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続、品質保証再考其の3

2010年09月07日 | Weblog
物流

 工場で優れた製品を作り出す。農場で新鮮な野菜や果物や牛乳を産出し、漁師さんが新鮮な魚を水揚げする。しかしそれらを手際よく全国に届けるシステムがなければ、活きのいい商品として消費者に届けることができず、生産者に多くの利益を還元させることができない。物を動かす活動である物流は、江戸時代の北前船を持ち出すまでもなく、昔から商売の大きな要であった。

 ポス・システム ( POS system:point of sales system:販売時点情報管理システム)を活用したコンビニ店への多頻度小口配送がある意味問題になったりするけれど、物流がロジスティクスと呼ばれるようになり、企業戦略に取り込まれるようになったことで、物流システムは大きく変容した。ITの急速な発達が支えたことは言うまでもない。

 これら物流を「ガイドブック」によって品質保証の面から見つめると、その重点活動は、①顧客が求める量・納期の保証、②物流システムでの品質劣化の防止、③品質トラブルへの対応とある。また、物流概念を品質保証の観点から見た最大の特徴を、その目的が企業にとっての価値最大化ではなく、あくまで顧客にとっての価値最大化にあるとしている。例えば物流システムが経営システム統合パッケージに組み込まれている場合に、その最適化基準が自社のパフォーマンス最大化におかれ、顧客に対する保証という観点ではかなり偏ったシステムになる懸念も挙げ、顧客視点に立ったカスタマイズを推奨している。

 また、物流プロセスは素材・材料の購入から製品にいたるまでのモノの流れを扱う社内物流(インバウンド物流)と、作られた製品が流通プロセスを経て顧客に届けられるまでのモノの流れを扱う社外物流(アウトバウンド物流)に大きく分かれること。さらに近年、環境問題・経年劣化問題など製品ライフを通じた品質保証のあり方がクローズアップしてきたことを背景に、製品が顧客に届けられるまでを扱う物流(動脈経路の物流)だけでなく、修理・返品といった製品還流プロセス、さらには製品の使用目的が終了したのちの製品回収・廃棄までを含めた物流(静脈経路の物流)も重要視されるようになってきたことなど、物流の視点が多岐に亘ることを知らしめている。

 物流の使命である①「量と納期の保証」に関して、需要変動と生産の平準化と在庫の適正化を勘案した総合的な管理が必要として、情報の一元化を求めている。また②「物流システムでの品質劣化防止」のためには、輸送経路・輸送手段、荷扱い、保管状態に関する事前調査が大切であるとし、③「品質トラブルへの対応」としては、製品のトレーサビリティーの重要性を挙げている。トレーサビリティーの確保がインバウンド物流だけでなく、アウトバウンド物流において重要であり、近年バーコードやQRコードさらにICチップなどこの分野でのITの活用は著しい。しかし、製品の廃棄までの静脈経路の物流までを管理するためには、顧客とのつながりや関係性を強化することが重要であり、CRM(Customer Relationship Management)の考え方も広まっているとしている。



本稿は (社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブック”を参考にし、途中それを「ガイドブック」と略称しています
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