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続、品質保証再考其の8

2010年09月22日 | Weblog
サービス設計

 ガイドブック第Ⅱ部「品質保証のプロセス」第12章は「サービス設計」。この章と次章「サービス提供」は、サービス業での品質保証を考えることになる。しかし、サービス研究の先駆者T.レビットは、40年も前に「本来、サービス業というものは存在しない・・・すべての事業はサービス業である。サービスの要素が他の産業より大きいか小さいかという程度である。サービスを必要としない人など存在しない」と言ったとある通り、「サービス設計」も「サービス提供」もすべての事業に十分関連のあるプロセスといえる。

 それではサービスとはいかなるものか。ガイドブックはサービスを「役務の代行」と定義し、その特徴を(1)触れることができない、(2)時系列で提供される、(3)生産と提供・消費が同時・同一空間でなされる、としている。

 また、サービスを3つの視点で分類している。まず、役務の内容によって16のカテゴリーに分類する。すなわち、①専門技術、②専門知識、③労働力、④物の提供、⑤情報、⑥場所、⑦信用、⑧娯楽、⑨安全、⑩精神的・心理的満足、⑪便益、⑫健康・美・清潔、⑬物の移動、⑭人の移動、⑮時間の短縮、⑯公的事業。次に、どのように提供されるかという観点からの分類では、「人対物サービス」、「人対人サービス」および「物対人サービス」をあげ、さらに時系列の観点から、「事前サービス」、「事中サービス」、「事後サービス」に分類している。

 「人対物サービス」とは、人が物に対して提供するサービスで、設備の保守、自動販売機への飲み物供給およびホテルにおけるベットメーキングなどがあたる。「人対人サービス」は、店頭での接客サービスであり、美容院や理容院の調髪、バーでの供応や医師の往診・施術もこれにあたる。「物対人サービス」とは、乗り物、ホテルの客室などや自動販売機による顧客への商品の提供もこれにあたる。

 サービス業において、元々有形財を介さずにサービス提供が行われることは稀であるが、自動販売機に代表されるように、本来人対人サービスであったものが、自動化で物対人に切り替わったことも多い。インターネット販売なども際たるものかもしれない。自動化による物対人サービスでは、物が確実に機能するようにメンテナンスすることが前提であるが、正確で迅速である。しかし、半面人同士のコミュニケーションがない味気なさもあり、顧客満足のためには、物対人と人対人のすみ分けを十分考慮する必要がある。

 「事前サービス」とは、前述の人対物サービスに例示した設備の保守に代表されるように、製品の場合と同様な考え方で品質保証が可能であり、企画・設計は容易である。しかし、航空機や遊園地の乗り物など、絶対安全が要求される業種においては、安全を保証する設計こそ最重要であり、見落としは許されない。

 「事中サービス」は、顧客が当該企業にアクセスした時点から提供が開始され、人対物、人対人および物対人の組み合わせによって提供される。顧客が当該企業から離れれば、事中サービスは終了するため、この間のサービスアイテムを取り出し、それぞれの品質設計を十分吟味して行うことが重要である。販売員などのトレーニングにはビジュアル・マニュアルを用いて、VTRなどで確認修正する方法もある。十分なトレーニングが必要で、免許・資格の求められるサービスもある。

 「事後サービス」はアフターサービスの範疇といえる。サンクス・レターやアンケート依頼などによって、リピーターの確保やサービスの改善に活かす事後サービス設計も必要となる。

 ボトルネックを排して、均質で良質なサービスを提供するために、製造業のQC工程表に倣い、それぞれの企業が自社のサービス提供をあまねく工程表に表記し、誰が何をどのように対応するかを明文化しておくことである。それがすなわち「サービス設計」となるのである。



本稿は (社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブック”(「ガイドブック」と略称)第Ⅱ編第12章に基づいて編集しています。
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