、70%以上の現地の人々から好感を持って評価された。政権を賭けて同盟国への義理も果たした。

本稿は、文藝春秋7月号の目玉企画「“徹底追及”平成政治24年亡国の“戦犯”」における小泉元首相戦犯説に対する無責任な評論家諸氏への反論です。


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