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続、品質保証再考其の4

2010年09月10日 | Weblog
物流よもやま

 物流がロジスティクスと言われるようになり、企業でその重要性が認識されるようになって、いろいろな取り組みが成されている。ある家電量販店は物流会社と組んで、その効率化によって一躍業界トップの売上を誇るようになったとは、2003年当時当該物流会社の営業マンから直接聞いた。共同配送、物流センターの設置、流通情報システムの導入。物流本を持ち出すまでもなく、多くのキーワードが浮かぶ。大手企業の物流部門の子会社化やサードパーティ・ロジスティクス*3)なども進んだ時期があった。

 いずれも目的は物流の効率化、コストダウンであり、本体企業のスリム化もある。しかし、サードパーティにしても一時本社の購買部門の意向で、検討に付き合ったことがあったけれど、自社のコストダウンと請け負う会社の利潤の両方をひねり出すのは容易ではなく、私には困難に思えた。購買部門の強引な要求姿勢も災いして、ほどなく計画は頓挫した。私が検討に懐疑的であった理由は、それ以前診断士の勉強を始めた頃、資格の学校で知り合った年配受験生がサードパーティで所長をされており、その方の話から委託会社のメリットが少ないような印象を持っていたことにある。

 私が事業所の充填・物流の責任者をやった後半2006年頃からは、政府の法制化の対応準備のため、物流に係る環境負荷の調査が必要となった。主に製品出荷の物流量と配送先までの距離のデータを月毎に採取した。同じ時期モーダルシフトが叫ばれるようになった。すなわちトラック輸送を鉄道や船舶に代えて行こうという活動である。

 人の移動についても、列車は車に比べて格段にCO2排出量の少ないことが知られている。にも拘わらず、当時安倍政権時の参議院選挙で民主党は高速道路無料化を打ち出した。系列物流会社の部長さんは、高速道路が無料化されると助かるように話して喜んでいたけれど、モーダルシフトには全く反する政策で、現在の試験的運用でも多くの問題点が指摘されている。納期厳守が命の物流業務に大渋滞は命取りである。また政権奪取後、当時の首相は世界に環境負荷低減を高らかに公言したけれど、その真逆の政策を今でも進めようという、訳のわからない政権がこの国には存在する。

 毎年の物流会社との契約料金更改交渉は、気が重かったけれど一面なつかしい思い出である。購買部の意向を受けて、現行何年タリフ*4)の何%引き価格をさらに引き下げよ、というわけである。物流会社同士の競争がある間は、物流会社は一定の数量のある大手メーカーの意向を無視するわけにはいかない。大企業の横暴にもみえるが、それは、運送会社の輸送システムの改善を進めることにもつながっていた。

 いろんな物流トラブルも経験した。ウイング車の密閉不良で降雨による製品の水ぬれ、フレキシブルコンテナーのしばり不足。小口輸送の路線便では誤配送も結構あった。その度に運送会社と客先の間の連絡に奔走し、客先である小規模企業の生産計画に支障が出るとの苦情に、運送会社を督励して深夜に代替品を届けさせたりもした。プラスチックペレット用の紙袋は銘柄ごとに異なるわけではなく、表示を確認して届ける必要がある。アルファベットが付くか無いかだけの紛らわしい銘柄名もあったりで、ピッキング*5)や配送担当者にはしっかりした確認が求められた。

 物流で製品価値を失えば、製品に懸けたすべてのコスト、想いが消失する。関係者には物流業務の重要性を説いたものだ。




 *3)物流システムの設計・運営を担う第三主体のこと。第一の主体はメーカー。自身が物流全般を行う。第二の主体は物流会社。メーカーの物流部門の指示で、製品の保管(倉庫業)・から配送(輸送)という機能を担う。サードパーティは、メーカーの物流部門の機能から保管・配送までを一括して行う。保管・配送は一般の物流会社に委託することもある。
 *4) 運賃を算出する上で必要な運賃表データのこと。物流会社は事業開設にあたり、その提供価格を国に原価計算書と共に提出するか、国が計算した標準運賃表をもとに事業を行う。この「標準運賃表」に当るものがタリフと呼ばれれる。
 *5)注文や要求(出荷指示)に対してその品物を在庫から選び出すこと。
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