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続、品質保証再考其の9

2010年09月25日 | Weblog
サービス提供

 サービス提供は、「サービス設計の計画にもとづいて、確実にサービスを実施することが重要な役割となる」と、ガイドブックにあるけれど、サービス対象は人であるため、顧客個々の思惑、期待、状態に沿った臨機応変な対応が求められ、提供しながら設計を変更することもあり得る。

 また、ガイドブックは、サービス提供における品質保証の基本的な考え方として、「何をどう保証するかを明確にし、常にPDCAを回すこと。人に依存する要素が大きく、生産と消費が同時であり、無形で捉えにくいからこそ、有形で捉えやすくすること」の重要性を強調している。そのため、「①サービス提供の標準化、②プロセス管理(提供サービスの評価とアクション)、③トラブル予測と未然防止活動、④顧客満足、クレームによるサービス提供プロセスの改善、⑤人の育成」などを重点活動と位置付けている。ガイドブックではこれら重点活動の詳細を解説している。以下に要点を私見を交えて紹介したい。

 ガイドブックでは、サービス提供段階で具体的に品質保証を具現化する方法をプロセスの標準化と捉えている①。「生産工程と異なり、プロセスがはっきりしていないサービス業務では標準化は難しいが、すべての従業員が、すべての顧客に満足されるサービスを提供することをめざすのが、組織としての品質保証であり、短期非熟練労働者に依存する場合も多く、その品質を保証するためには標準化は必要不可欠である」としている。

 また、「標準にもとづいてサービスを提供する場合、従業員が自分の担当範囲内の仕事の手順とその方法を理解しているだけでは不十分で、自社の提供するサービスの全体像を理解することによって臨機応変な対応も可能になる」と述べているが、パートを受け持つ従業員に業務全体を理解させようとする辺りが日本で進化した品質管理で、我が国が品質で欧米を凌駕した一因ではないかと考える。全体像を捉えるために、業務フロー図による可視化があり、またその業務フロー図の作成の過程で、業務の重複が改善され、標準化の必要な部分も見えてくるものだ。

 ②のプロセス管理の項で、ガイドブックは、「サービス業務では、単に満足してもらうことだけをねらっていたのでは十分ではない。満足を超えた“感動”こそ、サービス業務にかかわるものがめざすべきものである」と述べている。そして、千葉県のあるゴルフ場(千葉夷隅ゴルフクラブ)で、従業員の好意が顧客に感動を与えた事例をあげ、その水平展開のため小集団活動(QCサークル活動)を活用して、顧客からの感動と感謝を継続していることを紹介している。

 品質とコストの相関において、経費削減のためにサービスを切り捨てる企業や公的機関も見られるが、サービスに心の占めるウェイトが高いなら、従業員の心がけで成せる部分も多く、必ずしもコストに跳ね返らない場合も多い。いかに従業員のやる気を引き出すか、現場リーダーの力量はまさにそこにある。

 重点活動の③、④は関連が深い。トラブルが生じれば、顧客満足は得られず、潜在的な不具合はクレームとなって顕在化する。本稿其の6、アフターサービスの項で述べた通り、クレーム対応のための組織体制を確立しておくと共に、クレームとその対応事例の蓄積に予測される不具合を加え、「トラブルシューティング(あらかじめ想定された異常状態について解決方法をマニュアル化したもの)」にまとめて活用することである。もうひとつ大切なことは、トラブル対応等で行った対策が、有効であったかどうかを検証すること。すなわち効果の確認までを行うことである。

 サービス業における品質保証も、その他の業種も考え方や手法は同じであり、サービス業におけるサービスの心は、その他の業種にも必要である。人と人または人と社会とのつながりにおいて、自分の行動を周囲に喜んでもらえることこそ生きる喜びでもあろう。

 だからサービス残業をやれ、ボランティアをやれと権力者は考えることなかれ、他人の功利で動いたり、誰かに指示されてやることこそ、またつまらないこともないのである。




本稿は (社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブック”(「ガイドブック」と略称)第Ⅱ編第13章から引用し、参考にして編集しています。
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