中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

読書紀行12

2009年02月04日 | Weblog
本を楽しむ
 同期の本好きの友人から「山本周五郎はいい。」と随分薦められた時期があったけれど、若い頃(20歳代)の私はいわゆる大衆小説にはほとんど興味がなかった。限られた時間に本を読むなら、少しでも読んで糧になるものを読みたいと思っていたのだ。思えば大衆小説こそ人生の機微が詰まっていて、当時の私は随分と思い違いをしていたのだけれど、多少背伸びしながらも若い頃に読んだ本は、私に人生の土台のようなものを与えてくれたような気がする。順序としては良かったと思っている。

 先日の読売新聞の夕刊のコラム(よみうり寸評)に、江戸後期の儒学者・佐藤一斎の語録「言志四録」にある言葉として、『少にして学べば壮にして為す。壮にして学べば老いて衰えず。老いて学べば死して朽ちず』と紹介されていたが、学ぶことに遅すぎることはないとの意味でもあろう。

 山本周五郎(1903-1967)、山岡壮八(1907-1978) 、池波正太郎(1923-1990)、藤沢周平(1927-1997)など昭和を駆け抜けた名人作家の作品に親しんだのは、ここ数年のことになった。池波正太郎の代表作「鬼平犯科帳」は一昨年全24巻を一気に読んだ。掛け値なしに面白かった。それにしても他にも昭和の大作家は一杯居るし、名作はたくさんあるのだろうが、ほとんど読んでいない。もったいない気がしないでもない。辛うじて吉川英治(1892-1962)の「新書太閤記」全8巻は読んだ。

城山三郎(1927-2007)の「落日燃ゆ」、五木寛之「戒厳令の夜」、村上春樹の「ノルウェイの森」、石原慎太郎「弟」、加藤廣「信長の棺」や角田光代「八日目の蝉」など心に残る作品がある。浅田次郎の作品にも好きなものが多い。中でも「壬生義士伝」は最高だった。短編にもいいものが一杯ある。泣かせる物語が多いのだけれど、それぞれに救いがある。作者は意識してそれを用意している。人に対するやさしさがある。そこがいい。

このように優れた小説に恵まれ、文庫本など比較的安価に入手できる我々現代人は幸せだと思う。お金がなくてもどの地方にも立派な公立図書館がある。

 世界文学から読書の楽しさを知って半世紀近く、私の読書紀行は、文藝春秋2008年十二月号の立花隆氏*9)と佐藤優氏*10)の「21世紀図書館-必読の教養書200冊」にみごとに含まれていないものばかり*11)だけれど、本の楽しさを今、さらに新たに出来ていることが嬉しい。本ありて少し先に来る余生がまた楽しみである。

  *9)評論家
  *10)作家。元、外務事務官
  *11)佐藤氏の夏目漱石、五味川純平および三島由紀夫の三作のみ例外
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする